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埼玉県特集
産学連携・研究・教育で社会貢献/期待・注目集める大学
大学には高等教育機関として教育や研究の役割だけでなく、産学連携や社会貢献活動についても地域から期待と注目が集まっている。埼玉産業人クラブとの間で「NITEC埼玉産学交流会」を組織して産学連携に取り組む日本工業大学の竹内貞雄学長と、同じく「TDU産学交流会」を組織する東京電機大学の射場本忠彦学長に、少子化の荒波が押し寄せる中での大学運営の特色と取り組み、今後の活動や将来展望などについて聞いた。
日本工業大学 学長 竹内 貞雄 氏/教育・授業の形態 全面見直し
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日本工業大学 学長 竹内 貞雄 氏
—就職力ランキングで、採用を増やしたい大学では全国の私大で2位、大学の人材育成力ランキングでは全国の私大で3位と評価が高まっています。
「この調査は卒業生の会社での評価に重点を置いた大学ランキングで、以前から本学は高い評価だったが、今回は突出して良い評価が得られた」
—要因は。
「アンケートの対象は入社2—3年目の若手。本学は技術的なスキルだけでなく、エンジニアとして欠かせないマインドや態度など、社会人としてベースになる資質も養成している点が評価された」
—どんなところが評価につながっていると考えていますか。
「本学の教育システムが大きい。中でも卒業研究。広大な敷地は学生に還元している。各教員に割り当てられる研究室の専有面積は圧倒的な広さがある。学生一人ひとりに専用のスペースが設けられ、実験室も十分なゆとりがある。工学系の卒業研究は長期に及ぶため、学生が専有スペースを持つメリットは大きい。学生同士でワイワイガヤガヤと共同作業しながら研究を進めることも、コミュニケーション力の向上や人格形成につながる」
新指針で「大学リノベーション」推進
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埼玉県宮代町にある日本工業大学のキャンパス
—後期からの大学の新たな取り組みは。
「卒業所要単位数に60単位までは遠隔やオンデマンド授業も算入が可能だが、さらにその方向性は強まりつつある。従来の教室は対面授業を前提にレイアウトされているが、教室の形態もドラスチックに変えていく必要がある。オンラインで授業を受ける機会が増えてくると、学内の通信環境も拡充する必要がある。今秋から3カ年をかけて教室や授業の形態を全面的に見直し、新しい指針に沿った『大学リノベーション』を進める。本学は2027年に創立60周年を迎えるが、周年事業として取り組んでいく」
—24年度に設立したスマート農業センターについては。
「ハウス栽培用の実験施設の工事を現在進めている。高さ20メートルある既存の研究施設を利活用して、栽培の自動化と育成状態をモニタリングできる施設に整備する。埼玉県や県内企業などと連携し、工学と融合した新しい農業の普及に向けた研究開発に取り組む」
—日本工業大学と産業界との交流の場である「NITEC埼玉産学交流会」が創立40周年を迎えました。
「工学系の教員が企業の経営者や技術開発者の本音を聞ける機会は少ない。他の研究会などでは得難い情報や業界最新トレンドに触れられることが多い。会員企業を見学することで普段は聞けない経験も肌感覚で実感できる」
東京電機大学 学長 射場本 忠彦 氏/深い学びへ本物を見る・触れる教育
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東京電機大学 学長 射場本 忠彦 氏
—中・高・大との連携を強めていますが成果は。
「連携を通じ本学に興味を持ってファンになってくれたら良いと思う。連携が大学入試受験者数に直ぐにつながることは難しいと思うが、受験とは別物として、工学系の事柄に関心を持ってもらい将来的にエンジニアが沢山生まれたらうれしい。そのためにも機械や装置の実物やカットモデルなどを展示している博物館施設があれば、工学に対する本物教育としてより魅力を感じられるのではないか。エンジニアを育てるためには、とにかく興味を湧かせ基礎をしっかり固めてもらいたいが、教育する側のさまざまな工夫も必要だと思う」
—AI(人工知能)の使い方には、どう向き合っていますか。
「基本的に本学の定めた使い方をホームページ(HP)に掲載し、学生もそれに準じて利用しているが、新しいことへのチャレンジは大いにやって欲しいと考えている。開校時から重んじている『実学主義』のもと多くの技術者を育てているが、AIは、技術者また人間としての立ち位置をしっかり自覚した上で利用するべきものであると考える。悪用に対しては学校側でも適切に処置をしている。AIの活用は今後も増えていく一方だと思うが、学生にはぜひ思い込みや決まりきったことだけをやるという思考から脱却し,考え判断するクセをつけて上手に付き合っていってもらいたい」
学生のチャレンジ精神 後押し
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実学重視の教育で優秀なエンジニアなどを多く輩出してきた
—大学院への進学率が飛躍的に伸びています。
「より専門的な学びを深めるには、やはり大学院への進学が有効で、自分の価値(人間力)をより高められる道だと考えている。学部では一般教養を含んだ学習となるため、深い学びには時間が足りないという側面もある。大学院へ進学し研究室に入り、研究をする中でさまざま雑談から出る知恵を吸収し生かして貰いたい。研究室というチームでのコミュニケーションそして人との付き合いを大事にしてほしい。そして我々、教育者側は『教科書だけでない本物を見せ体得できる機会』を充分に用意することが改めて必要だ」
—今後の展望は。
「本学の学生は真面目なことが大きな特徴かつ強みで、それは高い就職率や就職先での評価にもつながっていると思う。それを踏まえた上で、より元気で大いにチャレンジ精神を持つ学生を育てていきたい。学生がさまざまなことに挑戦しやすい環境を整え、後押しをするのが我々の大きな役目でもある」
