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化学産業
リチウム電池/ペロブスカイト太陽電池
分断の時代 地域戦略・次世代技術で普及目指す
リチウムイオン電池(LiB)材料各社は今後、分断の時代に合った地域戦略が求められる。1月に発足したトランプ米政権は電気自動車(EV)導入など気候変動対策への支援を縮小し、化石燃料への回帰を打ち出す。米欧のEV市場が減速する一方で、中国はEV大国の道をひた走る。材料も中国勢が市場を席巻し、日本勢の立場は厳しい。各社の成長は米中対立による分断を逆手にとった地域戦略や、ライセンス事業にかかっている。
【リチウム電池】 北米・中国 EV—成長戦略描く
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旭化成の湿式セパレーター「ハイポア」
旭化成は現在、カナダ・オンタリオ州でLiB用セパレーター工場建設を計画通り進めている。パートナーのホンダはカナダでのEV・電池工場計画を延期したが、旭化成は2027年の稼働予定を変えていない。
カナダの新工場はセパレーターの基材膜をつくる製膜から塗工、スリットまで一貫して行う計画。現時点で、北米において製膜から手がけるメーカーは旭化成以外に米国企業1社のみという。他の競合は基材膜を輸入しなければならず、“トランプ関税”は旭化成にとって追い風となる。
UBEも米国にLiB電解液やファインケミカル製品の原料となるジメチルカーボネート(DMC)の新工場を建設中だ。DMCで年産能力10万トン、誘導品のエチルメチルカーボネート(EMC)で同4万トンのプラントをルイジアナ州内に建設し、26年中に稼働予定。DMCは現在、米国で生産されていない。
LiBは日本発祥であり、材料の技術・ノウハウでは一日の長がある。
三菱ケミカルは中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)とLiB関連特許のライセンス供与契約を結んだ。電解液子会社の独自技術で、電池の容量維持特性を向上させて長寿命化につながるという。日本触媒は26年に中国の合弁工場でLiB用のリチウム塩の年産能力を現状の1200トンから数千トンに増強する。さらに28年以降に1万トン超へ引き上げる方向で検討する。
減速気味のEVだが、中長期的な市場拡大は間違いない。材料各社は北米と中国という2大市場に対して、自らの成長戦略を描かなければならない。
ペロブスカイト太陽電池など次世代技術の普及が進みつつある。積水化学工業と積水ソーラーフィルム(大阪市北区)は6月、神戸市や関西エアポート神戸(神戸市中央区)と連携し、神戸空港の制限区域内でフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証実験を開始したと発表。実証期間は2027年3月までを予定している。
【ペロブスカイト太陽電池】 安全性 施工方法 神戸空港で実証開始
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空港制限区域内緑地帯へ設置されたペロブスカイト太陽電池
神戸空港制限区域内の緑地帯にフィルム型ペロブスカイト太陽電池が設置された。空港特有の耐風性能など安全性の検証や、施工方法の検証、耐久性・発電効率の検証を行う。空港制限区域内での同電池の設置は国内初という。
50年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入拡大が求められており、太陽光発電はその主力電源とされている。同実証は空港機能を維持・確保しながら再生エネ導入の拡大を目指した取り組みだ。実証結果は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置方法の確立に生かし、適用拡大により脱炭素社会の実現につなげる。
日本は平地面積が少なく、従来のシリコン系太陽電池では適地が限られる。一方で、薄くて軽く、柔軟性を持つフィルム型ペロブスカイト太陽電池は設置が困難だった場所に適用できる可能性が増すとされている。
積水化学グループは次代の中核事業開発のため、新規事業の創出に取り組む。主に環境・エネルギー面などの社会課題解決に寄与するイノベーションの創出に注力する。既存のシリコン型太陽電池が設置できないビル壁や荷重制約のある建築物などへの設置方法の確立を目指す。
25年6月には大阪本社を置く堂島関電ビルの大規模改修が完了したと発表。23年3月から改修を進め、外壁面に国内で初めてフィルム型ペロブスカイト太陽電池を取りつけた。同電池は23年10月に実装完了しており、発電した電力は11階コワーキングスペースでの電力利用に加えて、蓄電池を接続することで館内の非常電力としても利用する。
