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化学産業
水素・アンモニア/次世代エネ、量産技術確立へ
次世代エネルギーの水素・アンモニアの利活用の動きが活気づいてきた。アンモニアも水素も、その製造過程も含め温室効果ガス(GHG)を排出しないことが求められている。日本の化学メーカーは長年の技術力でさまざまな事業を展開。海外企業や国内同業他社との連携も深化している。
カーボンニュートラル後押し
水素・アンモニアは炭素を含まないため、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない。2050年のカーボンニュートラル(GHG排出量実質ゼロ)実現に向け、次世代エネルギーとして注目が集まっている。ただ、水素・アンモニアの安定供給のためには、量産技術の確立と供給網のさらなる整備が必要。そのための水電解やアンモニア合成といった領域でノウハウを持つ化学メーカーへの期待は大きい。分解炉や自家発電設備などで燃料転換につながれば、化学産業全体のカーボンニュートラル達成を後押しすることにもつながる。
旭化成と伊デノラは、水素製造用のコンテナ型アルカリ水電解システムの開発・販売などで協業している。両社が持つアルカリ水電解システムの技術やノウハウなどを生かし、導入しやすい小型のアルカリ水電解システムとして25年以降の販売を目指す。幅広い水電解需要に対応することで、旭化成が手がける大規模アルカリ水電解システムの展開にも弾みを付ける。
両社はコンテナ型アルカリ水電解システムの開発・評価・販売・検討を進める覚書(MOU)を締結。水電解分野における開発から生産、販売、顧客サポートに至るまで、協力体制を構築する。
両社で開発するアルカリ水電解システムは、設備容量を1メガ-7・5メガワットで調整可能な加圧小型電解槽を用い、水素製造に必要な機器類をコンテナに収納する仕様。水電解システムの新規導入を目指す企業に対するエントリーモデルや、水素ステーションに併設する分散型の設備向けなどを想定する。導入コストや設置スペース、納期などで負担が少ないことを訴求する。
レゾナックは川崎事業所(川崎市川崎区)で取り組む廃プラスチックのケミカルリサイクル(CR)事業を拡大する。20年以上の稼働実績などを生かし、技術ライセンスの供与を提案する。
レゾナックは03年、廃プラを水素・アンモニアなどの化学品原料にCRする「川崎プラスチックリサイクル(KPR)事業」を開始した。「10年くらい前は安定稼働が課題」(高橋秀仁社長)だったが、環境意識の高まりを受けてリサイクルされるプラスチックの質が向上。シミュレーションにより、KPRプラントの最適な運転状況を確認できるようになった。
そうした中でKPR事業の技術ライセンスを供与する提案を行う。高橋社長は「設備投資が大きいので、当社がさまざまな場所に作れるわけではない。資金力はあるが技術力がないところにはライセンスを供与し、世の中全体でCO2排出量が減ることになれば良い」と期待する。
社外との連携で活動の幅も広げている。伊藤忠商事と廃プラ・衣類をアンモニアにするリサイクルで連携。川崎市とは、川崎港で回収した海洋プラスチックゴミを水素・アンモニアなどにリサイクルする実証実験に取り組む。KPRを生かし、循環型社会への貢献にも力を入れている。
地域社会で取り組む事例もある。山口県周南市のコンビナートで操業する出光興産、東ソー、トクヤマ、日鉄ステンレス、日本ゼオン、化学工学会、周南市からなる協議会は、30年までに年間100万トン超のカーボンフリーアンモニア供給網の構築を目指している。出光興産の貯蔵施設をアンモニアの受け入れ拠点に改修し、集積する化学工場の既存パイプラインなどの活用を検討。アンモニアの燃焼技術などの実証でも連携する。国内でも先行しているが、産学官民で専門的かつ実践的な社会実装を進め、先行きは〝カーボンニュートラルコンビナート〟を目指している。