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埼玉県特集
第47回埼玉県産業振興懇談会/未来の人材を育む魅力ある会社づくり①
埼玉産業人クラブは10月9日、ロイヤルパインズホテル浦和(さいたま市浦和区)で第47回埼玉県産業振興懇談会を開いた。プレゼンテーションでは「魅力ある会社づくり」をテーマに、埼玉県内企業の経営者など4人が登壇。社員がやりがいを持って働ける会社に向けた取り組みや、今後の成長戦略などを発表。さらに、多様なバックグラウンドを持つ人材を生かす取り組みを語り、参加者は熱心に聞き入った。
日さく 総務部 人事課長 杉山 りえか 氏/「ヒト・ヒト・ヒト」の経営哲学
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日さく 総務部 人事課長 杉山 りえか 氏
当社はさく井工事や井戸メンテナンス、地下水関連設備の工事などを手がけています。創業114年で社員数は約300名、事業所は仙台から沖縄まで全国各地に展開し、海外にはネパール現地法人も設立しています。当社の究極の目的は「社員とその家族の幸福」です。「ヒト・モノ・カネ」ではなく「ヒト・ヒト・ヒト」という考え方を経営の根幹に据えています。人を思いやり、人に寄り添い、人に優しく、人を敬い、人を大切にする会社を目指し、「誰一人取り残さない」を実践しています。
建設業界は技能者不足が課題です。埼玉県でも技術者は増加傾向ですが技能者は今後減少すると予測されています。当社も10年後の現場人員確保に不安の声があり、建設業の枠を超えて「人の確保」以上に「人を大切にする」ことに注力しています。この背景には、過去の厳しい経営経験があります。
約30年前、当社は売上高239億円、社員535名でしたが、公共事業への依存体質から業績が悪化し、2016年には「底」を経験しました。人員削減や事業所閉鎖を余儀なくされ、退職者が相次ぎました。その反省から「人を大切にする会社」へ転換しました。「ヒト・ヒト・ヒト」という理念のもと、ヒトこそがモノやカネを生み価値を創造する存在であるという考え方を貫いています。
長い歴史で培った「決してあきらめない」DNAは当社の強みですが、過去にはトップダウンが行き過ぎ中堅や若手が主体的に動けない課題がありました。現在は社員の心理的安全性を守る環境づくりに努め自由に意見を言える風土へ改善しました。
人財育成で未来を拓く
採用活動では新卒採用において厳しい状態が続いていますが、毎年約10人の新入社員が入社しています。ミスマッチ防止のため、インターンシップ(就業体験)や内定者研修で必ず現場を体験させ、リアルな職場理解を重視しています。若年層が求める「成長できる環境」や「職場の雰囲気」を大切にし、年収面も含めた待遇改善にも取り組んでいます。
シルバー人財の活躍にも力を入れ、65歳以上の社員が25人在籍しています。定年は70歳に延長しており、人生100年時代に対応しています。高齢社員の健康管理のため「高齢者体力測定マニュアル」を策定し、安全に働ける環境づくりを進めています。
女性社員は92人、うち女性技術者は18人在籍しています。特に大宮事務所の地質調査部では29人中14人が女性で、うち12人が技術者です。女性技術者や事務職の意見交換会を定期開催し、女性が活躍できる会社づくりを推進しています。外国人社員も増加しており、現在は技人国枠の社員10人、技能実習生9人が在籍しています。インドネシア人技術者がベトナムの国際大会で最優秀口頭発表賞を受賞するなど、国際的な成果も生まれています。
毎年実施している社内満足度アンケートでは、「当社で働いていてやりがいを感じる」と回答した社員が79・5%にのぼりました。顧客からも「長年の信頼」や「真面目で誠実な社員」が高く評価されており、「お客さまの困り事は自分たちの困り事」と捉える企業文化が根付いています。
最後に、当社が何よりも大切にしているのは社員とその家族の幸福です。社員が幸福でなければ、お客さまに安心や満足を提供することはできません。社員が幸福であることは、会社にとって大きな喜びであり、社会に貢献する力の源です。社員をお客さま扱いして甘やかすのではなく、働くことで幸福を実感し、地域や社会へ貢献できる人財へと育っていくことが理想です。私たちはこの理念を胸に、創業120年、150年、そして200年へと歩み続けてまいります。
【企業データ】
○設立年=1938年
○資本金:1億円
○職種・事業内容:さく井工事・特殊土木工事・地質調査など
○本社所在地:さいたま市大宮区桜木町4の199の3
○電話:048・644・3911
日本シーム 社長 木口 達也 氏/SDGs事業で企業ブランド向上
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日本シーム 社長 木口 達也 氏
当社は家電や自動車製品、ペットボトルなどの廃プラスチックを再生材にする工程のうち、粉砕、洗浄、脱水、乾燥などの中間工程を担う機械の開発、設計、製造、販売を行っています。メーカー機能として粉砕機を中心とした装置を単体で販売するとともに、機械を複合的に並べて一つのリサイクルプラントとしてパッケージ化してお客さまにご提供しています。今は売り上げの7割近くがこのプラント機能になっています。
企業ブランド向上策として昨年、SDGs事業部を立ち上げました。当社の存在理念は「マシンテクノロジーで地球を豊かにする」で、啓蒙活動により人の意識を高めようと立ち上げ、主に五つの施策を進めています。
一つはオープンファクトリーです。一般の方を工場に招いてプラスチックのキャップを目の前で粉砕して射出成形機でコマやカラビナ、ブレスレットにアップサイクルする取り組みを行っています。
二つ目の教育機関との連携では、保育園や小学校、大学とペットボトルのキャップの回収ボックスを寄贈し、回収から再生までの過程を学ぶ体験型プログラムを通じて若い世代の環境意識向上に貢献しています。
三つ目は国際フォーラムの企画です。浜松市でリサイクルフォーラムを開きます。環境先進国である欧州からスピーカーを招いて、日本の有識者とともに今後の日本のサーキュラーエコノミーをどう広げていくかを話し合います。
四つ目はコラム・メールマガジンの発行です。文章を書くのが得意な社員が月に1回、今の環境の最前線の情報を伝えています。約1万件を送り高い開封率を誇っています。
五つ目はYouTubeチャンネルで15年ほど前からやっています。社員が分かりやすく楽しく盛り上げて再生回数を伸ばしています。
成長へ目標高く「100億宣言」
「100億宣言」によるブランド向上では、2月に経済産業省中小企業庁が募集するプロジェクトに参加し、中小企業成長加速化補助金も採択されました。宣言により目標を高くして、成長を遂げるために緊張感を持って取り組んでいます。
売り上げを伸ばすにはインフラ投資も欠かせません。廃プラスチックの大規模なテストセンターの建設を計画しています。自社製品のテストのほか、欧州など質の高い企業から機械設備を買い入れて、大きなマテリアルリサイクル・テストセンターを作る予定です。大手企業との連携では、豊田通商と三重県東員町に「PLASTIC Lab.(プラスチック・ラボ)」を構えました。
関係の質の向上として週1回、月曜日に全体朝礼を行っています。席はくじ引きで各テーブルに座ります。まず先週起こった楽しかったことを4人の席で1人1分計4分話し合う「ハッピーシェア」を行います。70人弱の会社ですが、部門間のセクショナリズムが芽生える恐れがあるので、さまざまな部署が不確定要素で集まって、良い状態になってから朝礼を始めています。
毎年、経営方針発表会でロゴマークを作って社員に伝わるような形にしています。今年度の48期テーマは「ポテンシャル」。中心が地球でチームメンバーが手を広げ、一体感の中で一人ひとりが自由にのびのびと才能を発揮するイメージです。
会社のロゴマークも47年ぶりに変えました。サーキュラーエコノミーを象徴する循環を表現し、我々が作る機械を通れば循環型社会になるという力強さを表しています。質の高いリサイクルの機械を作ってサーキュラーエコノミー実現の一翼を担う志をロゴマークにして表現しています。
常に変化し、進化する—。このことを大切にして魅力ある企業づくりと企業ブランドの向上を目指します。
【企業データ】
○設立年:1979年
○資本金:8304万円
○職種・事業内容:プラスチックリサイクル機械の開発設計、製造、販売
○本社所在地:埼玉県川口市安行北谷665
○電話:048・298・7700
