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関西特集
会場に「いのち」吹き込む 日本国際博覧会協会
大阪・関西万博は準備をめぐる混乱もあったが、約1年後の開幕へ向け、歩みを進める。日本国際博覧会協会の設立時から準備に関わってきた石毛博行事務総長に、現状認識や思いを聞いた(書面インタビューで実施)。
課題あるも着実に前進
―万博の開幕まで1年あまりとなりました。今の率直な思いは。
「博覧会協会の設立から5年がたった。これまでさまざまな課題がありながらも、着実に前進してきた。よくここまで進んできたというのが率直な思いだ。開幕1年前を控え、厳しい声とともに、期待の高まりも感じている。これまで登ってきた道のりは長いが、残る道のりは頂に近づくにつれ急峻(きゅうしゅん)になる。今まで以上に、気を引き締めなければいけないという思いでいる」
―現状の課題認識をどう見て、対応していきますか。
「建設の遅れが指摘されていた海外パビリオンの建設は、今では36の国の施工事業者が決まっている。各国の事情に寄り添いながら、希望する出展ができるように支援を続け、工事が円滑に進むよう、各国や施工事業者と細やかなコミュニケーションをとらなければならない。また、万博は建物を建てるだけでは成り立たない。円滑な運営に必要な会場スタッフや円滑な輸送体制の構築など、会場に『いのち』を吹き込んでいく必要がある。こうした準備を着実に進め、来年の開幕を迎えなければならない」
―万博入場券で全体の6割となる前売り入場券1400万枚を販売できるかは黒字運営のカギです。販売計画を達成するために重点的に取り組むことは。
「今年に入り、各国パビリオンの起工式や構想発表会が、既に10件以上行われ、各国のワクワクするようなコンセプトがその姿を現してきた。また、万博を彩る催事について、一般参加催事には愛知万博の約2倍の応募が寄せられている。近日中にその内容の一部を公表予定だ。こうしたパビリオンや催事のコンテンツの積極的な発信により、入場券の販売にも良い影響があるものと考えている」
〝企業の力〟に期待
―コロナ禍後で初の万博となり、あらためてその意義は。テーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を、世界へどう情報発信しますか。
「万博の開催意義の一つとして、『世界の分断から、つながりを取り戻す』ということがある。新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ紛争によって世界が『分断』の危機にある中、『いのち』をテーマとする大阪・関西万博の持つ価値は、むしろ高まっていると感じる。私たちは主催者として、ポスト・コロナに『つながりを取り戻す』万博を、何としても成功に導き、参加国とも協力しながら、世界へ万博の意義を発信したい」
―万博ではパビリオン出展や未来技術の実装など企業の果たす役割も大きいです。企業に期待することは。
「現在も多くの企業・団体に万博への出展や協賛などで協力いただき、感謝したい。博覧会国際事務局(BIE)や世界各国からは、日本の万博は、民間パビリオンが素晴らしいと言われている。21世紀の万博は、気候変動問題や持続可能な成長など、人類共通の課題を解決することへの寄与が期待されている。そこで期待されるのが、〝企業の力〟だ。『未来社会の実験場』という大阪・関西万博のコンセプトの下、来場者をアッと驚かせるような最先端の技術やアイデアが持ち寄られ、持続可能なソリューションが提示されることを期待している」
―ドバイ万博ではビジネスマッチングも活発でした。今回もその機会はありますか。
「大阪・関西万博では民間パビリオン、自治体展示などを通じて、優れた中小企業の技術やサービスを展示する企画がある。これを機に万博来場者をオープンファクトリーに誘引することが考えられる。また『食と暮らしの未来』『健康とウェルビーイング』といった地球的課題をテーマに、万博参加者および産業界などが集い、解決策を話し合う対話プログラムやビジネス交流を実施する。万博は、会場内外でビジネスチャンスがあり、この機会を生かして頂きたいと考えている」