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化学産業
化学系団体 TOPメッセージ
日本化学工業協会 会長 岩田 圭一 氏/官民一体でGXの取り組み加速
21世紀に入り、地球温暖化による環境問題が世界的に深刻化する中、日本でも官民一体となってグリーン・トランスフォーメーション(GX)の取り組みが加速している。
化学産業は社会に必要な製品を安定的に供給するエッセンシャル産業として、経済・社会の諸問題に対応していくことはもとより、カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)の実現を含むGXに貢献する。社会課題を解決するイノベーションの担い手として、社会からの期待に応えていく責務がある。
GXの推進にはエネルギーや原料の転換、設備投資などに相応のコストが伴う。そのため、環境に配慮した製品づくりを支える市場や社会的な制度設計が求められる。とりわけ、環境に配慮した製品は従来品と比べ、性能や機能は同じであっても、適正価格が高くなる可能性がある。「環境価値」すなわち、製品の環境面での付加価値を広く受容してもらえる社会環境を醸成していくことが必要不可欠である。
日本化学工業協会ではそうした環境価値に対する理解を得ていくための一助として、〝見える化〟すなわちGHG排出量や環境負荷への貢献を定量的に評価できるカーボンフットプリント(CFP)について、化学産業として算定ガイドラインを取りまとめた。今後はこれを活用した普及活動を行っていく。また、リサイクル品についての社会認知を向上させ、化学品の循環利⽤を早期に実現することを⽬的に、リサイクル率確認登録制度の試験運用にも取り組む。
化学産業はこれからも、社会に必要な製品を安定的に供給するとともに、サステナブル社会の実現に向けて貢献していく。
石油化学工業協会 会長 工藤 幸四郎 氏/脱炭素・循環型社会の構築に貢献
世界を取り巻く環境は、ウクライナ問題の長期化や中東地域での武力衝突など地政学的リスクの高まりに加え、米中関係の緊張の高まりなど不透明感が増している。わが国の石化産業は、世界的なインフレによる内外需の低迷、さらには中国企業の増産によるアジア全体での供給過多など厳しい事業環境にある。
一方で、石油産業が担う、人々の暮らしや他産業を支えるエッセンシャルインダストリーであるという社会的使命は変わらない。加えて、カーボンニュートラルの実現や循環型経済の構築への貢献を期待されるようになった。
こうした情勢の中で、当協会は産業に必要な基盤の維持強化をこれまで以上に後押ししていくこととし、三つの基本方針を掲げている。
まず一つ目に最重要課題として「保安・安全の確保、向上」が挙げられる。熟練の技術・運転者の減少で技術力・運転力の低下が懸念されるなか、喫緊の課題として安全・安定操業のための確実な技術伝承の必要がある。
二つ目は「事業環境の基盤整備」として「定修会議」を開催し、定期修理の効率的な調整を図る。また、競争力強化などのための税制改正要望を引き続き行うとともに、石化業界のニーズに沿った規制緩和要望も行っていく。
三つ目は「グローバル課題への対応の強化」として、循環型社会の構築やカーボンニュートラル実現に向けて活動する。
サステナブル(持続可能な)社会への対応として、わが国でも排出量取引制度が2026年度から本格運用のステージに移行する見通しである。化学産業の革新的技術によって、バイオ・CO2(二酸化炭素)原料化、リサイクル、新素材の開発といった多面的アプローチが期待されており、サステナブル社会実現をリードしていきたい。さらには、世界の持続的発展に貢献するために国境を越えた連携も必要だ。例えば、新興国に日本の技術を導入すれば環境負荷低減に貢献することができ、それが国際協力のモデルになる。わが国の化学産業が担う役割は大きい。
日本化学会 会長 丸岡 啓二 氏/次世代担う若手育成の場 提供
もう60年ぐらい前であろうか、工学部化学系の大学入試は医学部より難しい時があった。その頃に全国から集まった優秀な学生が工学部化学系から社会に巣立ち、日本の化学産業の興隆を支えたのであろう。しかし、時は流れ、産学共に化学分野の地盤沈下が進んでしまった。国土が狭く、天然資源や食料に恵まれない日本が世界で生き残るには、人的資源の活用が極めて重要である。日本化学会では、以前から「化学だいすきクラブ」や「化学グランプリ」「国際化学オリンピック」への支援を行い、才能ある小中高生の発掘に努めている。また、日本化学会の春季年会や秋のCSJ化学フェスタでは、化学系の大学生や大学院生に研究発表の場を与えている。
残念ながら、化学グランプリや国際化学オリンピックで発掘した才能ある若手を、研究主体の大学院でエリート育成する場がこれまで欠けていた。大学や企業など、イノベーティブなモノを生み出す研究開発において、基礎・応用研究における国際競争力を磨くため、産学界におけるイノベーションや産業変革を先導できる人材、特に次世代を担う若手人材の育成・輩出の場を提供する必要があろう。
その有効な対策として、2010年から有機化学の分野で取り組んでいる若手育成道場「大津会議」が挙げられる。全国の有機化学分野の学振特別研究員の中から毎年16名が選ばれている。既に第1-14期生の大津会議卒業生が約230名に達し、そのうちの70%近くが助教・講師や准教授として学界で活躍している。また、産業界においてもリーダー型研究者として活躍していると聞く。
今後は日本化学会を通して、このような活動を他の化学分野にも広げることにより、日本の化学産業界を再興したいものである。