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化学産業
化学系商社・物流企業/世界市場を視野
【執筆】化学産業企画 代表取締役 高橋 英晴
化学品の流通を支える化学品商社と物流企業の活動が活発化している。化学産業の多様化に合わせて幅広い領域で多品目を取り扱う物流企業のほか、販売事業に加えて製品開発にも乗り出す商社の動きに注目が集まっている。世界市場を視野に取り組む事業展開に拍車がかかる。
20周年 売上1500億円目標
新ケミカル商事は化学品・製鉄関連・樹脂・建材・アグリ(農業)の五つの事業を展開している。今年8月に設立20周年を迎え、売上高は設立時の約250億円から24年度の見通しは約1000億円へと拡大した。
今年4月から中長期計画「NCT/ムーンショット計画」を始動し、グループ内の再編により5事業セグメント体制を確立した。30年度には売上高1500億円を目標に掲げている。国連の持続可能な開発目標(SDGs)への積極的な取り組みも行っており、各事業分野で環境問題などの社会的課題の解決と、事業推進の同時達成を目指している。
その取り組みの一つとして、日鉄ケミカル&マテリアルのフェノキシ樹脂をベースに、独自のポリマーアロイ化技術(異なるポリマーを組み合わせて新たな材料特性を生み出す技術)を駆使した新規樹脂で、顧客のニーズに合わせた開発を行っている。これらの樹脂を複合材料の製造に適用させ製品の軽量化を図るため、専門企業と連携してパウダー、フィルム、繊維などの形に加工、提供していく。
今後は、商社機能だけでなく新規事業にも挑戦し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に貢献していく。
販・研一体でニーズ対応
パーソナルケア・医薬品・化成品の3事業を展開する日光ケミカルズは、化成品事業の更なる拡大を目指す。
同社の化成品事業は、塗料・インク、繊維、食品、電子材料など幅広い産業分野に界面活性剤やエステル油、ポリマー、配合製品などを販売しており、顧客の課題解決に向けたきめ細かな対応やニーズに適合した提案力を強みとしている。
事業ポートフォリオの強化を目的として22年4月に所属するグループ企業を再編し、化成品事業部を立ち上げた。販売と研究開発を一体運営する体制へと移行し、顧客との共同研究や顧客ニーズに沿った製品の開発に取り組んでいる。
また同年、事業拡大に向けた投資にも踏み切り、中央研究所に小角X線散乱装置をはじめ、最新の分析機器を複数導入。溶液中の分子構造などの挙動を多角的に解析する体制を整えた。
また、幅広い産業分野のうち、電子材料や半導体分野での提案を加速させている。高速・大容量通信向けモバイル機器や生成人工知能(AI)の普及に伴い、電子材料向けの引き合いは5年前と比較して3-4倍に拡大した。今後も得意とする乳化・可溶化技術を基盤に顧客の基礎研究段階から支援を行い、課題解決に貢献していく。
米アリゾナに総合物流拠点
NRS(旧・日陸)はグループ全体でブランドの統一を推進し、成長市場に焦点を合わせた化学品物流事業を拡大する。
同社は各種温度管理倉庫、国内・国際輸送、タンクヤード、国際標準化機構(ISO)規格準拠の容器リース・販売・運用・管理・危険物実入り保管のほか、フォワーディング(利用運送)事業では海上・航空・鉄道輸送を手がける化学品物流の総合企業だ。
石油化学から精密化学品、医薬品、半導体材料、ガス、電池まで幅広い領域を扱っており、デジタル変革(DX)を推進して国内外の顧客に一段と高品質な物流サービスを提供していく。
23年8月には九州地区における新たな総合物流拠点として熊本支店を開設した。また、25年1月をめどとして米アリゾナに総合物流拠点の開設を予定している。
半導体材料にかかわる温度管理の必要な化学品や高圧ガスを中心に、同社が誇る総合物流サービスを提供し、顧客のサプライチェーン(供給網)を最適化へと導いていく。