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関西特集
「未来社会の実験場」注目集める万博の交通モビリティー&インフラ
今回の大阪・関西万博は人工島「夢洲」が会場で、海に囲まれた万博となる。会場へのアクセスは地下鉄とバスが中心で自家用車対応はパーク&ライド駐車場が整備された。万博会期中の想定来場者は2820万人。万博で活用される交通モビリティーと交通インフラの状況を紹介する。
充実するインフラ 将来に期待高まる
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万博会場最寄り駅として1月に開業した夢洲駅の出発式
大阪・関西万博の来場客をスムーズに受け入れるため、鉄道や空港の整備が進められてきた。万博会場である人工島の夢洲に乗り入れる地下鉄が開通し、主要アクセスとして期待される。海外からの来場客が多く使うと見られる関西国際空港は国際線のキャパシティーを拡大した。先端技術の披露の場でもある万博は空飛ぶクルマや自動運転バスに触れる機会になる。
万博会場への鉄道アクセスは大阪メトロの中央線のみ。コスモスクエア―夢洲間の1区間を延伸し、1月に会場最寄りの夢洲駅を開業した。万博の主要アクセスとして1日当たり約13万3000人の利用を見込む。
海底トンネルを通る延伸区間は2カ月前倒しで開通した。「万博スタッフなどが来やすくなり万博にプラスだ」(大阪市の横山英幸市長)と評価する。開業セレモニーでは大阪メトロの河井英明社長は「万博の玄関口にふさわしい駅。万博の成功に最大の貢献をする」と強調した。
夢洲駅コンコースには柱のない広い空間に幅55メートルと地下空間で世界最大級の大型デジタル看板を備える。万博関連の映像を流して「わくわくして万博に行ける」(横山市長)。
夢洲は30年に統合型リゾート施設(IR)が開業予定。大阪市西部の拠点駅としての期待がかかる。
関西エアポート 国際線エリア拡充
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ターミナル改装で国際線キャパシティーを拡大した関西国際空港
関西エアポート(大阪府泉佐野市)は、関西の空の玄関口である関西国際空港で改装していた第1ターミナルを27日に全面オープンした。エリア配置の見直しや保安検査場の拡張などで、関空全体で国際線の出入国合計の旅客数を18年度実績比約2倍の4000万人に引き上げる。万博開幕前に開設し、大阪や関西への訪問客増に備える。
第1ターミナル内で国内線を挟んで分かれていた国際線エリアを一体運用できる配置に見直し、国際線の使用可能スポット数を従来比6増の40とした。保安検査場はレーン増設などで処理能力を従来比約3割増の毎時6000人とする。
国際線ラウンジも集約して改装し、ビジネス向けと最上級クラス向けの2種類とする。26年には国際線の商業エリアを拡張、13店舗を設ける。
空飛ぶクルマ 次世代技術に注目
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スカイドライブが大阪市内のホテルで展示する空飛ぶクルマの有人試験機
空飛ぶクルマは万博の目玉として期待されたものの、商用運航は実現しなかった。それでも日本航空、ANAホールディングス(HD)と米ジョビー・アビエーション、丸紅、スカイドライブ(愛知県豊田市)の計4陣営が、会場周辺飛行や、会場内と大阪市内、兵庫県尼崎市内をそれぞれ結ぶデモンストレーション飛行を見せる。
来場者が次世代の移動手段の可能性を感じるととも感じるともに、世界へのアピールで企業への関心を高め、事業化への機運向上につなげる。
スカイドライブは空飛ぶクルマをより身近に感じてもらうため、星野リゾート(長野県軽井沢町)とコラボレーション。同社が大阪市内で運営するシティホテル「OMO7大阪」に有人試験機を展示する。
大型バス自動運転レベル4認可取得
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万博会場と直結する舞洲のパークアンドライド駐車場
大阪メトロはバスの電気自動車(EV)化を進め、自動運転の社会実装を目指した実証試験も行っている。万博開幕までに174台のEVバスを導入、万博会場内外での輸送に用いるとともに、路線バスのEVを拡充する。2035年度をめどに500台を超える路線バス全車両をEV化する。昼間走行して夜間充電する車両が多いと見られる中、充電コストを低減する仕組みを築く。自動運転は一定条件下で無人走行できるレベル4での社会実装を目指す。
夢洲に近接して万博の来場者用パーク&ライド用駐車場が設けられる舞洲の一部区間でレベル4の認可を取得し、大型EVバスで運行する。レベル4の認可取得は近畿運輸局管内では初で、一般道での大型バスでのレベル4は国内初という。
万博の会場内外輸送で実証し、万博閉幕後には大阪府南部の南河内地域で乗客がいるケースも含めて3年間程度、実証実験する。万博のレガシーとして公共交通の確保を図る方針だ。実用化では無人運転時の車いす利用者などへの対応が課題だが「30年度までの社会実装を目指す」(河井英明社長)と意気込む。
高齢化社会への対応も視野に「一定のモビリティー、サービスを用いて大阪全域でネットワーク化し、圧倒的に便利にする」(同)と意気込む。
走行中ワイヤレス給電を万博でPR
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ダイヘンなどが万博会場で走行中ワイヤレス給電の実証を行う(ダイヘン提供)
「走行中ワイヤレス給電の技術を大阪・関西万博で広く知ってもらいたい」―。ダイヘンでワイヤレス給電を手がける鶴田義範技術開発本部インバータ技術開発部長は、万博への期待感を述べる。
同社は関西電力や大林組、大阪メトロと連携し、万博会場で小型電気自動車(EV)バスを使った走行中ワイヤレス給電の実証を開幕日の4月13日から半年間行う。同実証は万博のコンセプト「未来社会の実験場」にも合致し、注目を集めている。
万博会場の西側でバスが周回する道路の直線区間に送電コイルを内蔵した「プレキャストコイル」が埋め込まれた。受電コイルを搭載したEVバスがそこを走ると給電される仕組みだ。東ゲートのバス停道路にもプレキャストを設置し、停車時での給電にも活用する。
万博における今回の実証の狙いを鶴田氏は「技術を知ってもらう、半年間の耐久性を確認する、普及へ向けた法整備の再確認―の三つある」と語る。ただ走行中のワイヤレス給電は目に見えるものではない。万博会場でEVバス利用者にどう技術を伝えるかは一工夫が必要で、関電など他社の実証メンバーらとPR手法を検討中だ。鶴田氏は「ワイヤレス給電の便利さや社会的意義なども知ってほしい」とする。
大型バルーン設置 万博機運盛り上げ
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大和ハウス工業が整備した万博のバスターミナル
万博の交通網を支えるため、大和ハウス工業はグループで保有する「大阪マルビル」(大阪市北区)跡地に万博会場と結ぶバスターミナルを整備した。同社は同跡地に複合ビルを2030年に建設予定だが、万博期間中はバス発着場として日本国際博覧会協会に無償提供する。同ターミナルから京阪バス(京都市南区)がEVバスなどを走らせる。仮設の待合所や、目印になる万博公式キャラクター「ミャクミャク」の大型バルーンも設置し機運を盛り上げている。