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埼玉県特集
埼玉県内5大学 現状と展望を語る
埼玉大学 坂井 貴文 学長/多文化共修センターを新設
—2025年度の取り組みは。
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埼玉大学 坂井 貴文 学長
「2024年度に文部科学省の補助事業『ソーシャルインパクト創出のための多文化共修キャンパス形成支援事業』に採択されたことを受けて、多文化共修センターを新たに設置した。本学では50カ国から約520人の留学生が学んでおり、英語授業の拡充やオンラインの活用により日本人学生と留学生が共に学ぶ『国際共修』環境の整備等を進める。また留学生の埼玉県定着促進のため、インターンシップの充実や日本語教育の強化にも取り組む」
—今後の計画は。
「工学部に来春、女子学生の入学枠として入学定員を新設する。人数は、機械工学・システムデザイン学科と電気電子物理工学科にそれぞれ7人、情報工学科に6人。教養学部は共生構想専修課程を新設して心理学とジェンダーを中心に研究・教育を行う。教育学部は教員養成機能を充実するため、教科教育コースでは小学校と中学校の両方を、学校教育コースは小学校の教員免許取得を必須にする。また現在認可申請中だが、大学院人文社会科学研究科にダイバーシティ科学専攻を設置してダイバーシティをめぐる課題解決に取り組む研究者・実践者の養成を目指す」
—他の大学や組織との連携の現状は。
「包括連携協定を結んでいる埼玉県立大学や埼玉医科大学と、共同研究や課外学習プログラムの提供などを進めている。東洋大学とは、研究機器の相互利用やダイバーシティ研究で協力する。本学を含む関東甲信の8機関による『IJIE(アイジー)』でスタートアップを支援しているほか、4月からアントレプレナーシップ教育プログラムを開始した」
—中期計画の進捗や今後の取り組みは。
「実務家教員による科目数や、競争的資金の受け入れ、データサイエンス教育の受講者数などが計画を上回っている。女性教員の採用拡大も進めており、最終的には24%を目指す。また2029年には創立80周年を迎える。キャッチフレーズは『創造の一歩を共に』に決定。周年事業に向けた準備を進めていく」
ものつくり大学 國分 泰雄 学長/ロボットシステム構築人材を育成
—教育の特徴を教えてください。
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ものつくり大学 國分 泰雄 学長
「理論や知識だけではなく、実際にものづくりができる技術・技能も備えた人材の育成を建学の基本理念に掲げている。本学の英文名『インスティチュート・オブ・テクノロジスツ』の名付け親である経営学者のピーター・ドラッカーが『テクノロジスト』と称した、両方に通じる人材を輩出するのが本学の使命だ。このため実技実習を重視しており、2年生は全員に40日間のインターンシップ(就業体験)を経験してもらうようにしている。受け入れ先は大企業から中小企業まで幅広く、開学以来延べ7800社にご協力いただいた。インターンシップを経験することで自分の適性が分かるほか仕事をする上で何を学ぶべきかがはっきりする」
—企業からのニーズは。
「卒業後すぐに現場で活躍できる人材を育成しているため、産業界から高く評価されている。就職先は中小から大手企業まで、業界もさまざま。就職率は開学以来97%以上と高い水準を保っている」
—「ロボティクス社会実装センター」を4月に開設した狙いは。
「モノづくり現場で不足している産業用ロボットシステムを構築する技術者を育てることが目的だ。産業用ロボットは購入してすぐに製造ラインができるわけではなく、複数のロボットが共創的に動作するシステムを構築する必要があり、そのシステム構築人材が不足している。人材育成に向けて、企業と連携して現役技術者を講師に迎えた集中講義を実施している。また農業や建設分野でのロボット活用をさらに推進するため、AI(人工知能)を活用した次世代技術の研究も行っている」
—「地域木材・森林共生研究センター」を開設した経緯は。
「木造建築の教育と森林資源の有効活用という二つの社会課題の解決が目的だ。埼玉県では県産材が十分に活用されておらず、森林保全の観点からも木材の計画的な管理が求められている。木造や森林に関わる専門分野の教員がチームを組み、知見を持ち寄って課題解決に取り組む。研究活動を通じて地域社会への貢献とともに人材育成にも力を入れる」
埼玉工業大学 内山 俊一 学長/完全自動運転「レベル4」に挑戦
—学びの特徴は。
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埼玉工業大学 内山 俊一 学長
「地域に根ざす大学として地域社会の課題解決に貢献する技術を開発し、社会実装に向けて取り組んでいることだ。大学を卒業して企業に勤めると、正解のない問いに多く直面することになる。その時にどう取り組んで解決につなげていくかの予備訓練を大学で経験させている。社会に出たときに活躍できる素養を身につけられるため、企業からのニーズも高いだろう」
—自動運転技術の社会実装に取り組んでいます。
「バスの運転手不足で路線の減少や廃線が課題となっていることから、運転負担を減らして交通インフラを維持する策として自動運転技術の開発に力を入れている。社会貢献に密接に関わるため、学生もモチベーション高く研究している。深谷市民の理解を得て、自動運転に対応したスクールバスを運行しているほか、市民や観光客の足として機能する自動運転バスの実証を行っている。現在は運転手が乗車し緊急時には人が介在する『レベル2』での運行だが、将来的には特定条件下での完全自動運転『レベル4』を目指している。ハードルは高いが大学としては挑戦していく責務がある」
—安全で長寿命の「レドックスフロー電池」の研究開発に力を入れています。
「大学内のものづくり研究センターにバナジウム系レドックスフロー電池を設置している。不燃性材料で構成するため発火の危険がなく、リチウムイオン電池と比較して安全性が高い。再生可能エネルギーの蓄電に適し、非常災害時の電力供給としての活用が期待できる。民間企業が沖縄県国頭郡に同電池の設置を進めており、当大学も技術監修などを行っている。今年は同電池が社会実装され、普及していく元年になると期待している」
—深谷市名産の深谷ねぎに関連した技術も開発しました。
「大量に廃棄されていた深谷ねぎの葉からバイオプラスチック材料を生成して成形加工する技術を開発し、深谷ねぎをモチーフにした箸置きを製造した。深谷ネギのような名産品とテクノロジーを組み合わせて新たな価値を生み出していきたい」
日本工業大学 竹内 貞雄 学長/産学官金一体プロジェクト推進
—2025年度の取り組みは。
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日本工業大学 竹内 貞雄 学長
「研究力強化では、デジタル化の進展と脱炭素の社会的潮流を踏まえ『グリーンテクノロジー』を通した新たな課題に挑戦する成長分野を強化し、産学官金が一体となった戦略的研究プロジェクトを推進する。具体的には、今春、本学が研究代表機関となる『受粉ドローンと害虫防除ロボットのための自動制御技術の開発と普及』の研究課題が、農林水産省の公募型プロジェクト『スマート農業技術の開発・供給に関する事業』に採択された。複数の大学、農業法人、企業、自治体、金融機関でコンソーシアムを形成し、プロジェクトを推進する。農業とテクノロジーを融合し、作業などの自動化や省力化を実現するとともに供給体制の確立を目指す。農作業などの負担軽減により、地域社会における担い手不足の解消や若者が参入しやすい農業を目指す。学内には実証実験に向けた自動化植物工場やドローン飛行施設の建設も着工する。並行して、農業の脱炭素化を進めるべくメタン発酵によるバイオエネルギー生成過程で発生する残渣を使った有機肥料づくりの実証実験も進める」
—教育力については。
「数理・データサイエンス・AI教育プログラム『応用基礎』認定に向けた準備を進めるなど、引き続きDX社会を支える人材育成を推進する。また専門力以外でも学生のボランティアや学内外の自主的な活動を記録する『フィールドアクティビティレポート』を今年度から本格的にスタートする。学生が自分の活動を継続的に記録することで、成長の可視化実社会での活躍を意識した行動変容につなげたい。就職活動などでの活用も期待する」
—24年度から女子学生のための生理休養制度を試行しました。
「試行の結果、学生・教員から好意的な声が多く寄せられたため、4月から対象科目を拡大した。さらに運用ルールを整備し、9月から全学的に正式な制度としてすべての科目を対象に運用を始める」
東京電機大学 長原 礼宗 理工学部長/「開かれた理工学部」誕生へ
—「開かれた理工学部」を作ります。
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東京電機大学 長原 礼宗 理工学部長
「2025年4月に理工学部長に就任し、現在は当学部でできることは何かを考えている段階だ。その中でも、いくつかの課題は、はっきりしており、特に理工学部を研究も教育も両方で“ReOpen(開かれた)な学部”にしなくてはならないと思っている。学ぼうと思えばインターネットなどで何でも学べ、短期的に答えを求めがちな現代で、大学の良さは改めてどういう部分にあるのか考え、解明していきたい。また、大学は地域が栄えてこそ発展すると考えるため、より積極的な地域貢献を通したつながりを大事にしていければと思う。同じくつながりの視点では、いくつかの高校などと独自の連携協定を結んでおり、鳩山キャンパスという広い土地を利用しながら高校生に実験活動の場を提供している。今後、このような連携を基にした探求活動の幅も広げていきたい」
—理工学部の強みは。
「当学部は一つの学部にまとまっている、いわゆる一気通貫型でその中で基礎を学ぶ理学、応用展開をする工学がある。学生は1、2年生でさまざまな分野を学びながら自らのやりたいことを固め、それぞれの専門に進めるよう入り口の幅を広くしている。最近は情報も溢れているため、入学時から既に学びたい事や自分の方向性を見つけられている学生もいるが、ぜひ学内での経験・体験・学び・実際に手を動かすものづくりを通じ、興味があることを見つけて貰えたらと思う。また、オナーズプログラム(次世代技術者育成プログラム)を開講。大学院理工学研究科に進学することを前提に、3年生以降の意欲のある学生は、より高度な研究を行うことができ、先輩や教員ともに出会いが持てることも強みだ」
—高い内定率、大学院進学率を誇ります。
「まじめで実直、誠実な学生が多く、比較的早い時期で就職先が決まる学生が多い。全体で約99%の内定率を維持しており、学生の売り手市場と言われる昨今だが、求人社数も平均して学生1人につき約9・9社来るなどしている。また、大学院への進学率も飛躍的に増加しており、現在約30%の学生が進学している」