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神奈川県特集
川崎市 SDGs推進へ パートナー拡大
多様なステークホルダーと連携・協働
川崎市は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを推進している。市内の企業や団体などさまざまなステークホルダーとの連携・協働体制を構築。市に関わり合う多様な人の力を結集し、脱炭素や格差是正などさまざまな社会課題の解決を図る。市のビジョンとして掲げる「成長と成熟の調和による持続可能な最幸のまちかわさき」の実現を目指す。
プラットフォームで得意技を融合
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SDGsフォーラムで市内のSDGs取り組み事例などを情報発信
SDGsの達成に向け、市内の企業や団体とパートナーを組み、さまざまな地域課題を解決していくのが市の基本方針だ。川崎市SDGs登録・認証制度「かわさきSDGsパートナー」には、これまでに3446事業者が登録。同様の制度では全国の政令指定都市で最大規模の登録数になるという。
さらに、かわさきSDGsパートナーの登録・認証事業者を支援し、ネットワーク化を進め、パートナー同士の情報共有や連携を促進する仕組みとして「川崎市SDGsプラットフォーム」を組織。川崎市と川崎信用金庫(川崎市川崎区)が共同事務局を務め、川崎商工会議所、川崎市産業振興財団などがコアメンバーとして活動を支える。パートナー事業者のマッチングや優良事例の表彰などに取り組む。
同プラットフォームは毎年、プロバスケットボールチームを運営するDeNA川崎ブレイブサンダース(同川崎区)などと共催で「SDGsフォーラム」を開催し、市内の取り組み事例などの情報を発信している。2025年は7月2日に同フォーラムを開催。講演した福田紀彦市長は「パートナーがそれぞれ持つ得意技を重ね合わせてSDGsの目標を達成していきたい。市内には意識が高い人たちが多く、これが川崎市の圧倒的な強みになる」と強調した。
環境問題・社会課題解決へ連携
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地域の社会課題解決へ自動運転バスの実証実験を実施
こうした活動基盤とパートナーのネットワークからSDGs達成に寄与するさまざまなプロジェクトが生まれ、発展している。
市内でプラスチック資源循環の新たな仕組みを創出するため、「かわさきプラスチック循環プロジェクト」が進展している。ペットボトルの水平リサイクルから始め、現在は「製品プラスチック」や「プラスチック製容器包装」を市民から回収して資源として再利用する取り組みなどが進む。同プロジェクトに参画するパートナーは、コンビニエンスストアや飲料水メーカー、リサイクル事業者など21事業者に増えている。一般家庭からのプラスチック回収は24年度に川崎区でスタートし、25年度には幸区と中原区にも拡大。臨海部の海洋プラスチックの再資源化も検討する。同プロジェクトを通じ、将来は100%のプラスチックリサイクル実現を目指す。
再生可能エネルギーの地産地消を目指す取り組みも全国から注目を集めている。市は電力小売り事業者「川崎未来エナジー」を24年4月に設立。市が51%出資するほか、川崎信金など地域金融機関もパートナーとして運営に携わる。市のゴミ処理場由来の電力を市内の学校や公共施設など約250カ所に供給する役割を果たす。
最近では民間事業者への電力供給も進む。川崎市高津区内のヤマト運輸の営業所に続き、今春には川崎信金の高津区内2店舗(高津支店、梶ケ谷支店)に電力供給を始めた。両店舗では太陽光発電設備と合わせ、店舗で使う電力の100%を地産地消型の再生エネ電力でまかなう。再エネ利用の先進モデルを実践し、市民への啓発にも結びつける。
地域社会の高齢化や運転手不足などの課題を解決できる自動運転も、SDGsの達成に寄与する技術として注目される。安全で持続可能な移動や輸送サービスを実現できる。
市はバス会社やシステム開発会社、保険会社などさまざまな事業者と連携体制を構築し、1—2月に自動運転バスの実証実験を行った。約2週間自動運転バスを走らせ、交通量や大型車の流入の多い都市部での自動運転走行を検証した。
川崎鶴見臨港バス(川崎市川崎区)が営業するバス路線2ルートで実証実験した。ルートの一つは大師橋駅と天空橋駅を結ぶ羽田連絡線。県境をまたぐルートの実証実験は全国初となる。27年度には特定条件下で完全自動運転する「レベル4」の実現を目指す計画だ。
分科会での学び合い活性化
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SDGsプラットフォーム分科会の成果報告会で発表する「デジタルを活用した社会課題解決」分科会代表の青木氏(右)
川崎市SDGsプラットフォームの「分科会」活動も活発だ。同分科会は、SDGsに関する共通課題の検討や情報共有、勉強会の開催などSDGsパートナーによる自主的な活動を指す。パートナーが提案した活動を同プラットフォームが側面支援している。これまでに13件の分科会が立ち上がっている。
例えば「デジタルを活用した社会課題解決」分科会は、金融機関の職員である青木健祐氏が立ち上げた分科会で、AI(人工知能)やメタバースなど先端技術を活用した社会課題解決について学び合う。
2月には中小企業経営者らを対象に「AI動画で差別化!中小企業が選ばれるブランド戦略と社会課題の解決」をテーマにセミナーを開催。専門家を招き、インパクトのある動画を低コストかつ短期間で制作できる生成AI動画の基礎や最新動向を紹介した。生成AI動画を製品PRなどに有効活用することで、地域の中小企業の競争力向上に結びつく。また、教育、医療、防災、福祉などさまざまな分野の社会課題解決に役立つ技術であることについて、参加者が理解を深めた。
さらに同分科会では、地域の学生や子どもたちにも生成AI動画などを紹介する取り組みを進めており、次世代の人材育成に貢献している。
【メッセージ】 川崎市長 福田 紀彦 氏/サーキュラーエコノミー起点に価値創出
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川崎市長 福田 紀彦 氏
川崎市は101年目を迎え、新たな時代への歩みを進めています。次の100年に向け、気候変動や生物多様性といった地球規模の課題に真摯(しんし)に向き合いながら、市民・企業の皆さまと共に持続可能なまちづくりを進めてまいります。
その柱の一つが、サーキュラーエコノミーの推進です。使い捨て前提の社会から脱却し、生産・消費等のあらゆる段階で資源を循環させ、新たな付加価値を生み出すこの経済活動は、環境と産業の調和を目指す本市の取り組みを加速させるものとなります。
本市では、臨海部での循環の仕組み構築に向けた企業連携の取り組み「Kawasaki Circular Design Park」を立ち上げ、業種横断の使用済みプラスチック循環実証や、サーキュラーエコノミーの拠点としての情報発信を行っています。
また、今秋開催の川崎国際環境技術展では、「サーキュラーエコノミーが創造するビジネスの可能性」をテーマに、企業と若者が一体となって新事業創出に挑む特別企画や、資源循環の技術等に関する特別展示を実施予定です。これらの取り組みを通じて、サーキュラーエコノミーを起点とした新たな価値を“川崎から”創出していきます。
こうした「つながり」を大切にしながら、川崎はこれからも、循環と共創を力に、持続可能な産業都市の未来を切り拓いてまいります。


