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化学産業
リチウム電池・ペロブスカイト/リチウム電池、大型投資国内外で相次ぐ
リチウム電池
リチウムイオン電池(LiB)材料事業への大型投資が国内外で相次いでいる。背景には自動車の電動化と国際競争の激化がある。一方、その輸出入を巡って米中対立が強まるとの見方があり、最適なサプライチェーン(供給網)構築の重要さが増している。研究開発の面では事業化加速のための取り組みも進む。
生産増強、北米で活発化
生産増強は北米で活発だ。ホンダと旭化成は2024年内に共同出資会社を設立し、LiB用湿式セパレーターを製造する。カナダ・オンタリオ州に建設する新工場は27年に稼働予定。生産能力は年間約7億平方メートル(塗工膜換算)で、概算投資額は1800億円を見込む。カナダやオンタリオ州の補助金などを受けるという。
UBEも約750億円を投じ、米国にLiB電解液などの原料となるジメチルカーボネート(DMC)の新工場を建設する。DMCで年産能力10万トン、誘導品のエチルメチルカーボネート(EMC)で同4万トンの生産プラントをルイジアナ州に建設し、26年に稼働予定。ルイジアナ州政府は新工場の運転開始後10年間の税額控除を承認したという。
同様の動きは国内でも盛んだ。UBEはマクセルと組み、LiB用塗布型セパレーター(絶縁材)を増産する。宇部マクセル京都(京都府大山崎町)の京都事業所(同)に生産ラインを新設し、26年6月に供給を始める。投資額は約27億円。
日本ゼオンはLiB材料などを生産する川崎工場(川崎市川崎区)と、隣接する総合開発センター(同)の間に「共創イノベーション施設」を建設する。26年度までに完成予定。羽田空港から自動車で約15分の距離にあり、東京都心とも往来しやすい。好立地を生かし、国内外の顧客の技術者などを招く。同工場では生産プラントの要所をセンサーでつなぐなどし、デジタル変革(DX)により生産性を高めてきた。今後は〝研究開発型工場〟として機能を強化。共同研究における成果の事業化を加速する。
ペロブスカイト
次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を手がける企業の動きが活発だ。同電池は原料の溶液をフィルムやガラスなどの基板に塗膜した層で発電する。フィルムに挟み込めば〝薄くて曲がる〟という強みが出せる。日本勢は2030年頃の事業化に向けて準備を進めている。
早期の社会実現目指す
ペロブスカイト太陽電池の技術は、富士写真フイルム(現富士フイルムHD)に入社し、後に桐蔭横浜大学へ移った宮坂力氏の研究室で06年に誕生した。従来主力のシリコン太陽電池と同等の発電能力がありながら、10分の1の軽さを誇る。従来は難しかった高層ビルの壁や柱などでの設置に活路が開ける。
主原料のヨウ素は国内で年間約1トン生産しており、量の世界シェアではチリに次ぐ2位の規模。調達のしやすさや、経済安全保障の観点からも注目度が高い。政府は30年を待たずに早期の社会実装を目指している。
国内の完成品メーカー各社も勢いを増している。フィルム型で先行する積水化学工業は、25年の事業化を目指す。エネルギー変換効率は30センチ角の面積で15・0%。耐久性は10年相当だが、20年相当まで引き延ばそうとしている。幅30センチメートルのフィルムを巻きながら生産する設備を使うため、安価かつ高速で供給が可能。幅1メートルでの生産手法の確立も進めている。
シリコンとペロブスカイトを積層したタンデム型もあり、カネカが早期の事業化を目指す。1平方センチメートルでの変換効率は30%に迫る世界最高水準という。同社は大成建設と組み、建物の外壁や窓と一体化させた太陽電池モジュールで発電する、外装システムを開発。フィルムと比べて耐久性の高いガラスを基板とし、電極線が見えない意匠性の高いソリッドタイプと、可視光が透過するシースルータイプの2種類を形にした。
一方で、課題もある。ペロブスカイト太陽電池は水分や酸素に弱く、劣化しやすい。また広く均一に塗膜するのも難しい。品質向上とともに設置後を見据えた戦略も必要になる。