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関西特集
万博をどう生かすか ートップの成長戦略
雇用拡大へ跡地の有効活用を/秋山シャーリング社長 吉川 成次 氏
当社は1964年の創業以来、鉄・非鉄金属鋼板の販売と加工を手がける。全鋼種の豊富な在庫や多岐にわたる加工技術を武器に、さらなる販路の拡大を狙う。
35歳で社長に就任以来、会社経営を行う上で大切にしてきたことが「目標を持つ」ということだ。目標を持ち達成するまでの計画を事前に立て、実行する。その後は試行錯誤しながら目標に近づいていく。この手順の繰り返しで会社の利益を上げてきたと自負する。
現状の目標は、増収増益の継続。そのため新規事業分野への設備投資と社員の賃上げを行う。2月に新しいロール加工機を導入、これまでは外注していた厚板や長尺のロール加工にも対応可能となった。賃上げは社員が働く上でのモチベーションを高める一つの要素で、生産性向上にもつながると思っている。
大阪・関西万博の開催が近づいてきたが、個人的には万博跡地の活用方法に興味を持っている。万博跡地に工場誘致することで、新たな雇用機会の拡大を期待する。TSMCの工場が熊本県に設立されるなど、今後は海外企業が日本に工場を建設することも増えていくと思う。ビジネスチャンスとして生かすことができれば、日本の地域経済が活性化され、賃金の底上げにもつながるのではないだろうか。
海外へアピールする好機/近畿刃物工業社長 阿形 清信 氏
「2025大阪・関西万博」の開幕まであと1年となった。万博会場や交通インフラ、ホテルなどの建設が進み、機運が高まる。万博には160カ国・地域と9国際機関が参加する。来場者は2820万人と予想され、海外からの来場者は350万人に上るという。これだけ多くのインバウンド(訪日外国人)が集まることはまれで、関西のモノづくりに携わる中小企業にとって、自社の製品や技術を海外にアピールする絶好の機会といえる。
それには言葉や文化の壁を乗り越えてコミュニケーションを取る準備が必要だ。単体では難しく、海外との取引に精通する商社や所属する商工会議所、経済団体と連携し、会員制交流サイト(SNS)などで今から情報発信しておけば、開催期間中に海外の企業や団体とつながることができるかもしれない。
当社はこれまで段ボール加工用刃物に特化することで独自の技術を磨いてきた。他社も同様に世界に誇れる「メード・イン・ジャパン」の製品や技術を持っているはずだ。関西では万博開催後の30年には統合型リゾート施設(IR)の開業も控えており、海外との交流もおのずと増えてくる。じっとしていては何も始まらない。万博を海外マーケットにチャレンジするきっかけにするのも面白い。
〝ポスト万博〟こそ重要に/三洋金属工業社長 下大川 丈晴 氏
当社はモノづくりを一気通貫で行える会社を目指し技術を蓄積、継承しながら、社員が意欲を持って働ける環境を整えている。単に指示された部品をメーカーに納めるだけではなく、最終製品の開発段階から参画し、より良い部品を開発するとともに人材育成も図っている。独自でも最終製品開発を目標に掲げ、社員の成長につなげてきた。
25年には大阪・関西万博が控えているが、単なる一過性のイベントで終わらずに、それに続くイベントや産業が発展してこそ、永続的な関西経済の成長につながると思う。当社も関西経済発展の一助となる存在でありたいと思う。
今後については5年、10年先を見据えた戦略を考えている。ベテラン社員の雇用を保つ一方で人材採用を継続、技能・技術の継承を進めてきたことで若手社員が育ち、会社全体の力が高まっていると感じる。厳しい環境下にあり決して余裕があるわけではないが、経営者の責務として常に周りの状況を冷静に判断して次の一手を考えていく。社員が一丸となって地域産業も含めてより成長できる、そんな企業でありたいと思う。
金融機関の取り組み 未来の生活スタイル想像・体感/大阪シティ信用金庫
大阪シティ信用金庫(大阪市中央区、髙橋知史理事長)は、地域の中小企業・スタートアップ企業の課題解決に向けさまざまな取り組みを行っている。
大阪・関西万博では、大阪ヘルスケアパビリオン「展示・出展ゾーン」への出展支援事業に取り組んでおり、このたび同金庫の展示企画に出展する企業38社が決定した。未来社会の健康・快適・サステナブルな生活様式を感じることができる空間として、未来に実装される可能性のある商品や技術を紹介することで来場者が「未来の生活スタイル」を想像・体感できるような展示を目指す。
同金庫はこれまで中小企業経営者向けに「大阪・関西万博セミナー」を開催し、展示に向けた支援の内容や自治体の施策に関する情報を提供したほか、3月12日には「大阪・関西万博リボーンチャレンジピッチフェス」を近畿財務局などと共催、企業間の共創に向けた交流を図ってきた。
今後も、大阪・関西万博を通じて中小企業・スタートアップ企業の成長・発展を後押しするとともに、出展企業だけにとどまらず、事業承継やデジタル変革(DX)、人材確保など、地域企業の抱える課題への伴走支援を強化し、大阪経済の活性化と持続的発展を目指す。
【有力企業の製品・技術】スマートホーム組み込み用途 安心・快適な室内環境に/フィガロ技研
フィガロ技研はガスセンサーの専業メーカーで、非分散型赤外線吸収(NDIR)方式の二酸化炭素(CO2)センサーモジュール「CDM7162」を販売している。同モジュールは単光源2波長方式を採用、吸収波長域の異なる二つの受光素子が搭載されている。このため、CO2に吸収される波長域(CO2吸収波長)と、CO2に吸収されない波長域(比較波長)の赤外線量の差からCO2濃度を算出、精度の高い測定を可能にした。
出力はUARTとI2Cの2種類のインターフェース規格に対応し、32ミリ×17ミリ×8ミリメートルの小型・薄型サイズで各種の機器やスマートホームへの組み込み用センサーモジュールとしての利用が拡大している。また3・0―5・5ボルトの幅広い電圧範囲にも対応、平均約25ミリアンペアと低消費電流も特長の一つとなっている。
主な用途として、安心・快適な室内環境と省エネルギーを両立させる換気制御や空調機器、エアモニター、小型測定機器などへの搭載のほか、無線やIoT(モノのインターネット)を活用した遠隔地モニタリング、植物工場・農業分野などへの展開も期待される。