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神奈川県特集
神奈川を支え 未来へ挑戦 — Chapter1 —
神奈川県内にはモノづくり産業をはじめ、物流・港湾産業、観光・サービス産業など多様な業種で存在感の高い企業が活躍している。原材料価格高騰や人手不足、脱炭素化の推進、さらには米国の関税措置への対応などさまざまな課題がある中でも、独自の技術や製品、サービスを武器に成長を続ける。神奈川を支える有力県内企業と、そうした企業の大きな味方となる県内支援機関の取り組みを紹介する。
イチコーエンジニアリング/創立60周年 技術力武器に飛躍
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19年に開設した「府中事業所」
イチコーエンジニアリング(横浜市青葉区)は、2025年4月1日に創立60周年を迎えた。一幸電気商会として創業後、電気計測器の修理・校正を原点に事業を拡大。現在ではFA産業機器、情報通信機器など電気・電子機器の設計から製作、据え付け工事、メンテナンスまでを一貫して対応できる技術力を武器に、さらなる飛躍を目指している。
「設計・製造」「販売」「サービス」が3本柱で、3事業をバランス良く育てている。設計・製造では電気・機械・ソフトウエアの一連の設計開発能力を持ち、顧客ニーズに応じて多様な装置を製造できる強みがある。販売やサービスでは、通信端末、監視カメラ、事務機など幅広い商材も扱っている。
国内外の鉄道や新幹線、空港、宇宙など社会インフラ分野の受注が増えており、19年には東京都府中市にインフラ事業(開発設計・製造)の拠点として「府中事業所」を開設した。大型製品への対応強化と品質のさらなる向上に取り組む。
東京メータ/空気圧の省エネコンサルを提供
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空気圧エネルギーの省エネコンサルに活用する東京メータの「エアパワーメータ」
東京メータ(川崎市中原区)が空気圧エネルギーの計測技術を生かし、川崎市内中小製造業の脱炭素化を後押ししている。工場で使われる圧縮空気の圧力損失などを見える化するとともに、改善点を提案。従来はあまり注目されてこなかった圧縮空気の省エネ対策をコンサルティングして地域企業の競争力強化に結びつける。
空気圧エネルギーの計測には同社の独自製品「エアパワーメータ」を使う。圧縮空気の流路などに同製品を取り付け、消費した圧縮空気をエネルギーとして見える化。電気使用量のデータと比較して圧力損失が生じている場所などを把握しやすくする。
同社は川崎市地球温暖化防止活動推進センターと連携し、市内中小企業に同技術を活用したコンサルを無償提供する取り組みを2024年度に実施。好評だったため25年度も引き続き実施する計画だ。コンサルのノウハウを蓄積し、将来は本格的な事業化に結びつけることを目指す。
コダマコーポレーション/超高速処理3次元CAD
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大規模なデータの超高速処理が可能な「TopSolid(トップソリッド)」
コダマコーポレーション(横浜市都筑区)が提供する3次元(3D)コンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)システム「TopSolid(トップソリッド)」は、大規模なデータの超高速処理が可能だ。
生産性を向上させるために3次元CADを導入しても、設計が進んで部品点数が増えるにつれて動作が重くなってしまったり、レスポンスが悪くなったりとストレスを感じているケースがある。TopSolidは、大規模なアセンブリーでも軽快な操作感で設計できるのが特徴。圧倒的な処理速度でファイルの読み込み時間を大幅に短縮できる。
この(画像の)生産ラインのデータは、8万点以上の部品で構成されているという。TopSolidでは移動や拡大などもスムーズに作業できるほか、干渉チェックも瞬時に確認することが可能だ。
TopSolidを導入することで、日本の製造業が抱えるさまざまな問題の解決が期待できる。
木原記念横浜生命科学振興財団/バイオ研究 産学連携 後押し
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バイオベンチャーや研究機関向けの賃貸施設「横浜バイオ産業センター」
木原記念横浜生命科学振興財団(木原記念財団)は、神奈川県内のライフサイエンス分野の振興と産業の活性化に寄与する活動を実施している。運営する賃貸型の研究施設では入居企業の連携を深めるために「バイオものづくり交流会」などを開催し、隣接する理化学研究所や横浜市立大学などとの産学連携を後押ししている。
横浜市内の中小企業や大学などを対象に、研究成果やアイデアを実用化するための試作品開発や予備試験を助成する「横浜市トライアル助成金」を実施。個別相談から解決策を一緒に考えて支援につなげている。その支援策は公的研究開発資金の申請や展示会出展サポート、マッチングイベント開催など多岐にわたる。
また、若手の基礎研究者を対象とした「木原記念財団学術賞」、小・中学生を対象とした自由研究コンクール「木原記念こども科学賞」を通して学術振興や知識の普及啓発を図っており、両表彰事業は30年以上の実績がある。
横浜企業経営支援財団/中小の脱炭素化 伴走支援
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IDEC横浜の脱炭素経営アドバイザーが企業の脱炭素化を伴走支援する
脱炭素化への取り組みは地球温暖化を抑えるだけでなく、企業価値の向上や市場競争力の強化にもつながる重要なテーマ。しかし、意欲はあっても資金や人材の壁に直面している中小企業は少なくない。横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)は5月、個別企業の脱炭素化に向けた課題に寄り添いながら具体的な取り組みを推進する伴走支援を開始した。
IDEC横浜の脱炭素経営アドバイザーが空調・照明などの高効率機器や運用改善方法を提案した横浜市内の建設業者は、協議を通じ電力消費を約70%削減できる計画書を策定。エネルギー効率の向上に取り組み、コスト削減と環境負荷軽減を両立させた。
IDEC横浜の伴走支援は相談や助言にとどまらず、企業と二人三脚で課題解決を目指すことに最大の特徴がある。高山現人イノベーション支援課長は「脱炭素はサプライチェーン全体で取り組む必要がある。取引先からの要請に応えるためにも、ぜひ伴走支援を利用してほしい」と話す。


