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【スペシャルインタビュー】日本の半導体産業 九州が導く/九州経済連合会会長 倉富 純男 氏
九州の産業が未来を見据えた動きに拍車をかけている。活発な投資に注目が集まる半導体関連では、新産業を興す力に半導体を位置づけるべく連携が広がる。他方、食分野では海外を目指し、インバウンド(訪日外国人)誘致に新たな魅力を打ち出す。オール九州で取り組みを進める九州経済連合会の倉富純男会長に展望を聞いた。
食の輸出・訪日客誘致…魅力もっと発信
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九州経済連合会会長 倉富 純男 氏
-半導体に関連した九州への活発な投資が注目されています。
「日本の半導体産業は九州がけん引していく。半導体を作るだけでなく、先端半導体を含めた半導体を使う産業を興す。そして新しい産業、成長産業を育てる。日本を再び元気にするきっかけをつくりたい。それが九州の役割だ」
「大学や金融機関を含め、多くの人が同じ気持ちを抱いており、いろいろな中小企業がサプライチェーン(供給網)に入ろうと頑張っている。半導体産業の振興に向けた交流も活発で、台湾から九州を頻繁に訪れている。行政では県庁レベルだけでなく、市や町でも半導体を意識した取り組みが始まっている。福岡市や北九州市の2025年度予算案にもそれが表れている。工業団地に企業を呼ぶというやり方とは違った、一緒に研究開発をして産業を興していくサイエンスパーク的な発想が浸透しはじめている」
-九州以外の地域でも半導体産業を振興しようと動いています。他地域との関係をどのように考えていますか。
「ラピダス(東京都千代田区)が北海道で生産する先端半導体を用いる産業を九州で興したい。『作る』『使う』で地域間が連携していくだろう。ラピダスの工場は新千歳空港に近い。空路で考えると九州から遠いとは思わない。北海道経済連合会と九経連は情報交換をしている。一緒に日本を再び元気にしようという意識は同じだ」
-九経連は農林水産業の振興にも積極的です。
「九州の大きな産業の一つであり、食の輸出は大きなテーマだ。九経連は九州として産品を売り込もうと海外で九州フェアなどを実施しており、PRを積み重ねていく。ブランドを構築しながら進めることが重要だ。各県の取り組みもあるが『九州でやろう』という意欲も多くの人が持っている。直接輸出できるコネクション、しっかりした商社があるのが強みで、九州の関係者にもっと知ってもらうための努力もしないといけない」
-国内の他地域からのインバウンド誘致に、どのように取り組みますか。
「九州や西日本地域の首長らが連携して『西のゴールデンルート』を打ち出している。この動きとしっかり連携しようと九州観光機構と話している。インバウンド誘致では2025年大阪・関西万博が大きな契機になるだろう。海外から万博に来る人に九州をPRしたい。また万博の期間だけでなく、関西で腰を据えて九州をPRしていく流れは九経連としても柱の一つとして取り組む」
「インバウンド誘致で力を入れていきたいのが自転車の国際ロードレース『ツール・ド・九州』だ。関連して九州では、サイクルスポーツに限らずスポーツをはじめとする体験型の旅行が楽しめることを訴えていく」
-人口減少への対応も課題です。
「生活や子育てのしやすさは九州の強み。さらに安心して子育てができ、社会全体で育てる環境をつくらなければならない。各県と連携した九州地域戦略会議で取り組む。その上で所得を上げて産業を興すことはできる。人口減少の中でも豊かな暮らしを維持できることが重要だ。人口と豊かさは比例するものではない。一人ひとりが幸せになれるためにデジタル変革(DX)もあり、並行して力を入れていく」
ポイント
九州が目指す半導体関連産業の振興では、半導体を使う産業の育成もテーマの一つ。半導体を生かす製品やサービス、例えばAI(人工知能)が貢献できる先には、自動車、農林水産、観光など九州で従来盛んな産業もある。それらが抱える人材不足などの課題は、すぐそばにあるニーズ、需要とも言える。
(西部・関広樹)