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化学産業
機能性繊維・機能性材料
【機能性繊維】 天然の質感・肌触り 実現
合成繊維メーカー各社は機能性を向上する素材の開発に注力している。汎用品との差別化を図るべく、新製品の開発や関連企業などの買収を通じて付加価値の創出と競争力の確保を進めている。
紙の風合い 包装・医療用
東レはオレフィン系長繊維不織布「アートレイ」シリーズを発売した。包装材料やメディカル、ラミネート用基材、フィルター骨材など資材向けを主軸に、用途に応じた3タイプを用意する。
「アートレイFN」は紙に似た風合いで耐摩耗性や破れにくさに優れ、包装や医療用途に対応する。「アートレイHS」はかさ高で剛性や通気性に優れ、フィルター基材としての用途を想定する。「アートレイBC」は2成分複合型で熱により接着が可能。ラミネート用の基材や包装材料に適する。国内を中心に拡販し、将来的には海外展開も視野に入れる。
優しい肌触り 着用で快適性
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帝人フロンティアが開発した「ソロテックス デライト」の生地
帝人フロンティア(大阪市北区)は、ポリウレタンを使わずにストレッチ性と自然な質感を実現した「ソロテックス デライト」を開発した。
ポリウレタンを使用した素材は耐久性や軽量性などに課題があったため、特殊な糸加工技術や構造で克服しつつ、エアリーな質感や優しい肌触りでストレスのない着用快適性を実現した。
既存のソロテックスの構造である伸び縮みするバネ状の原糸の周りに、柔らかいポリエステル繊維を組み合わせ、ランダムで大きさが異なる複数のバネ状の形状を発現させた。これにより微細立体表面構造による天然繊維に似た質感と肌触りのよさを実現した。微細な生地の凹凸による発汗時のべたつきも防ぐことができるという。
PFAS代替 撥水加工向け
クラレは米スタートアップ・ネルンボを買収した。ネルンボの表面処理技術は繊維やフィルム、アルミニウムなど多様な基材に対し機能性を付与できる。冷凍設備の除霜用途や規制が強化される有機フッ素化合物(PFAS)を代替するアパレル撥水(はっすい)加工向けなどに技術の提案を進め、30年以降に売上高100億円規模の事業創出を目指す。
【機能性材料】 CO2再資源化—新製品
温暖化対策の一環として大気中の二酸化炭素(CO2)を削減することは、温室効果ガス(GHG)の直接的な削減につながるため、大きな期待が寄せられている。この削減技術の一つとして、大気中のCO2を資源と見なし、有用な物質へと変換・利用するCCU(CO2の回収・利用)技術が提唱され、技術開発が進展している。
CO2回収時 エネ大幅削減
AGCは空気中のCO2を直接回収する「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)技術」において、CO2を効率的に吸収する化学吸収液を開発した。ポリプロピレングリコール(PPG)を用いた非水系化学吸収液で従来の水系化学吸収液と比べてCO2回収時の消費エネルギーを大幅に削減する。PPGは揮発性が低く、蒸発に伴うエネルギーロスが少ない特徴を持つ。またアミン化合物と互いに混ざり合う性質が高いため、安定的にCO2を分離回収できる。
プラ原料への変換効率30倍
住友金属鉱山と京都大学は、CO2を従来比約30倍の変換効率で一酸化炭素(CO)に還元する紫外光応答型光触媒を開発した。光エネルギーを利用して、CO2をプラスチック原料となるCOに変換する人工光合成を行う。CO2還元光触媒は、土台である半導体光触媒と反応を向上させるための助触媒で構成する。
京大院工学研究科分子工学専攻の寺村研究室の触媒合成評価技術と、住友金属鉱山のコア技術である粉体合成・表面処理技術を融合させ、助触媒の担持手法とサイズ、構造を最適化した。
OA用ゴムローラーに再生
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人工石灰石を用いたOA機器用ゴムローラー
住友大阪セメントは住友ゴムと共同で、CO2を再資源化した人工石灰石を用いたOA機器用ゴムローラーを開発した。原料に用いる石灰石はCO2再資源化人工石灰石に置き換えた合成ゴムコンパウンドを使用した。
人工石灰石は原料にカルシウムを含む廃棄物を再利用しており、1キログラム当たり約420グラムのCO2を鉱物固定している。既存製品と同等の性能を持つことを確認済みでCO2排出量削減や埋立処分場の延命につながる。
