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神奈川県特集
横浜市 成長産業・研究開発拠点が集積
みなとみらい21地区/技術系ユニコーンの創出目指す
横浜市が市内経済の活性化に向け、展開してきた企業誘致活動が奏功し、成長分野やグローバルで事業を展開する企業の立地が進む。横浜都心部のみなとみらい21地区にはグローバル企業の本社や研究開発拠点が集積。さらに市内各地にITや半導体、モビリティー、環境・エネルギー、健康・医療など成長企業の進出が相次ぐ。一方、1859年の横浜開港以降、横浜の地で創業した50年、100年を超える長寿企業が多く存在している。
さらなるオープンイノベーション創出 期待
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グローバル企業や成長企業が集積するみなとみらい21地区
みなとみらい21地区は、ソニーグループや富士フイルムビジネスイノベーション、京セラ、村田製作所、資生堂、韓国サムスン電子などグローバル企業の研究開発拠点の集積地となっている。さらに東京エレクトロンの研究開発拠点の立地が決定。国内外の半導体の研究開発拠点として集積が進む。
横浜市はグローバル企業の研究開発拠点が集積するみなとみらい21地区の強みを生かし、2024年11月に技術系スタートアップの成長支援拠点を開設した。技術系分野のユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の創出を目指す。今後は、さらなるオープンイノベーションの創出やエコシステムの形成が期待される。
日本の産業をけん引してきた重厚長大産業や世界トップレベルの環境技術を持つ企業が集積する京浜臨海部や、1300社を超える企業が集積する産業団地「LINKAI横浜金沢」(横浜市金沢区)など、多種多様な工業集積拠点がある。京浜臨海部は再編整備が進み、重厚長大産業に加え、環境・ライフサイエンス企業など成長分野の企業が進出。製造業のサプライチェーン(供給網)を支えるロジスティクス施設が拡充している。LINKAI横浜金沢では、金沢区にある関東学院大学や横浜市立大学と産学官連携を推進し、市内屈指の多くの中小企業が集積する産業団地となっている。
横浜市には、みなとみらい21地区や京浜臨海部工業地域、LINKAI横浜金沢がある臨海南部工業地域のほか、鶴見西部・港北東部工業地域、鶴見東部工業地域、港北中部工業地域、旭・瀬谷工業地域、内陸北部工業地域、内陸南部工業地域といった工業集積拠点など特徴のある産業集積地域がある。研究開発拠点が集積するみなとみらい21地区に加え、内陸部や臨海部の工業地域にも先端企業の研究開発施設の新設が進む。新幹線の駅がある新横浜都心地域には交通の利便性から、IT企業や半導体関連企業、外資系企業が集積する。
横浜市はアクセスの良さに加えて、大学や研究機関が集積するなど、優秀な技術者や研究者を求める企業から高く評価されている。今後も、成長企業の立地が進みそうだ。
長寿企業が活躍
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横浜には長寿企業が数多く存在。創立150周年を迎えた鈴幸商事は記念式典を6月に開いた
独自の技術や研究開発力を持つ伝統と歴史のあるモノづくり企業が多く存在する。創立150周年を迎えた鈴幸商事(横浜市港北区、鈴木謙太朗社長)は、メカトロ・FA機器・設備、高機能材料、精密加工機器などの3分野に注力する商社。グループの新日産ダイヤモンド工業(横浜市金沢区)で独自製品、ポリイミド成形体「セプラ」を開発した。同製品は耐熱性や電気特性、耐放射線性などに優れており、半導体から航空・宇宙まで幅広い用途で採用されている。同社は独自製品を増やし、顧客のニーズに対応していく。
横浜の老舗企業である宇徳(横浜市中区、塩津伸男社長)は創業135年を迎えた。横浜港での回漕(かいそう)業を祖業に、現在は港湾運送、物流、プラントの3事業で社会インフラを支える。「モノを動かし、ミライをつくる。」をブランドメッセージに掲げ、特殊車両を使った重量物輸送などの技術力が強み。その強みを生かして海外展開も推進する。4月には新本社ビルを稼働。開放的なオフィス環境を生かして部門間連携を促進し、次の時代の成長戦略を描く。
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創立60周年を迎えたイチコーエンジニアリングは入社式と併せて記念式典を開催した
FA機器、情報通信機器、電子機器などの設計製造・販売・サービスを手がけるイチコーエンジニアリング(横浜市青葉区、谷内勝則社長)は創立60周年を迎えた。電気計測器の修理・校正を出発点に事業を大きく拡大してきた。3月29日には横浜市内のホテルで25年度入社式と併せて記念式典を開催。創業者の市川義雄氏と長年苦労をともにしてきた安永平雄会長は事業の変遷を回想しつつ、「創業者の意志を受け継ぐことが大事」と社員に呼びかけ、社業のさらなる発展を誓った。
50周年を迎えた荒木技研工業(横浜市青葉区、荒木将式社長)は、独自のバーリング加工や配管成形技術に加え、金属3Dプリント技術を融合することで、軽量、高強度で構造的に最適化された部品の製造を可能にした。金属3Dプリンターで一体成形マニホールドを造形した場合、算術平均粗さ(Ra)が鏡面研磨後に0・8マイクロメートルを実現した。継ぎ目ゼロの内部流路や鏡面仕上げで圧損を最大50%削減できる。
【メッセージ】 横浜市長 山中 竹春 氏/持続的な成長を支える循環型社会へ
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横浜市長 山中 竹春 氏
気候変動が地球規模の喫緊の課題となり、環境への配慮が企業価値にも直結する時代。横浜市では、事業者の皆さまとともに挑戦を続けています。2024年6月の創設以来、すでに6000超の事業所に参画いただいている「脱炭素取組宣言制度」をきっかけに、省エネ診断や設備投資への助成、入札での加点などにより、市内企業の99%以上を占める中小企業の変革への挑戦を全力でお支えしています。
また、テック系スタートアップ支援拠点「TECH HUB YOKOHAMA」を核に、研究開発拠点や大学、技術者の集積という特徴を生かしたスタートアップ・エコシステムを形成するほか、環境分野における技術力の高い企業のさらなる集積と、市内企業の事業機会の拡大に向けた戦略的な企業誘致に取り組むことで、横浜発の環境技術の創出を目指すとともに、人・企業・投資を呼び込む好循環を生み出し、市内経済の持続的な成長につなげていきます。
そして27年に開催する、気候変動という地球規模の課題の解決に向けて横浜から起こすアクション「GREEN×EXPO 2027」を舞台に「環境と共生する未来のグリーン社会」のあり方を世界に発信し、循環型社会の実現につなげていきます。


