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化学産業
カーボンニュートラル/カーボンニュートラル実現へ 化学業界の取り組み
化学業界がカーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)への貢献など、持続可能性に関わる取り組みを加速している。事業環境が大きく変わる中、化学大手ではグリーン化や生産体制の適正化などを見据え、石油化学事業の再編への検討が相次ぐ。今後の業界のあり方を模索し、次世代の化学産業の成長に向けた基盤づくりを推進する考えだ。
事業再編に向け動き活発
石油化学業界は中国を中心とした大型プラントの新増設による需給バランスの悪化や、カーボンニュートラル対応などで事業環境が大きく変わってきている。化学大手でこうした変化に対し、事業再編に向けた取り組みが活発化してきた。
瀬戸内海の石化コンビナートにエチレンプラントを持つ旭化成と三菱ケミカルグループ、三井化学。いわば〝瀬戸内連合〟となる3社は、エチレンプラントのカーボンニュートラル実現に向けた連携の検討を始めた。
原燃料の転換などグリーン化の実現に向けて各社の技術を持ち寄る。石油資源に代わるバイオマスの原料化や低炭素燃料への転換に加え、グリーン化に資する具体的な方策、将来の最適生産体制の検討などに取り組む。2024年度内に取り組みの方向性を示したい考えだ。
化学製品の基礎原料のエチレンは製造過程で多くの化石資源を消費するため、GHGの排出削減が大きな課題となっている。
またエチレンプラントの再編に先んじて踏み出したのが、三井化学と出光興産。千葉県で両社が持つエチレンプラントの統合に向けた検討を開始。27年度をめどに出光のプラントを停止し、三井化学のプラントに集約する考え。統合したプラントは有限責任事業組合(LLP)で共同運営する想定だ。事業化調査から基本設計に検討のフェーズを移行し、25年度下期の意志決定を予定する。エチレンプラントの集約を通じ連携を一段と強化することで、事業環境の変化に対応した生産体制の適正化を図りつつ、競争力の向上などにつなげる。
一方、レゾナック・ホールディングス(HD)は石化事業を分離・上場させる施策を打ち出した。レゾナックHDが株式の一部(20%未満)を保有しつつ石化事業の新会社を26-27年を念頭に上場させる「パーシャル・スピンオフ」の実施を目指す。
まず8月に分割準備会社「クラサスケミカル」を設立し、25年1月1日付で石化事業の分社化を計画。レゾナックは成長領域の半導体・電子材料部門への経営資源をより集中させるとともに、クラサスケミカルとはカーボンニュートラルに関わる研究開発で連携できるとみている。
すでに住友化学と三井化学、丸善石油化学は千葉県の京葉臨海コンビナートのカーボンニュートラル実現に向けた連携を検討している。出光や東ソー、トクヤマなどは山口県の周南コンビナートでのカーボンフリーアンモニア供給網の構築などについて、公正取引委員会から「独占禁止法上問題がない」との回答を受け、取り組みを加速させる構えだ。
炭素循環型社会へ挑戦
カーボンニュートラル実現に向けて具体的な製品や燃料に関わる動きも目立つ。カネカと、そごう・西武(東京都豊島区)、広島県廿日市市、ロック・フィールド(神戸市東灘区)は、バイオマス由来の生分解性バイオポリマーを使用した資源循環モデルの実証事業を開始。カネカの同ポリマーは原料の多様化を検討し、廃食用油を原料に生産する技術を確立している。
エア・ウォーターは液化天然ガス(LNG)の代替燃料となる家畜ふん尿由来の「バイオメタン」に関わるサプライチェーン(供給網)を構築。ボイラの燃料などとして利用する、よつ葉乳業十勝主管工場(北海道音更町)への納入を開始した。新エネルギーの創出を通じ、家畜ふん尿に起因する臭気や水質汚染などの社会課題の解決にも貢献する。
三洋化成はバイオマス複合樹脂やリサイクル樹脂などの環境配慮型樹脂向け消臭剤「ケシュナール」を開発した。少量で消臭効果を付与できるため、成形品の機械的物性への影響はほとんどない。また、食品容器や包装への使用も可能だ。環境配慮型樹脂に特有の臭気を低減することで、持続可能社会の実現に貢献する。