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関西特集
阪神地区産業界 万博を機にステップアップ
大阪・関西万博開幕まであと1年
兵庫県南東部に位置する阪神地区には、独自技術を駆使したモノづくり企業が集積、長年にわたり培ってきた技術やノウハウを活用し、日々、次代を見据えた取り組みを続けている。折しも2025年は大阪・関西万博が開催される。万博を契機に阪神地区から世界に目を向け、そしてさらなる成長・発展につながる新たな事業展開への思いを有力企業トップに聞いた。
航空機好調、拠点を強化/大河内金属社長 大河内 弘毅 氏
航空機関連が好調に推移しコロナ禍前以上に回復している。特に官需が旺盛で、この状況は続くだろう。2024年9月期は、1月までは計画を上回り、後半も今交渉中の案件を受注すれば好調さは維持できると見る。
24年は航空機関連に対応し、航空機専用の栃木工場(栃木県下野市)を強化する。生産性と品質向上をテーマに設備投資と人材確保を進める。航空機関連は品質が非常に厳しく、それを守るには人の力が重要だからだ。ただ栃木は大手の生産拠点も多く取り合い状態で人材確保が難しく、現在は他の工場からの応援でカバーしているほか、外国人従業員の活用も進めている。
設備投資では、青垣工場(兵庫県丹波市)にも旋盤ロボットに加え、3月には小型マシニングセンターに付設するロボットを導入した。加工の自動化・省力化を狙っている。
25年の大阪・関西万博では、「空飛ぶクルマ」に注目している。これまで全く視界になかったが、空を飛ぶには航空機向け材料が必要で、トレーサビリティーも同レベルになるはず。そうした材料を供給できる企業は限られる。長年の経験やノウハウを蓄積する当社として新たな市場開拓につながるだけに、成果に注目したい。
100年企業へ重要な時期/SEAVAC社長 清水 博之 氏
これまでから掲げてきた「100年企業」を目指す上で、重要な時期にさしかかってきた。コロナ禍の約3年間、制約を受けてきた取り組みが本格的に動き出しており、本業のコーティングでは基幹技術確立に向け独自技術を追求する。70年を超える歴史からノウハウの蓄積には自信を持つが、それをさらに確固たるものにする新たな技術開発を進める。営業やマーケティングも自ら率先し注力するとともに原点に立ち返り、本業を核にさらなる成長・発展への基盤強化につなげる。
ただその実現には人材が欠かせない。人手不足と言われて久しく当社も同様の状況だけに、理系学生に強みを持つ人材紹介企業と連携、採用に至った。次は育成という第2フェーズで、いかに戦力化できるかがカギを握る。一方、幹部社員も層が厚くなりレベルも向上、企業の成長に寄与している。現状打開の感覚が生まれた証でもあり心強い。
成長・発展には海外戦略も意味を持つ。米国と東南アジアを中心に展開してきたが、将来的には欧州に事務所を構えることも視野にある。コーティングは欧米発祥だけに、事務所を通じ技術情報を収集、それを取り込むことで技術力強化に生かしていく考えだ。
金管尺八実現へ着実な歩み/ゼロ精工社長 佐藤 雅弘 氏
コロナ禍の2020年、金属で尺八を作れないかと言う新たな発想で吉村蒿盟、デライトラボ、当社の三者で金管尺八「心妙」の開発を始めた。試行錯誤の末、音色は真竹尺八と区別がつかないレベルまで達し、金属の弱点である重さもマグネシウム合金の採用でクリア。まだ課題はあるが、真竹尺八を超え、プロが納得する金管尺八を目指している。
プロモーションは21年11月、竹と同等の重さを実現した試作品で第1回心妙コンサートを兵庫県立芸術文化センター小ホールで開催、22年11月にはさらに改良した試作品で第2回コンサート(文化庁芸術祭参加公演)を開いた。兵庫県尼崎市内では「あまがさき産業フェア」ブース内や寺町周辺、尼崎城などで演奏、東京ビッグサイトの「SAMPE Japan(先端材料技術展2023)」でミニコンサートを行うなど積極的に活動する。
大阪・関西万博の開催までにプロトタイプか製品リリースすることで何らかの爪痕を残し、1847年のパリ万博で金属製のフルートが発表され木管楽器ながら金属製になったように、「心妙」が真竹の尺八に代わる新たなスタンダードに、尼崎市の観光資源になるよう急ピッチで開発を進めていく。