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関西特集
万博から関西各地へ/関西パビリオン9府県が参加
関西広域連合は大阪を除く近畿1府4県に鳥取、徳島、福井、三重の近隣4県を加えた9府県が参加する「関西パビリオン」を出展する。テーマに掲げるのは「いのち輝く関西悠久の歴史と現在」。来館者に関西の歴史と現在の関西に触れ、未来の姿を描いてもらう狙い。昔から日本の中心を担ってきた地域として関西の良さを紹介し、国内外からの来館者に関西各地への来訪を促す窓口となるパビリオンを目指す。
工夫を凝らし魅力発信
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関西パビリオンの外観。切り絵グラフィックで各県を描く(25年3月) -
関西パビリオンの大関西広場 -
関西パビリオンの展示。福井県は恐竜がモチーフの体験展示
外観は灯籠をイメージし、全体が六角形の形状。それを関西各地を象徴した切り絵をデザインした白い膜で覆っている。内部は地域全体を表現する「大関西広場」と、それを取り囲み放射状に並ぶ各府県による展示エリアを設ける。関西や周辺地域の力の「結節点」を目指す関西広域連合を象徴する構成だ。
大関西広場は「エントランスゾーン」と高さ12メートルの吹き抜け空間「センターサークル」からなる。参加府県の展示エリアでは8府県が各地の魅力を発信し、来館者が関心に応じて自由に展示を見られる。
展示は地域の象徴的な存在を打ち出した内容が目を引く。滋賀は季節や時間、天候によって変わるびわ湖の美しさを映像と連動する光のアートで表現。福井は独自の地域資源として恐竜を全面的に打ち出した。懐中電灯型デバイスによる探索展示や仮想現実(VR)映像で白亜紀から現代、未来に至る「恐竜王国」を体感できる。
鳥取は鏡張りの部屋の床面に鳥取砂丘の砂を敷き詰めた「鳥取無限砂丘」が核。来場者は名探偵として床面に虫眼鏡デバイスをかざし、観光や食、工芸などの情報を発見できる。和歌山は神々が鎮まる場所とされる紀伊山地の多様な価値観の共存の様子を映像タワーなどで表現する。
多様な内容のアピールに取り組む府県もある。京都は茶道の精神を柱に、文化や食、産業、観光など6テーマで一定期間ごとに展示を入れ替える。兵庫はステンドグラスや時空を飛び回るバスツアーの演出で来県を促す。三重は映像コンテンツを中心にしたトンネルなどの演出で県内の自然や観光、文化、祭り、食を紹介。徳島は県内の吉野川の洪水で運ばれた土砂を藍染料「すくも」作りに活用した歴史を踏まえた空間デザインで、自然や観光資源、伝統芸能の阿波おどりなどをプロジェクションマッピングで披露する。
日本館、“循環”を体現
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国産杉の直行集成材(CLT)を使用した日本館の外観
政府直営のパビリオン「日本館」。2月末に建物は完成し、環境配慮の“循環”を体現した。独特の円形建築物の外壁・内壁には国産杉の直交集成材(CLT)を多く使い、閉幕後はCLTを再利用する計画。敷地内にはバイオガスプラントが設置され、生ごみも実際に処理する“生きた展示”でもある。
日本館は敷地面積約1万3000平方メートルと単館で会場内最大のパビリオン。70年大阪万博でも日本館は太陽の塔と並び注目を集めたが、今回の“日本館”も万博ホスト国として存在感を示しそうだ。
循環型社会を実現するため「ゴミから水」「水から素材」「素材からもの」への循環を3エリアで構成する展示内容にした。具体的に万博会場で発生した生ごみを集め、建物内のバイオガスプラントで微生物の力を使い、水やバイオガスなどに分解。水は浄化されて館内中央の開放空間の水盤にためられ、ガスはプラントの電力として活用される。
一方で食料不足や環境対応などに貢献する藻類にも着目。光エネルギーを効率利用し、少量の水で藻類が育ち、光合成により酸素や有機物を生み出す培養装置を展示する。ここでは178本のチューブをつり下げ、チューブ内に培養液を流し藻類が育つ様子を実際に見ることが可能だ。藻類が身近になるよう、日本発の人気キャラクター、ハローキティを1メートルサイズで32種類の藻類に扮(ふん)し並べた展示空間も作った。世界最大級の「火星の石」も展示する。
日本館の循環展示には、有力技術を持つ日本企業も関わる。バイオガスプラントはカナデビア(旧日立造船)、藻類の培養展示でちとせ研究所(川崎市高津区)などが協力。経済産業省の万博担当者は「バイオモノづくりの最先端技術、日本の伝統的な循環型モノづくりも発信していく」と強調する。