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神奈川県特集
連携深め改革にチャレンジ —産学金 ③—
産業能率大学/湘南ベルマーレ コラボプロジェクト開講
産業能率大学は世の中で実際に役に立つ能力を育成する「実学教育」を根幹としている。授業はグループワークやプレゼンテーション、地域や企業とのコラボレーションなど、ビジネスシーンを想定して学生が主体的に学ぶアクティブラーニングが中心だ。情報マネジメント学部には、スポーツマネジメント、デジタルビジネスデザイン、コンテンツビジネスといった五つの専門コースを設けている。この専門コースの枠を越え、実践的な課題に挑むコース横断プロジェクト科目として、2025年度新たに「湘南ベルマーレ コラボレーションプロジェクト」を開講した。
ハイレベルのPBL展開
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産業能率大学 情報マネジメント学部 教授 小野田 哲弥 氏
同大情報マネジメント学部では、04年に提携したサッカーJリーグの湘南ベルマーレ(神奈川県平塚市)のスタッフによる講義のほか、サポーター向けイベントの企画・運営などの課題解決型学習(PBL)を展開してきた。
新科目の「湘南ベルマーレ コラボレーションプロジェクト」はプロモーションの対象をスポンサー企業に広げている。学生が同チームのスポンサー企業を調査・研究し、課題を抽出し、解決に結び付く提案を行う。単なる広告協賛にとどまらない関係強化につなげることを狙いとしている。「湘南ベルマーレ コラボレーションプロジェクト」は3・4年生が対象。担当の小野田哲弥教授は「社会に出て即戦力として活躍するための実務力を養成する高学年向けの科目。BtoB(企業間)に重きを置いたハイレベルなPBLを目指す」と話す。
学生が企業に協賛営業を実践
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7月4日、湘南キャンパスにて、湘南ベルマーレの役員に向けた企画提案プレゼンテーションが行われた
24年度実施したトライアルでは、物流業界のスポンサー企業を対象に、地元のレモンガススタジアム平塚(同)で開かれた同チームのホームゲームの前にアトラクション「運べ!進め!配送ダービー!!」を企画・運営。ゲームとして物流の仕事を疑似体験してもらい、来場者に日常生活を支えている物流業界の役割を訴求し、パートナー企業から好評を得た。
正式科目となった初年度の履修生は30人。グループに分かれて湘南ベルマーレのパートナー企業約180社、サポートコーポレーション500社以上を対象に各業界を研究し、課題解決に向けた企画のプレゼンテーションを湘南ベルマーレに対して行った。採用企画が決定した現在、候補となるパートナー企業への提案書の作成など協賛営業の準備を進めている。
夏休み期間中に協賛企業を決定して詳細を詰め、10月中旬に開かれるホームゲームに合わせて企画を実施する運びだ。企画実施後にはアンケート分析から効果を検証し、チームと協賛企業に対して成果報告会を開く予定。
「24年度のトライアルでも学生はかなり達成感を得たようだ。履修生の内、4年生が半数を占めるが、就職活動の一環としてではなく、自身の力を試すとともに本学での学びの総仕上げとして臨んでいる」と小野田教授は目を細める。
そして「本学と湘南ベルマーレは20年にわたって関係を育んできた。チームを支えるパートナー企業の皆さんに『パートナーで良かった』と心から感じてもらえる企画を実現し、地域やサポーターにその存在を広く知ってもらいたい」と話す。
横浜国立大学/投資と成長 研究の好循環生み出す
横浜国立大学が若手研究者や研究支援体制への投資を積極化しながら、研究の質を高めて成長を実現している。学長直轄の研究組織である高等研究院で若手・中堅の研究者を多く雇用し、社会課題解決に寄与する研究活動を推進。その結果、競争的研究資金など外部資金の受入額が大幅に増加した。2025年は研究支援の専門人材であるリサーチ・アドミニストレーター(URA)の育成組織を新設し、研究支援体制のさらなる充実を図る。
若手研究者が活躍
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横浜国立大学 学長 梅原 出 氏
同大学が獲得した外部資金は24年度で約63億円となり、数年前に比べて20億円以上増えた。梅原出学長は「良い研究と良い教育を大学としてプロポーザルできており、それが外部資金の獲得につながっている」と説明、「投資をして成長するという学長就任時からのビジョンが徐々に実現してきた」と手応えを語る。
同大学には「先端科学高等研究院」(IAS)と「総合学術高等研究院」(IMS)という二つの学長直轄の研究組織がある。両組織を効果的に機能させ、社会に求められる研究課題に応じて研究センターや研究ユニットを柔軟に組織し、国家プロジェクトなどに挑戦する取り組みを推進している。そこでは若手や中堅の研究者を積極的に登用。例えば、24年にIMSに設置した「半導体・量子集積エレクトロニクス研究センター」では、半導体後工程の井上史大准教授や量子技術の堀切智之教授といった若手・中堅の研究者が研究チームのリーダーとして活躍している。
さらに、研究支援職員を充実させるなど研究支援体制の整備にも注力。梅原学長は「若い研究者が頑張って活躍し、それをサポートする研究環境づくりが進んでいる。思い切った投資と成長の好循環が生まれてきた」とアピールする。
URAなど研究支援体制強化
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6月に横浜国立大で開いた「URA育成教育研究センター」の開所式
そうした中、4月には研究支援を手がける研究推進機構に「URA育成教育研究センター」を開設した。日本で研究戦略の立案・推進を担うURAの役割が大きくなる一方、業務の高度化、多様化、複雑化が進んでいる。同センターは外部の大学や研究機関とも連携し、URAを育成して全国の大学・研究機関に輩出するとともに、体系的な育成ノウハウを確立することを目的としている。
「研究戦略を立案し、根拠をもって提言できる高度なURAの専門人材育成に特化しているのが同センターの特徴」(梅原学長)。研究力強化に取り組む横浜国大自体のURA増員にも結びつける計画で、現状6人のURAを2年後に10人程度まで増やしたい考え。「今の大学の研究活動は研究者だけでは成立しない。同センターの設置を通じ、横浜国大は研究支援に力を入れているというメッセージを発信したい」(同)と意気込む。
社会課題を解決する優れた研究活動を実践することで、地域の企業や自治体も引きつけた研究活動へと発展し、イノベーション創出に結びつくと期待される。そのために創造的な研究に取り組む若手研究者を増やすとともに、サポート体制を万全にするのが同大学の方針だ。梅原学長は「研究支援は多元的に進めている。人材のほか、研究施設や資金の使い方などさまざまな切り口でサポートし、それを徹底していきたい」と強調している。


