-
業種・地域から探す
続きの記事
化学産業
水素・アンモニア
脱炭素化へ供給網構築 次世代エネルギー
石油化学コンビナートの脱炭素化には、燃料として水素やアンモニアの利用が不可欠だ。エネルギー多消費産業である石油化学コンビナートは、敷地内に火力発電所を設けている場合が多い。また、基礎化学品を生産するナフサクラッカーでも化石燃料を使っており、燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素などは、代替燃料として有力な候補だ。一方で、供給体制の構築が大きな課題であり、総合商社がサプライチェーン(供給網)整備に動いている。
クリーンアンモニア 利用進む
-
アンモニア供給網の構築が急務(アンモニア輸送船=完成イメージ=日本郵船提供)
三井化学は大阪工場(大阪府高石市)にあるナフサクラッカーの一部燃料を、メタンからクリーンアンモニアへ切り替える。足元では2030年度までに実証炉を導入する計画を進めている。
また、三井物産、IHI、関西電力とともに、大阪の臨海工業地帯で水素・アンモニアのサプライチェーン構築に向けた検討も始めた。クリーンアンモニアの安定調達が可能になれば、尿素などをクリーン誘導品として展開できる。クリーンアンモニアからクリーン水素を取り出し、水素誘導品のクリーン化を図ることも想定する。
JERAと三井物産は今年4月に、米国・ルイジアナ州での低炭素アンモニア製造プロジェクトについて最終投資決定した。総事業費は約40億ドル(約6000億円)で、29年から世界最大規模となる年間約140万トンのアンモニアを製造する。生産したアンモニアは、米肥料大手のCFインダストリーズを含む3社が出資比率に応じて引き取る。
プロジェクト名は「ブルーポイント」、立地場所はルイジアナ州アセンション郡。25年中にプラントを着工する。天然ガスから水素をつくり、アンモニアに転換。製造過程で発生したCO2は回収し、輸送・貯留することにより、ブルーアンモニアとして日本などのアジアや欧州に供給する。
三菱商事も同じルイジアナ州で、スイスのメタノール大手プロマンと共同で30年度までに年間120万トンの低炭素アンモニアの生産開始を目指す事業を計画する。このほど出光興産が同事業への参画に合意した。出光興産の徳山事業所(山口県周南市)の既存設備を活用した輸入基地でアンモニアを受け入れ、周辺のコンビナートなどに供給する。
丸紅は中国の遠景能源(エンビジョン)と、中国・内モンゴル自治区で生産される再生可能エネルギー由来のアンモニア「グリーンアンモニア」の長期引き取り契約を締結した。脱炭素化に取り組む肥料メーカーやナイロンメーカー向けなどへの販売を想定する。
エンビジョンは24年に内モンゴル自治区の赤峰市で、風力発電由来の電気を活用したグリーンアンモニアの試験製造を開始した。今年後半以降に商業用プラントを順次稼働する予定。商業用プラントの製造能力は年30万トンを予定しており、大規模なグリーンアンモニアの製造としては世界初の稼働となる見込み。エンビジョンのプラントはコスト競争力も強みだという。
水素 使用済みプラ由来に切り替え
-
夏休みの小学生にKPRプラントを紹介(レゾナック川崎事業所)
肥料などに使うアンモニアの国内生産は縮小傾向にある。UBEは28年までに山口県宇部市でのアンモニア製造を停止する。製造過程でのCO2排出量が多く、中国勢の増産で市況が悪化しているためだ。
同業のレゾナックは川崎事業所(川崎市川崎区)で使用済みプラスチックをアンモニアなどに再利用する活動を推進している。一連の活動を通じて、30年までにアンモニア製造に使う水素の全てを、使用済みプラスチック由来の水素に切り替えることを目指す。
川崎事業所はアンモニアなどさまざまな化学品を製造している。アンモニア生産では原料の約半分に天然ガス由来の都市ガスを使用。アンモニア生産に重要な水素をどう安定調達するかなどを検討する中、03年に川崎プラスチックリサイクル(KPR)の取り組みを開始した。
KPRでは、まず首都圏の自治体などから回収した使用済みプラを破砕機や金属選別機、成形機による加工の後、低温と高温のガス化炉で処理する。さらに精製工程などを経てアンモニアを生産する。工程上で水素なども生産できる。
