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関西特集
モビリティーやカーボンニュートラル 新技術を披露する関西企業
実証通じ未来の“当たり前”に
大阪・関西万博の会場では、主要な国内・民間パビリオンや海外パビリオン以外にも、会場内のいたるところで、モビリティー、デジタル、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)など、さまざまな新技術の展示や実証実験が行われる。各企業は、多くの来場者に体感してもらいながら課題を洗い出し、今後の改善につなげていく考え。来場者にとっては、未来の“当たり前”にいち早く触れることができるまたとない機会だ。
大阪ガス/会場内の生ゴミやCO2でe―メタン製造
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バイオメタネーション設備(手前)と、サバティエメタネーション設備の2つによって構成する
大阪ガスは、万博会場内の「カーボンリサイクルファクトリー」の目玉として、メタネーション実証設備「化けるLABO(ラボ)」を設置した。会場内から出る生ゴミや二酸化炭素(CO2)を基に合成メタン(e―メタン)を製造し、会場内の厨房(ちゅうぼう)などで使用する。こうしたモデルケースを示し、e―メタンの意義を訴求する。
生ゴミ由来のバイオガス中のCO2と、グリーン水素を反応させe―メタンを製造。その後さらに、会場内から集めたCO2と反応させて量を増やし、1時間当たり7立方メートル分を会場内に供給する。これは一般家庭約170件相当の量だ。
地球環境産業技術研究機構(RITE)の設備、エア・ウォーターの設備、日本館のバイオガスプラントから集められたCO2を利用。多くの企業が連携し、実用化に向けた課題を洗い出す。
エア・ウォーター/農業事業や冷凍・ロボット技術をアピール
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大阪ヘルスケアパビリオンで提供する「ミライのミックスドリンク」
エア・ウォーターは大阪ヘルスケアパビリオン内の「ミライの食と文化ゾーン」で、北海道産の野菜や果物を使った「ミライのミックスドリンク」を提供する。旬な果汁や果肉、すりつぶした野菜などを使用した特製の冷凍キューブを使ってドリンクを作り、2台のロボットアームが充填してふたを取り付けて販売。農業事業、冷凍技術、ロボット制御技術など、実演を通じ自社の取り組みを紹介する。
同パビリオンでは「ミライの都市ゾーン」にも出展。リビング、キッチン、ウィンドウの三つの空間で未来の暮らしを体験できる。
未来社会ショーケース事業のグリーン万博「カーボンリサイクルファクトリー」としては、次世代型二酸化炭素(CO2)回収装置を実証。回収したCO2は大阪ガスのメタネーション実証設備に供給するほか、ドライアイスとして活用する。
クボタ/多用途向けコンセプト機 未来の農業をシミュレーション
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農作業や土木・建設工事など多用途で活用できるコンセプト機を展示し、未来の農業を示す
クボタは、未来につづく、地球と人にやさしい持続可能な「食と農業」をテーマに、1台で農業や建設業など多用途に活用できる最新のコンセプト機や、未来の農家を体験できるシミュレーションゲームの展示を「未来の都市」パビリオンで行う。20メートル超の天幕スクリーンと巨大なモニターを設け、未来の農業を映し出す。
コンセプト機は耕起や収穫など用途に応じアタッチメントを付け替えることにより、1台で多用途に活用できる。トラクターやコンバインなど用途別の購入の手間を軽減する。また完全無人の自動運転機能も備え、複数台が協調しながら運転し、作業効率化を図る。農業機械としてだけでなく、建設・土木などでの活用も想定する。
シミュレーションゲームでは、来場者が農家になったつもりで最新テクノロジーを活用した農業を体験できる。
カナデビア/ゴミをエネルギー変換、ゲーム感覚で体験
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世界樹を通じて、四つの資源循環ストーリーを体験できる
カナデビア(旧日立造船)は「未来の都市」パビリオンで、「人と地球の幸せな未来」をコンセプトに、ゴミがどのようにエネルギーに変換され、社会に供給されるのか、来場者が四つのストーリーを通じて学び、体験する仕掛けを展示。展示エリアには、高さ約6メートルの世界樹が人と地球のつながりを示し、一人ひとりの行動が社会を変えるメッセージを訴える。
世界樹にはカメラやセンサーを導入し、非接触で操作可能な80インチ液晶パネル搭載のハーフミラーを4面備える。来場者は鏡の前に立ち、手を動かして落ちてくるゴミを分別したり、タービンを回したりしてゴミを燃やした熱で電気を作ったりとゲーム感覚で資源循環を体験できる。
ブースアテンダントのユニフォームには、生地の裁断時に発生する廃棄物をAI(人工知能)で大幅に削減する技術を取り入れた。
関西電力送配電/多機能ポールで新インフラ提案
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パビリオン「未来の都市」の入り口に3台設置されたスマートポール
関西電力子会社の関西電力送配電(大阪市北区)は、万博協会と12者の企業・団体によるパビリオン「未来の都市」で、さまざまな機能を持つ「スマートポール」を出展する。ペロブスカイト太陽電池、AI(人工知能)カメラ、照明などの機能を生かし、防災、交通、観光などの分野で活用できる新しいインフラを提案する。
スマートポールはパビリオンの入り口に3台設置。AIカメラを活用して人流解析や迷子探査などを実現でき、ポール表面の湾曲ディスプレーに映し出すデモを実施する。風力発電やスマートフォン用ワイヤレス充電などの機能も備える。
パビリオン内の展示ブースでは拡張現実(AR)コンテンツを使い、スマートポールの活用想定を分かりやすく説明する。出展を通じて市場動向などをとらえ、自治体やデベロッパー向けに提案を本格化する考えだ。
岩谷産業/水素燃料電池船を運航、水素利活用訴求
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中之島から万博会場まで運航し、水素利活用をアピールする
岩谷産業は、万博会場の夢洲(大阪市此花区)へアクセスできる水素燃料電池船「まほろば」を運航させる。二酸化炭素(CO2)や環境負荷物質を排出しない燃料電池の使用により、臭いが無く、騒音・振動の少ない乗り心地を実現。「動くパビリオン」として同社がリードする水素事業をアピールする。
燃料電池で発電した電気とプラグイン電力のハイブリッド動力で航行する。船体後部に、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)技術を基にした燃料電池システムや、水素充填量約130キログラムの専用タンクを搭載。2階建てで、開放感を感じる客室を設けた。
万博会期中、中之島GATEサウスピア(大阪市西区)―ユニバーサルシティポート(同此花区)―夢洲の間で運航する予定。関西電力南港発電所(同住之江区)内の設備で水素充填と充電を行う。