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埼玉県特集
さいたま市 東日本の中枢へ
基盤整備と産業振興で経済活性化
埼玉県の県庁所在地さいたま市が、東日本の広域ビジネス拠点として注目を集めている。JR大宮駅には新幹線6路線が乗り入れ、高速道路網も充実。地域と都心との間をつなぐ結節点としての役割も期待されている。新市庁舎や地下鉄などの基盤整備や産業振興策の充実により、東日本の中枢都市へ成長を続けている。
良好な交通インフラ 「首都圏のターミナルシティ」に企業誘致
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国の合同庁舎やさいたまスーパーアリーナがあるさいたま新都心駅周辺
さいたま市に拠点を持てば、東日本全体をビジネスエリアにすることができ、面積、人口ともに日本全体の約50%以上をカバーできる—。市は企業誘致を積極的に呼びかける。
大宮駅で新幹線に乗れば、仙台駅や新潟駅まで1時間ちょっと。金沢駅には約2時間で着いてしまう。さらに24年には北陸新幹線が金沢駅から敦賀駅まで延伸した。2030年度末には北海道新幹線が札幌まで延伸予定で、大宮駅からの利便性はさらに高まる。
一方、都心に目を転じると、大宮駅から東京駅や新宿駅へは1時間ほどで行ける。羽田空港や横浜駅へは約1時間、成田空港も1時間ちょっとと鉄道網も充実。都心と比べてオフィス賃料が安いさいたま市は「首都圏のターミナルシティ」として企業の関心も高い。
さいたま市の基盤整備の一環として進められているのが、市庁舎の移転と地下鉄7号線延伸事業。浦和駅から徒歩で行くには距離のある現在の市役所を、さいたま新都心駅近くに移転する計画が進んでいる。また地下鉄7号線延伸事業は、浦和美園駅から岩槻駅までを先行整備区間としており、延伸が実現すれば、国内有数の企業数を誇る岩槻工業団地への都心からのアクセスも便利になる。
市は研究開発型のモノづくり企業やSDGsに取り組む企業に対する認証制度を設けて支援しているほか、新たな産業集積拠点の候補地も従来の6地区から10地区に増やして、企業が進出しやすい環境を整えていく。
市庁舎を新都心へ
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新市庁舎の完成イメージ
2031年度に市庁舎をさいたま新都心に移転するさいたま市。浦和区にある現市役所が老朽化したことなどから、さいたま新都心駅の東口近くに新たに高層ビルを建設する。議会棟のほか、屋根付きと屋外の市民広場、民間機能の施設を整備する。2024年11月に基本設計事業者を決定した。26年4月に基本設計図書を完成、27年4月から実施設計と建設工事に着手する。
基本設計事業者の技術提案の主なコンセプトは三つ。一つは「市民の語らいの場としての市庁舎」、第2は「将来にわたって親しまれる市庁舎」、最後は「地球にやさしく、凜とした市庁舎」。市民に開かれた議会や効率的な行政運営を実現する執務空間、環境に配慮した庁舎を目指す。
地下鉄7号線延伸
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講演する清水市長
地下鉄7号線とは東京メトロ南北線と埼玉高速鉄道線を合わせた総称。「地下鉄7号線延伸事業」は、浦和美園駅から北へ宇都宮線蓮田駅(埼玉県蓮田市)まで延伸することを目指し、浦和美園駅から中間の東武野田線岩槻駅(さいたま市岩槻区)までを先行整備区間としている。先行区間は約7・2キロメートル。その区間の中に埼玉スタジアム駅や中間駅も整備する方針だ。概算事業費は約1390億円で概算工期は約14年を見込む。
さいたま商工会議所に事務局を置く「さいたま市地下鉄7号線延伸認可申請事業化実現期成会」は4月、岩槻区で会議所と共同による講演会を開いた。清水勇人市長は「延伸事業と中間駅周辺まちづくりを着実に進めたい」と強調した。
認証事業で企業支援
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リーディングエッジ企業認証式
産業支援の一環としてさいたま市は「リーディングエッジ企業認証支援事業」と「SDGs企業認証制度」に取り組んでいる。リーディングエッジは優れた研究開発モノづくり企業を認証する。独創性や革新性に優れた技術を持つ市内企業に対して、認証を通じて新技術開発や新事業展開を支援する。現在の認証は32社。
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SDGs企業認証式
一方のSDGs企業認証制度はSDGsの理念を尊重し、経済・社会・環境の3分野を意識した経営活動を推進する市内企業に対して認証することで、SDGsに取り組む企業の経営支援を行うのが狙いだ。認証事業を通じて、地域経済の持続可能な発展や社会課題の解決を進める。現在の認証は292社となっている。
新たな産業集積拠点
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新たな産業集積拠点の候補地区(さいたま市の資料から作成)
地域経済活性化や地元の雇用機会創出、市の財政基盤強化のためには、企業誘致の受け皿となる新たな産業集積拠点の創出が重要となる。さいたま市はこれまで、市内6地区を産業集積拠点候補地区と位置づけて事業化に取り組んできたが、2024年度に新たに4地区を追加指定した。いずれも市の北東部に位置する場所で、国道16号や国道122号沿いのエリア。25年度から事業化に向けた調査などを進める。
新たに選定したのは「丸ケ崎地区」(見沼区)、「宮ケ谷塔地区」(同)、「笹久保地区」(岩槻区)、「国道122号延伸地区」(同)。今後、事業化に向けて地区ごとの現況調査や整備手法、事業範囲、進出対象企業の需要調査を進める。