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化学産業
カーボンニュートラル
化学再編後押し
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)が化学産業の背中を押す。石油化学コンビナートの巨額なグリーン化投資は1社単独でまかないきれず、業界再編の機運が高まっている。中国勢の躍進がさらに焦燥感をかき立てる。大変革時代を見据え、サーキュラーエコノミー(循環経済)関連を含む環境技術の開発競争もまた激しさを増す。
「脱炭素」実現へ生き残り/再編協業
再 編
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石化コンビナートのグリーン化は1社では難しい(三井化学市原工場)
三井化学と出光興産、住友化学は9月に、汎用樹脂のポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)事業を統合することで基本合意した。三井化学と出光の共同出資会社に住友化学が合流する方向で検討する。3社は千葉県の京葉コンビナートに主力工場を構えており、PPなどのポリオレフィン(PO)事業統合によるシナジーを発揮しやすいと判断した。2026年4月に統合を完了し、年間80億円以上の合理化を見込んでいる。
3社の背中を押したのはまさにグリーン化だ。各社のグリーン原料供給力と技術・チャネルを組み合わせ、これからの脱炭素社会において顧客にとって“真のプライムソリューションパートナー”を目指す方針だ。
出光は廃プラスチック分解設備や再生航空燃料(SAF)生産設備を有し、ケミカルリサイクルナフサ(粗製ガソリン)やバイオナフサを製造できる。コンビナート内のナフサクラッカーで各種ナフサからオレフィンをつくり、グリーン原料としてPP・PEプラントに供給する流れを描く。使用済みのプラスチックを再び回収することで、資源循環が可能になる。
協 業
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資源循環は資源に乏しい日本にとって重要課題(三菱ケミカルのケミカルリサイクルプラント)
三菱ケミカルとENEOSは7月に、茨城県神栖市に国内最大級のケミカルリサイクルプラントを完成させた。25年度内に商業運転を始める。年間2万トンの廃プラを処理する能力を持つ。
同プラントは三菱ケミカルの茨城事業所に建てた。回収した使用済みプラスチックを熱分解してナフサと重質留分まで戻し、両社の既存設備に投入して新たなプラスチック原料などに再利用する。
環境対応技術—開発 着々
カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに資する製品・技術開発も業界内で活発だ。
バイオ由来
東ソーはバイオ原料を使った特殊合成ゴム「クロロスルホン化ポリエチレン」を世界で初めて開発し、量産化技術を確立した。製品の炭素原子のうち90%以上をバイオ由来成分に置き換え、製造から廃棄までのライフサイクル全体の温室効果ガス(GHG)排出量を従来比約30%削減できるという。サンプル提供を進めて早期の発売を目指す。
同社のクロロスルホン化ポリエチレンは工業用ホースや接着剤、ハンドレールなどに活用されている。もともと一般的なプラスチックより石油資源の使用は少なかったが、今回バイオ由来の原料に変更した。
生分解性
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カネカ生分解性バイオポリマー製人工芝と充填材(ミズノ提供)
カネカとミズノは生分解性バイオポリマーを使用した屋内型スポーツ用人工芝葉と充填材を共同開発した。同ポリマーを使った人工芝葉は世界初という。100%植物由来で、土壌中や海水中でも約6週間で二酸化炭素(CO2)と水に生分解できる。
新開発した人工芝にはカネカの生分解性バイオポリマー「Green Planet」を採用した。人工芝は摩耗などにより雨水とともに海に流出することが課題。開発品はマイクロプラスチックの流出を従来の人工芝の半分以下に削減する。
三洋化成は電気自動車(EV)向け添加剤を開発した。EVの潤滑油はモーター冷却のため低粘度化が進む。耐摩耗性・耐焼き付き性を持つ同添加剤が十分な油膜厚を形成し、駆動ユニット部品の故障リスクを低減する。
資源循環
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陸上養殖プラント(エア・ウォーター提供)
エア・ウォーターは産業ガスで培ったグリーンテクノロジーを生かし、脱炭素社会の実現に貢献する。地産地消エネルギーによる資源循環モデルの開発拠点「地球の恵みファーム・松本」はその取り組みの中核をなす。
バイオマスガス化発電プラント、メタン発酵発電プラント、陸上養殖プラント、農業ハウスで構成し、企業連携による地域単位のエネルギー・資源マネジメントを先行実証している。未利用材や廃棄物から“カーボンニュートラル資源”を獲得し、持続可能な資源循環の構築を目指す。
CTOサミット/カーボンニュートラルに質疑集中
日本化学会は7月25日、化学会館(東京都千代田区)で「第3回CTOサミット 研究開発からみたカーボンニュートラル実現への道のり~カーボンニュートラルの本音を語ろう!~」を開催した。企業のマネジメント層を中心に約170人が参加し、活発な議論を行った。第1部では化学系企業や文部科学省の取り組みが紹介され、第2部ではパネル討論と質疑応答が行われた(写真)。参加者は社会課題に対する産業界の取り組みに関心が高く、カーボンニュートラルへの対応などに多くの質疑が集中した。
CTOサミットは、研究開発や経営企画のマネジメント層が一堂に会し、率直に意見交換を行える場として、今後も年1回の開催を予定している。
