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埼玉県
埼玉県内5大学 現状と展望を語る
埼玉大学 重原 孝臣 学長/産学官連携を強化 地域との共創加速
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埼玉大学 重原 孝臣 学長
—4月から新学長に就任しました。大学の26年度の取り組みは。
「4月1日付で『ALL SAITAMAミライ機構』を新設した。埼玉県内の産学官連携の強化が狙いで、特に県北地域への展開を重視している。シン世代農業、健康科学、インフラマネジメントの3分野に焦点を当てて、将来は熊谷市などの県北地域にサテライトオフィスを開設する方針だ」
—狙いは。
「地域との共創を加速させ、県内の産業振興や社会課題の解決にダイレクトに結びつける。埼玉県は製造業が集積する一方で都市化が進み、全国に先駆けた課題解決が求められる地域。地域の企業や自治体と現場のニーズに応える共同研究や人材育成を強化する」
—社会人の学び直しを支援する「彩の国Komvux(コンヴックス)プラットフォーム」については。
「本学と埼玉県立大学、ものつくり大学の3大学が中心となり、県内の産学官金が連携して立ち上げたリスキリング教育の拠点。データサイエンスやDX、経営マネジメントなどの多彩な講座を提供している。県内企業経営者や従業員が新たなスキルを身につけて組織変革を主導し、地域経済の競争力を高めていくことを期待している」
—他大学との連携の進捗や今後の計画は。
「近隣大学と連携を進めている。埼玉県立大学や埼玉医科大学とは、保健・医療・福祉分野の教育・研究連携を強化している。また東洋大学とは理工系女子育成の強化を目指した体制づくりや共同利用による研究施設の有効活用を進める。横浜市立大学とは植物科学分野の研究交流を開始している。今後も各大学が持つ強みを持ち寄り、全体の教育・研究力を底上げしていきたい」
—地元経済界や地域社会をどう支援していきますか。
「最も大きな貢献は、地域を支えて未来を切り拓く『高度人材』を輩出すること。留学生の県内企業への就職支援や女性技術者育成などは、人手不足や多様性確保に取り組む地元企業に役立てると確信している」
ものつくり大学 佐藤 勲 学長/モノづくり人材の地位向上目指す
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ものつくり大学 佐藤 勲 学長
—4月から学長に就任しました。日本のモノづくりに対しての考えは。
「モノづくりに携わる人間が減少し、若者の興味関心が薄れていることに強い危機感がある。文部科学省などは先端研究を後押しし、多くの学術知を生み出しているが、それを『誰が形にするのか』という視点が抜け落ちている。学術知を物理的な形に落とし込める人材の不足を解消し、モノづくりの意欲を再燃させることが私の使命だと考えている」
—2027年度に予定しているカリキュラム改革の狙いについて。
「ピーター・ドラッカーが『テクノロジスト』を提唱してから約30年が経過した。この間、AI(人工知能)の台頭や環境問題などモノづくりを取り巻く状況は劇的に変化した。この時代に適合した形で、テクノロジストを再定義するのが改革の目的だ。例えば、情報メカトロニクス学科ではスクラッチからアイデアを出す『創造デザインコース』を、建設学科では長寿命化や環境適応を考える『インテリア・リノベーション』などのコースを新設する。単に既存のモノを形作るだけではなく、社会の声を聴きながらゼロからシステムを構築できる能力を養う狙いがある」
—長期インターンシップ(就業体験)の重要性は。
「大学は学術水準の向上を図る過程で閉鎖的になりがちだが、モノづくりは『人』が相手である以上、世間や社会を知らなければならない。そうした意味でも40日間のインターンシップは非常に重要だ。営利企業という現場で『顧客の要望に応えなければ対価は得られない』という現実を学生に身をもって体験させる」
—今後、どのような人材を輩出したいですか。
「就職した先で、企業の文化や風土を変えていけるような人を育成したい。私は技術者が医師のような実務家と同じように社会からリスペクトされる世の中にしたい。医学部が6年間かけて高度な実務訓練を行うのと同様に、本学も現場教育を通じて社会を支えるプロを育てている。モノづくりを通じて社会を支える人々の地位(ポジション)を高めていくことが、私の最大の目標だ」
埼玉工業大学 内山 俊一 学長/「社会実装技術」で地域社会に貢献
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埼玉工業大学 内山 俊一 学長
—来年度、2コースを新設します。
「工学部機械工学科に『鉄道・アトラクション機械専攻』を立ち上げる。鉄道や遊園地のアトラクションも機械工学の対象として学ぶことができる。また人間社会学部情報社会学科には『スポーツビジネス専攻』を新設。用具開発やチーム運営など、工学や経営の視点でスポーツを支えたい学生のニーズに応える。将来的にはスポーツチームとの連携も視野に入れる。さらにデータを分析してスポーツ現場に生かす力も養う。いずれも学生が実体験として身近に感じる対象を工学の力で開拓する、本学らしい挑戦だ」
—「社会実装技術」という言葉を掲げ、地域貢献に力を入れています。
「単に技術を研究するだけでなく、それを実際に世の中で役立てる『社会実装技術』の推進を大学の柱に据えている。自治体や企業、金融機関などと連携して開発した技術を社会で広く使われる形にまで持っていくものだ。大学単独では成し遂げられないことも、産官学金のコンソーシアム(共同体)を通じることで実現可能になる。こうした『自分の学びが誰かの役に立っている』という実感は、学生の学習意欲の向上にもつながる」
—地域貢献の具体例は。
「代表的なのは埼玉県深谷市で実施している自動運転の実証実験だ。バス会社や民間企業と連携し、公道での走行実績を積んで運転手不足に悩む地域の交通インフラ維持に貢献している。またエネルギー分野ではレドックスフロー電池の研究開発に注力している。不燃性の水溶液を利用するため安全性が高い。現在、沖縄県での実証実験を通じ災害時の非常用電源としての社会実装を目指している」
—どのような技術者を育成しますか。
「昨今の情報系ブームの中でも、本学は日本の産業を根底で支える機械、電気、化学、エネルギーといった基幹的な分野をこれからも大切にする。情報技術を動かすのも最終的にはハードウエアやインフラだからだ。また本学は仏教精神を建学の精神としており、高い倫理観を持つ技術者の養成を重視している。地域に深く根ざし、地域の課題を解決できるたくましさと、社会に対する誠実さを兼ね備えた技術者を輩出することが使命だ」
日本工業大学 竹内 貞雄 学長/高大連携を推進 次代の人材育成に貢献
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日本工業大学 竹内 貞雄 学長
—2026年度の新たな取り組みは。
「文部科学省中央教育審議会による『知の総和』を踏まえ、今春からカリキュラムを大幅に刷新。教育の『質保証』と『質向上』の両輪を基盤に置く方針を明確にした。オリジナル教材『成長支援ハンドブック』を開発し、自身の活動を客観的に記録し振り返る仕組みを構築した。学生の成長の『見える化』が狙いだ」
—具体的には。
「非認知能力の中核が、課外活動、ボランティア、そして大学公認のフィールドアクティビティ。学生イベントの効果もあり、新入生の課外団体加入率は約7割に達した。多様な経験を踏まえた人間味溢れる人材を育成したい」
—技術者育成は産業界でも喫緊の課題。理系人材の裾野を広げるには。
「科学技術・イノベーションを担う人材の育成には、初等中等教育からの継続的な取り組みが重要。本学は従前より高大連携事業を推進している。本学の教育資源を活用し、次代の人材育成に積極的に貢献したい」
—なかでも、特長的な取り組みは。
「高校生が来校し、興味・関心に応じた研究等を体験する『研究室インターンシップ』。工学の現場に触れることで、見栄えが良いところだけでなく、失敗や検証のような『リアルな姿』を体感して欲しい。自分の進路を考える機会としてもらいたい」
—スマート農業の研究に進展は。
「本学が代表機関を務める研究プロジェクト『受粉ドローンと害虫防除ロボットのための自動制御技術の開発と普及』が採択され、学内に大型研究施設『スマート農業センター』を開設。最大の目玉は、窓のない30メートル四方の建物内に新設した3棟の専用実験施設。外部環境の影響を受けずに、温湿度が精密に制御された栽培環境の下、多様な作物や栽培手法等に柔軟に対応できる。企業8社、行政5機関および5大学による産官学連携の枠組みで、アグリテックの研究開発を促進する」
東京電機大学 長原 礼宗 理工学部長/学生の希望に応じカリキュラム柔軟設定
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東京電機大学 長原 礼宗 理工学部長
—2026年度、注目の取り組みはありますか。
「26年度から『教養教育』に新たなカリキュラムを導入した。新カリキュラムでは、人間科学科目、英語科目、数学科目、情報科目、自然科学技術科目の5科目を全学部共通で実施していく。28年度までの5カ年の中期計画「TDU Vision2028」で掲げる『理工学のためのリベラルアーツ教育の構築』を目指し、23年から全学的な教養教育の体制を整備してきた。25年4月には教養教育を担う全学的な教員組織『教養教育センター』を設置。4年間の学びを総合的に捉え、専門科目と関連した教養科目を体系的に習得させることで、科学技術で社会に貢献できる人材育成に取り組む」
「従来の教養教育は『共通教育科目』の名称で東京千住キャンパス(東京都足立区)と埼玉鳩山キャンパス(埼玉県鳩山町)の両方で、それぞれ独自のカリキュラムを展開していた。しかし、学生からのニーズや学修志向に応じた環境の整備などを鑑み、横断的に授業を受けられるようにした。基本的にはオンラインまたはオンデマンド授業を想定している」
—オンラインやオンデマンド授業の価値を再認識しています。
「コロナ禍で、非対面のオンライン・オンデマンド授業が一気に広まったが、ここ数年は対面の授業が主流へと戻っていた。一方で、動画などが残っていると重要な部分が繰り返し見られて復習がしやすいなどの理由で、オンラインのメリットを再確認するようになっている。元々の授業時間は一つの学期で、100分✕14回だったが4月からは、90分✕15回にし、そのうち1回は動画配信型のオンデマンド授業にすることで、単元の復習などに大いに活用して欲しいと考えている」
—大学同士の交流も盛んになってきますね。
「他大学同士の交流は現在もあるが、授業の面やさまざまな部分で交流を広げ『開かれた大学』を作っていくことが大事になってくる。学生が学びたいと思うことを、学べる環境を作れるよう授業の形もフレキシブルに対応していきたいと思う」
