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化学産業
ライフサイエンス・農業/化学各社 成長分野へ技術力生かす
ライフサイエンス
化学各社はライフサイエンス分野を成長領域と捉え、技術力を生かした積極的な事業活動に取り組んでいる。旭化成は水処理などに使われる中空糸膜「マイクローザ」の技術を活用した、注射用水(WFI)装置の販売を開始した。東ソーは日立ハイテクや栄研化学と国内の臨床検査装置の販売で協業。3社による提案やフォロー体制を充実させ、医療の質と顧客満足度の向上に貢献する。
医療の質・顧客満足度向上
旭化成のWFI装置は、一般的なWFI装置である蒸留器から膜濾過装置への代替需要を狙い、二酸化炭素(CO2)の排出量削減や低コスト化などに寄与できる点を訴求する。蒸留法に比べてエネルギーコストが削減され、工程の簡略化や蒸留水よりもクリーン度の高い水質を実現できる。旭化成のマイクローザは医薬や食品、環境・水処理など幅広い分野での高い濾過性能が評価されている。
一方、東ソーなどは国内臨床検査市場において、生化学・免疫搬送システムの販売推進に向けて協業する。日立ハイテクと東ソーの検査装置などを搬送ラインでつなぎ、自動化する。加えて、栄研化学の検査用診断薬も一体のシステムとして提案していく。
臨床検査技師の働き方改革の一環として、検査業務の自動化・効率化のニーズは高いと見込む。3社の販売網を生かし、拡販につなげる。日立ハイテクの業務管理ツールで各装置のデータを取得し、管理業務などを効率化する。
農業
農薬は食料の安全と安定供給を支えている。世界人口は1960年に約30億人だったが、2023年に約2・7倍の80億人を突破した。この間、食料の生産量と消費量も増え続けたが、穀物の収穫面積はたったの約13%増えただけ。世界人口は今後も増加する見通しで、生産性向上には農業技術のさらなる発展が欠かせない。
世界人口増、安定供給へ
日本の農薬メーカーは海外で攻勢をかけている。中でも南米やアジアには熱い視線が集まっている。
住友化学はこのほどアルゼンチンで除草剤「ラピディシル」の農薬登録を取得した。ラピディシルの農薬登録取得は世界初。幅広い雑草に対して速効性があり、低薬量で効く。ラピディシルは作物の種まき前に土を耕さない「不耕起栽培」向けだが、環境負荷低減に寄与を図るとして、米州で拡大するという。同社は今後、この分野の除草剤で年間約1000億円の売り上げを目指す。
三井化学は23年にMeiji Seikaファルマの農薬事業を取得するなどし、海外展開の動きを加速している。品ぞろえを充実させ、世界各地での開発や農薬登録機能を強化する。新体制で国内の生産能力の増強も進める。
世界では持続可能な農業を目指す動きがある。少量で効くことから、環境負荷が少ない化学農薬にとっては好機となる。
日産化学の殺虫剤「グレーシア」は幅広い作物害虫に作用し、有用昆虫のミツバチへの影響が少ない。18年から韓国で発売して以降、日本やインドネシアなどアジアで使用されている。
殺虫剤に特化してきたクレハは競合農薬の減少を好機とみて事業拡大を目指す。農薬事業を「次の成長の芽」と位置づけ、新製品投入などで売上増を計画している。
JNCは樹脂のコーティングにより有効成分の溶出をコントロール可能な肥料を手がける。肥料を施す回数や使用量が削減でき、農業従事者の省力化にもつなげる。