-
業種・地域から探す
続きの記事
埼玉県
変化に強い経済へ構造転換を加速/中小企業の成長支援に重点
大野 元裕 埼玉県知事に聞く
-
埼玉県知事 大野 元裕 氏
埼玉県が中小企業の成長支援に本腰を入れている。原材料高に加え緊迫する国際情勢などの変化に直面する企業を支えるため、いち早く相談窓口を設けたほか、資金繰り支援を実行するなど相次ぎ手を打っている。さらに、人手不足への対応策として外国人留学生や若者の就業支援を加速する。ほかにも、既存の産業団地をサーキュラーエコノミー(CE、循環経済)拠点へ転換する試みや、イノベーション創出拠点「渋沢MIX」を通じた海外展開支援など攻めの施策も目立つ。大野元裕知事に企業支援策などを聞いた。
イラン情勢緊迫化 産業への影響懸念/県内87カ所に緊急相談窓口
—緊迫するイラン情勢など、世界情勢の不透明感が増しています。県内産業への影響や今後のリスクをどう見ていますか。
「3月1日時点の調査では県内中小企業の景況感に持ち直しの動きが見られたが、イラン情勢緊迫化を受け、さまざまな業界へのヒアリングを重ねてきた。現場からは、海外からナフサ由来の製品が輸入できない、小規模事業者などサプライチェーン(供給網)の川下ほど資材調達が困難になっている、あるいは価格が高騰しているといった声が届いている。この影響によって、倒産件数の増加や金融機関への融資申し込みの急増には至っていないが、事態の長期化を懸念する声はかなり強い。不透明な国際情勢が県内経済に及ぼす影響を注視すべき段階にある」
—具体的な支援策を教えてください。
「県内87か所の中小企業緊急相談窓口において、イラン情勢の影響を受ける県内企業からの相談に対応している。資金繰りへの不安が多いため、県中小企業制度融資『経営あんしん資金』に『経済変動特例』を設け、情勢変化の影響を受ける中小企業を支える体制を整えている。また価格高騰への対応として、エネルギー使用量や二酸化炭素(CO2)排出量の削減など省エネに向けた設備導入への補助も実施。省力化に向けた設備導入などへの補助も開始する。さらにはデジタル変革(DX)導入支援も行うなど、矢継ぎ早に支援策を打ち出していく」
—県庁としてのエネルギー消費抑制の取り組みは。
「イラン情勢による不安を取り除く措置が必要な一方、わが国の経済構造を考えれば一定程度のエネルギー消費抑制も必要だ。そこで、県庁内での会議のオンライン化やテレワークを推進している。もちろん経済に冷や水を浴びせてはならないが、県庁としてできることはしっかりやらないといけない」
既存産業団地のCE化で新モデル構築/企業連携・事業化を支援
—CEの取り組みを強化しています。埼玉県にはどのような地理的優位性がありますか。
「CEは廃棄物の発生を最小限に抑え、資源をできる限り循環させようという経済システムだ。リサイクルと異なるのは『経済性の確保』が前提であること。その点、埼玉県は人口が多く、消費社会があり、なおかつ生産手段を有する企業も多い。消費地と生産拠点が近く交通網も発達しているため、資源の移動コストを抑えられるというCE構築に最適な土壌がある」
—既設の産業団地をCE拠点へと転換する取り組みを進めています。その理由と狙いを教えて下さい。
「交通の便が良く回収コストも低い産業団地は、CE推進に適した環境の一つだ。企業が密集し、廃棄物の種類や量がまとまりやすいことから、地域内循環のポテンシャルは極めて高い」
「産業団地を造成する際にCEを意識して企業を誘致した例もあるが、新規造成には時間を要する。そのため、既存の産業団地に立地している企業がCE型ビジネスへ転換し、持続成長を目指すことが重要と考えている。そこで、同じ団地内の企業がCEという共通の目的を持ってコミュニケーションが取れる環境を整備する。その上で、団地内の連携構築や事業化を進めていくのが第一歩となる。こうした取り組みに一社でも関心を持てば、そのやる気を受け止めてグループ作りを主導・支援する考えだ」
イノベ拠点「渋沢MIX」 海外連携を強化/企業の新たな挑戦支援
—2025年7月に開設した「渋沢MIX」の強化事項を教えてください。
「26年度は海外連携を強力に進める。すでにドイツ・ブランデンブルク州とはパートナーシップのさらなる発展に関する共同声明を作成した。その中で、相互の経済発展、ビジネス環境、スタートアップ支援などについて情報交換し、企業間の取引促進に努めることに合意した」
「シンガポールでは現地企業と県内企業がピッチイベントを実施した。両国は高齢化社会という共通課題を抱えており、課題解決に向けたシナジーも期待できそうだ。県内企業の強みである医療・ロボット分野を踏まえ、連携先をアメリカ、インド、中東などへ拡大していき、県内企業の挑戦を一層後押ししたい」
「県が目指しているのは、渋沢MIXを起点に国内外へネットワークが広がる『ハブ・アンド・スポーク』の構築だ。渋沢MIXがハブとなり、県内企業や海外の支援機関、スタートアップ、研究機関をつなぎ、そこからネットワークが伸びていくイメージだ。渋沢栄一翁が人と企業をマッチングして経済を築いたように、本拠点を通じて県内企業が世界と共創し、新たな技術領域に挑戦できる環境を整えていく」
—深刻な人手不足に対し、外国人留学生や若者の就労をどう後押ししますか。
「県内中小企業の約35%が人手不足と感じており、特に運輸、飲食、建設業で深刻だ。その一方で、県内の大学に通う外国人留学生の約7割が県内就職を希望しているものの、実際に国内で就職できるのは全国平均で半数程度にとどまっている。このギャップを埋めるため、新たに、外国人留学生のインターンシップ(就業体験)を仲介する事業を始める。日本の企業文化への理解を深めてもらうとともに、即戦力となる高度な人材の確保を支援する」
「若者向けには、1月に開設した総合就職支援サイト「AI(あい)たまキャリア」を軸に据える。従来のAI適職診断に、インターンシップの申し込み機能を加え、就職支援サービスを一元化していく。企業向けには、インターンシップの進め方などを学ぶオンラインセミナーを実施し、受け入れ環境の整備を支援している」
「若者には多くの県内企業を知って、体験してもらい、自分に合った県内の就職先を見つけてもらう。また、企業側には採用活動を支援することで円滑な人材確保につなげていきたい」
