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化学産業
半導体/高性能化支える 半導体材料
半導体は人工知能(AI)やデータセンターなど先進的な社会の発展に貢献する製品に使われるため、高性能化が必要とされる分野だ。化学メーカーにとっても半導体の性能を支える材料などは大きな成長領域として捉える。化学各社は新製品や増産投資、新たな取り組みなどを活発化している。
増産投資が活発化
将来に向けた半導体の基板の開発で新たな動きが出てきた。信越化学工業は従来比1・5倍の直径12インチ(300ミリメートル)に大型化した窒化ガリウム(GaN)ウエハーのサンプル供給を始めた。三菱ケミカルグループや住友化学もGaN基板の大口径化の実用化などに向けて研究開発を進める。
今後、電気自動車(EV)での用途が期待されるパワー半導体向け炭化ケイ素(SiC)基板も需要が見込まれる分野であり、貼り合わせウエハーといった形での連携が出てきた。
レゾナックは仏ソイテックとパワー半導体向け8インチ(200ミリメートル)エピタキシャルウエハーの材料となる、8インチのSiC貼り合わせ基板を共同開発する構えだ。レゾナックの高い品質のSiC単結晶基板とソイテックの基板貼り合わせ技術を組み合わせることで、生産性などを高める。
住友金属鉱山の子会社であるサイコックス(東京都港区)も8インチ貼り合わせSiCウエハーの量産ラインを新設する。大口工場(鹿児島県伊佐市)に構築し、自動車向けなど大口径基板のニーズに対応する構えだ。
一方、半導体関連材料は、化学各社でも増産投資の動きが活発だ。住友化学はフォトレジストで大阪工場(大阪市此花区)や韓国子会社の東友ファインケムで生産体制を増強。2024年度には生産能力が21年度比2倍となる見込み。三菱ケミカルグループは、北九州市の九州事業所でフォトレジスト材料の新工場を建設する計画だ。
三菱ガス化学は米国の子会社で、半導体の洗浄工程などに使われる超純過酸化水素(超純過水)と超純アンモニア水(超純安水)の生産能力を25年にかけて増強する。米国で超純過水の年間生産能力を従来比5割増にし、超純安水を同約6割増に引き上げる。
技術力生かし課題解決へ
一方で、半導体の進化に伴い、前工程において回路をより微細化することが物理的に難しくなってきているのが課題だ。複数の半導体チップを積層するなど、後工程での工夫の需要が増している。そうした需要の変化に対応した、半導体材料に関わる動きも活発になってきている。
信越化学は半導体後工程用パッケージ基板を製造する新工法と、その専用装置を開発した。新工法は「インターポーザー」と呼ばれる中間基板の機能をパッケージ基板に直接盛り込むことができ、工程短縮と大幅なコストダウンを実現する。
旭化成は半導体チップなどの表面を保護する感光性絶縁材料「パイメル」で新たな工場や品証棟を静岡県富士市の拠点に整備。
東レは先端半導体向け有機フッ素化合物(PFAS)フリーのモールド離型フィルムを実用化するなど、化学各社は技術力を生かした半導体に関わるさまざまな需要に即応する構えだ。