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化学産業
車載の軽量化・機能性材料/化学各社の技術力 高性能化支える
軽量化
化学業界各社の技術力が自動車軽量化の実現に貢献する。世界中で開発が進む電気自動車(EV)は従来主力のガソリン車と比べ航続距離が短く、燃費向上には車体の軽量化が欠かせない。比較的軽い樹脂部品や軽金属部品をはじめ、高性能を支える材料への注目度が高まっている。
EVシフトで金属代替想定
旭化成は炭素繊維とポリアミド樹脂を組み合わせた材料「UDテープ」を手がける。EVシフトによる部品の金属代替需要を想定している。例えば、サスペンションアームでは鉄などの金属が使用されてきたが、ポリアミド樹脂「レオナ」をUDテープで補強することで、高強度などを有しながら約20%の軽量化につなげられるという。
三菱ガス化学は炭素繊維複合材料(CFRTP)関連製品で需要を探る。同材料で試作したソリでは、樹脂繊維と炭素繊維を高分散させることで高強度とやわらかさを両立。またTFP(テーラードファイバープレースメント)工法により最小限の材料で高強度と軽量化を実現した。自動車や航空宇宙など、幅広い分野で活用できるとみている。
UBE子会社のUBEマシナリー(山口県宇部市)は、型締め力9000トンの大型ダイカストマシン「UH9000」を発売した。EVなどで使う車体構造部品を溶融したアルミニウム合金と精密金型で一体成型するダイカスト技術「ギガキャスト」に対応。まずは国内の完成車メーカーを中心に販売する。26年までに年間10台の生産・販売を目指す。
他方、EVでも電子部品や液晶パネルなどによる電装化が進んでいる。日油は車載電子部品用添加剤、電動ユニット用潤滑剤、液晶カラーフィルター用オーバーコート材の需要伸長を見込む。またEVはガソリン車と比べて静粛性が増すため、車体内部に樹脂製部品が多くなると、こすれによるノイズが発生しやすい。日油では異音防止剤などの樹脂系添加剤の需要も増えるとみている。
機能性材料
高機能材料における新たな用途の一つが、3Dプリンターに使う素材だ。三菱ケミカルグループはスーパーエンジニアリングプラスチックなどをそろえる多様なラインアップに加え、設計力やコンピューター利用解析(CAE)に至るまでの優位性を訴求する。旭化成は3Dプリンター用樹脂材料の開発で伊アクアフィルと協業し、新たな需要開拓につなげる。
3Dプリンター用 新たな需要を開拓
3Dプリンターは複雑な形状などを効率的に生産できる特徴がある。優れたデザインの表現など、さまざまなモノづくり分野で活用が拡大する可能性があるとみている。
三菱ケミカルグループ傘下の三菱ケミカルは、高級感を表現する植物由来バイオマスエンプラなど多様な樹脂を持つのが強みだ。素材のしなやかさで動きを実現する「コンプライアントメカニズム」という設計概念に加え、適切な積層プロセス条件の検討が効率的にできるCAE技術も提案できる。まず建築物や家具などの需要の開拓を想定する。
一方、旭化成はアクアフィルと、環境負荷の低さなどが特徴の3Dプリンター向け樹脂材料の開発で協業する。アクアフィルのケミカルリサイクル(CR)したポリアミド(PA)6と、旭化成のコットンリッターを原料とするセルロースナノファイバー(CNF)を組み合わせる。
環境に配慮しつつ、優れた造形性や強度などを実現する素材として、自動車や航空宇宙分野などへの採用を目指す。
岩通ケミカルクロス(東京都杉並区)は、ヒーターやライトなど自動車部品に採用が期待される新技術「電気印刷」を提案し、電気印刷を活用できる分野を広げている。
同社は10月29日から千葉市美浜区の幕張メッセで開催される「高機能素材Week」に出展し、実機による電気印刷のデモンストレーションを行う。
また製品開発や生産で培った技術、防爆設備環境を生かした受託加工ビジネスが注目を集めている。多様化、少量生産化といった顧客の要望に向けて、テスト塗布や裁断加工、液体や固体の充填加工を行っている。