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埼玉県特集
第21回埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰
埼玉産業人クラブ(増田文治会長=マスダック会長)は、埼玉県内の中小・ベンチャー企業の経営者を表彰する「第21回埼玉ちゃれんじ企業経営者表彰」(埼玉県、埼玉りそな銀行、日刊工業新聞社後援)の受賞者を決めた。県内金融機関や産業団体から推薦のあった経営者16人のうち、事業・財務内容に優れ、チャレンジ度が高い5人を選んだ。
《企業データ》
①創業・創立年②資本金③社員数④業種・事業内容⑤所在地
【埼玉県知事賞】日本シームCEO 木口 達也 氏/「未来を創るチャレンジ」継続
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日本シームCEO 木口 達也氏
当社は廃プラスチックを再生材にするまでの中間工程、特に粉砕・洗浄・脱水を行う機械の開発、設計、製造、販売を手がけています。粉砕機を軸に前後の機械も扱い、メーカー機能に加えて総合プラント機能も有しています。
日本で初めて洗浄と粉砕を一体化したシステムを開発し、廃プラスチックのマテリアルリサイクルに貢献してきました。マテリアル化には複数の機械を組み合わせたシステムプラントが不可欠で、「マシンテクノロジーで、地球を豊かにする」というミッションの下、廃プラスチックを原材料レベルまで引き上げることを使命としています。
昨年、「新時代への挑戦」をテーマに経営方針発表会を開催。地球沸騰化という危機的状況の中で当社の機械を世界に広め、世界のマテリアルリサイクル率向上を目指す方針を打ち出しました。利益追求と社会貢献の両立を目指すゼブラ企業として、経済合理性と社会性を「アウフヘーベン」させ、新たな次元への上昇を目指します。一般に分かりにくいリサイクル機械を親しみやすく伝えるため、ユーチューブチャンネルを開設。オープンファクトリーも開催し、子どもたちがプラスチックリサイクルの重要性を学ぶ機会も提供しています。
今後の挑戦として、リブランディング、グローバルカンファレンス開催、廃プラテストセンター設立の三つを掲げました。初のロゴマーク刷新や羽田空港の広告、プロダクトデザインも一新しました。国際カンファレンスは、欧州視察で得た知見を日本でも実現したいという思いから、ドイツやスペインからのスピーカーを招く予定です。さらに、最終ペレット化まで可能な日本初となる研究テストセンターを新設する計画を進めています。自社製品だけでなく国内外の優れた機械を導入し、マテリアルリサイクルのための多様なテスト環境を構築することで「未来を創るチャレンジ」を継続していきます。
《企業データ》
①1979年②8304万円③70人④プラスチックリサイクル機器製造販売⑤川口市
【埼玉産業人クラブ会長賞】トキタ種苗 社長 時田 巌 氏/すべては種から始まります
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トキタ種苗 社長 時田 巌 氏
1917年の創業以来、当社は一貫して野菜の品種改良に取り組んで参りました。現在では、その種子の生産・販売は国内のみならず、世界規模へと拡大。熊本や函館に営業拠点を構え、中国・インド・イタリア・アメリカ・チリには現地法人を展開しています。
現在の事業の礎となったのが、2代目社長・時田勉によるミニトマト「サンチェリー」の開発です。これは日本で初めて本格的に品種改良されたミニトマトで、現在もシェアの約半数を占める基幹品種です。品種改良、すなわち「育種」は、理想とする野菜を実現するために選抜と交配を幾度も繰り返す長期にわたる作業です。一つの品種を世に出すまでには平均10年を要します。病害に強く、気候変動に耐えうることはもちろん、消費者のニーズや食文化の変化も見据えて開発します。
野菜は世界中で日常的に消費される食材で私たちの市場は全地球規模です。一方、世界の人々の「食」の根幹を支えている責任も感じています。近年は気候変動による生産リスクの高まりに対応すべく、北半球と南半球の両方で種子を生産したり、同一半球でも複数の地域に分散して生産を行うなど、安定供給に取り組んでいます。
社員は日々、日本中・世界中を飛び回り、種子の開発・生産・販売に従事しています。私自身も年間約200日海外出張に出て、現地の生産者さまやお客さまとともに、より良い種子の開発に向き合っています。決して楽な仕事ではありません。農業や野菜が好きでなければ続かない仕事だと思いますが、スーパーマーケットなどに自分たちの開発した野菜が並ぶ姿を見るたびに、ほっとする気持ちと同時に大きな達成感があります。特に近年は「グストイタリア」というプロジェクトを立ち上げ、日本では珍しいイタリア野菜の品種を提案し、新しい食文化の発信にも力を入れています。こうした挑戦が、次のマーケットを切り拓く鍵になると信じています。
当社の最大の強みは「社員」です。日本各地、世界各国から多様な背景を持つ社員が集まり、それぞれの個性を活かしながら一丸となって力を発揮する。それが当社の一番の武器です。「良い品種をつくること、良い品種とは何か考え続けること」が私たちの原点であり、使命です。
《企業データ》
①1917年②1億円③150人④野菜・花卉種苗の品種開発、生産、販売など⑤さいたま市見沼区
【特別賞】ビクトリー 社長 堀越 敦 氏/住宅リフォーム「作るための解体」追求
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ビクトリー 社長 堀越 敦 氏
当社は埼玉県八潮市をメイン拠点とし、三郷市、東京都足立区で事業を展開しています。2004年の設立以来、内装解体工事と産業廃棄物収集運搬を二本柱として成長してきました。
今期で21期目を迎え、創業から5年後には産業廃棄物処分業の許可を取得し、運搬から処分まで一貫したサービス提供へと事業を拡大。直近5年では、内装解体に留まらず建物全体の解体工事も手がけるようになりました。さらに、3年前からは法改正を機に、建築物に含まれるアスベストの壁面調査事業も開始し、これらの事業・サービスは、一貫して住宅リフォーム・リノベーション現場に特化しています。
特化した背景には、創業当時、同分野の内装解体工事を専門とする企業が少なかった状況があります。当時、住宅リフォームの解体は解体専門業者ではなく大工や水道設備業者が担っていました。しかし、解体工事会社の多くは、建て替えに伴う家屋全体の解体を主としており、住宅リフォームのような部分的な解体では、解体後の工程を考慮した「作るための解体」という視点が不足していました。
創業当初の当社も解体そのものを目的とした作業を行っていたため、お客さまから多くの指摘をいただく経験をしました。当時は店舗内装解体が事業の9割以上を占めていたため、住宅リフォームからの撤退も検討しましたが、この分野にこそ成長の機会があると考え、「作るための解体」を追求する道を選びました。その結果、現在は住宅リフォーム関連の業務が9割以上を占めるまでに至りました。
現在、全事業部で約230人の社員が活躍しており、平均年齢は35歳前後と、若い力が支えています。これからも、社会の一員として地域社会と人々の暮らしに貢献する責任を自覚し、微力ながら社会貢献活動を継続していく所存です。
《企業データ》
①2004年②1000万円③221人(グループ全体)④建屋解体工事・産業廃棄物収集運搬・処分④八潮市
【特別賞】浜屋 顧問 小林 茂 氏/家電などリユース・リサイクル事業に注力
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浜屋 顧問 小林 茂 氏
当社は埼玉県東松山市に本社を置き全国17ヵ所に買い取りの拠点が、国外にもブラジル・フランスに現地法人があります。不要品と呼ばれる家庭で発生する使えなくなった家電や家財製品、事業所などから発生する什器などをいろいろな経路から買い取り、商品としての価値があるものは「リユース(再製品化)」しています。商品としての価値がなくても、まだ資源としての価値が残存しているものは、「リサイクル(再資源化)」します。リユース事業は主に東南アジア・中東・アフリカ・中南米など海外を中心に輸出し寿命一杯まで使ってもらいます。リサイクル事業で特に最近注力しているのが「都市鉱山」と呼ぶ電子機器の中にあるプリント基板内の金や銀のリサイクルです。電子機器や基盤を全国の拠点や海外から買い取り、東日本マテリアルセンターで集約し加工した後、国内の製錬メーカーに出荷し、金のインゴットに仕上げます。現在は前処理だけですが間もなく一部の製錬(金抽出)をしようと準備しています。
我が社の経営理念は「winwin(ウィンウィン)」です。ウィンウィンの関係を築くことを原理とし、お客さまが喜ぶことを常に考えて行動しています。我々は売り先だけではなく売って下さる方もお客さまなので適正な値段で「高く売れる物は高く買う」ことを実践しています。
今後の展望は、日本そして世界中で「サーキュラエコノミー」を推進することを目標としており、長年培ってきた知見が今のサーキュラエコノミーの過渡期・移行期に何か貢献できるのではないかと考えています。また、電子廃棄物のリサイクル率を上げ、世の中のもったいないを価値に変えたいです。環境負荷の低減という意味でも貢献でき、価値があるものとして日本で富に変えていきます。
《企業データ》
①1980年②6000万円③421名④リサイクル・リユース事業⑤東松山市
【特別賞】日本製衡所 社長 岩淵 智宏 氏/社内一環対応で迅速に製品改善・開発
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日本製衡所 社長 岩淵 智宏 氏
当社は産業用はかり(計量器)の製造販売、メンテナンス、検査業務、自社製品のレンタル事業の四つを柱に事業を行っています。今年で設立54年を迎えました。トラック積載物の重量を正確に測定する「トラックスケール」や、車検場や車両メーカーで使用される計量器を製造しています。このほか、ひょう量100キログラム以上の産業用計量器なども販売するなど、多数のラインアップを揃(そろ)えております。
顧客の要望に応じたオーダーメード製品の開発を得意とし、豚や牛などの家畜用体重計など特殊用途にも柔軟に対応しております。さらに計量器と連動した設備制御や、自動で計量を行う無人システムの開発など、省力化・省人化を実現するソリューションも提供しております。
当社の最大の特徴は、営業や設計、製造、納品、設置、アフターサービスに至るまで、すべてを社内で一貫して対応している点です。これにより、お客さまのフィードバックに基づいた迅速な製品改善と開発が可能です。月に一度の商品企画会議では、営業担当から集まった現場の声をもとに改善案や新製品の企画を行い、スピーディーに市場へ展開しています。
超高速でPDCA(計画、実行、評価、改善)を回すことで、付加価値の高い製品を提供し、競合不在のニッチトップを目指しています。
ニッチトップの代表製品「ワイヤレス・ポータブルトラックスケール」は、業界初のワイヤレス化を実現しました。マレーシア交通局に過積載車両の取締用として採用されました。過積載防止システムやクラウド管理機能も開発し、省人化・業務効率化を支援しています。
「常識を壊し、未来をはかれ」という企業ビジョンのもと、今後もお客さまとともに価値ある未来を創造します。
《企業データ》
①1971年②1000万円③88人④産業用計量器の設計、製造、販売など⑤美里町
第44回 西海記念賞
埼玉産業人クラブ(増田文治会長=マスダック会長)は、研究開発や創意工夫で優れた成果を出した企業の技術者らをたたえる「第44回西海記念賞」を決めた。受賞したのは、「高機能無電解メッキプライマー『メタピアン』」を開発した共同技研化学(埼玉県所沢市)研究開発部、「植物ヒト型セラミドNP」を開発したサティス製薬(埼玉県吉川市)研究部の柚木恵太フェロー。同賞は埼玉産業人クラブで2代目会長を務めた三輪精機の西海図至夫氏による寄付金で創設。2024年度に日刊工業新聞に掲載された記事から候補を選び、技術士ら専門家による協力を仰いで決めた。
共同技研化学(所沢市)/高機能無電解メッキプライマー
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受賞した星野さん -
無電解メッキ用プライマー「メタピアン」を塗布し、形成した銅のパターンメッキ
研究開発部主任 星野 裕司 さん
「当社研究開発品の『メタピアン』が認められ、このような栄誉ある賞を頂けて嬉しい」と研究開発部主任の星野裕司さんは受賞を喜んだ。
開発した「メタピアン」は、無電解メッキの前処理工程を10分の1程度に簡素化できる高機能プライマー(下塗り剤)。基材にプライマーを塗布・乾燥するだけで高品質のメッキ層を形成できる。工程集約で生産性を向上できるほか、省資源化など環境にも貢献できるのが特徴。電子部品や自動車などでの採用を目指し提案を行ってきた。
溶液は透明で、粒子径が1ナノメートルから9ナノメートル(ナノは10億分の1)と微細なため、沈殿しにくく、微細な空隙にも触媒が入り込むことができる。Pd粒子の分散安定性に優れており、樹脂やセラミックス、不織布などの非導電素材に均一なメッキを形成できるのが特徴だ。ポリイミド並の、330度Cまで耐熱性があり、高温条件下でも密着性を維持する。
無電解メッキは電気を使用せず、メッキ液に浸漬することでメッキを形成する。3次元形状や異形曲面に対応できるほか、厚みが均一で、配線パターンにメッキすることが可能だ。通常は脱脂やエッチング、水洗など10ー25工程の前処理工程が必要だった。メタピアンは基材への塗布と乾燥の2工程で前処理が済むため、大幅な工程短縮が可能。メッキ処理液に使う環境負荷物質などを抑え、廃液の減量化やエネルギー、原料削減にもつながり、人体に有害な六価クロムも使用されない。主に、FPC・プリント積層基盤・非接触充電装置部品などの電子部品、自動車のミリ波アンテナや排気ガス浄化触媒、面状発熱体・導電不織布フィルター・電磁波シールドをはじめとする機能素材など、幅広い用途での活躍が期待されるプライマーだ。
同社の浜野尚吉会長は「今後、このプライマーを社内で水平展開し液晶ポリマーフィルムへのより細かいパターンの成形実現などに取り組みたい」と語る。
サティス製薬(吉川市)/「植物ヒト型セラミドNP」の開発
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受賞した柚木さん -
埼玉県の県花のサクラソウの培養細胞から初めて製品化に取り組んだ
研究部フェロー 柚木 恵太 さん
肌本来のセラミドと同等のバリアー機能を持つ植物ヒト型セラミドNPの開発に、世界で初めて成功した。従来、植物からはセラミドNPは取れないことが技術常識であった。未分化細胞の植物カルスにセラミドNPが多く含まれていることを見いだし、あらゆる植物種のカルスから効率的に生産する技術を開発して、特許も登録した。また埼玉県の県花のサクラソウの培養細胞から初めて製品化に取り組み、絶滅危惧種や希少植物などからも製造を可能にした。
セラミドは陸上動物の皮膚に特異的に存在しており、水のない乾燥環境で生きていく上でなくてはならない物質という。柚木フェローは20年ほど前には北海道の大学でセラミドの食品科学的な研究を行っていた。長男が真冬にアトピー性皮膚炎の肌荒れに苦しんでいた時、皮膚科の医師から「寒くて乾燥した地域の子どもの多くが肌荒れで苦しんでいる」と聞いて衝撃を受け、「肌にとって本当に有効なセラミドを開発しよう」と決意したのが研究のきっかけになったという。
2010年には世界で初めて天然物からヒトの肌と同じ構造を持つセラミドの抽出に成功した。16年には植物からは困難と考えられていた世界初のヒト皮膚同一型のセラミドAPの開発にも成功し、既に多くの化粧品に配合している。
肌のバリアー機能を支えるセラミドは大別すると19種あり、セラミドNPは主要な肌セラミドの一つ。加齢などさまざまな要因で低下しやすく、多くの女性が悩む乾燥肌や敏感肌の原因にもなっている。従来の化粧品に使われている化学合成セラミドは人のセラミドに比べて分子サイズが約30%小さく、バリアー機能に課題があった。また通常の植物は生理学的にセラミドNPをほとんど作ることができず、植物から同成分を得ることはこれまで困難だった。
自然に負荷をかけず、サステナブル(持続可能)な化粧品原料開発の技術開発と産業発展への貢献により今回の受賞に至った。「今後は多くの化粧品にこのセラミドを配合して、肌悩みを抱える人に届けていきたい」と今後の製品化に期待を込める。