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埼玉県特集
企業価値向上への挑戦/第47回埼玉県産業振興懇談会②
サーキュラーエコノミーの推進
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日本シーム 社長 木口 達也 氏 -
産業創造課長 村井 秀成 氏 -
産業振興公社 理事長 秋友 一広 氏 -
産業技術総合センター長 新里 英男 氏
日本シーム 木口達也社長 サーキュラーエコノミーの推進に向けて、県ではどのような取り組みを行っていますか。
産業創造課 村井秀成課長 産業労働部はモノを製造し販売するいわゆる動脈産業を担当し、県の体制としては廃棄物を回収し再資源化するいわゆる静脈産業を担当している環境部と連携して取り組むこととしており、この部分で他県に比べ先駆けていると言えます。また、産業振興公社にサーキュラーエコノミー推進センターを設置しています。県の取り組みは大きく三つあります。一つ目は「情報発信・普及啓発」で、県民の方向けに浦和レッズと連携したペットボトル分別回収などを行っています。二つ目は「マッチング支援」で、御社(日本シーム)にも入会をいただいているサーキュラーエコノミー推進分科会で会員の交流機会の提供や事業連携支援を行っています。三つ目は「リーディングモデルの構築・支援」で、全国のスタートアップ企業等を対象に、サーキュラーエコノミーに特化したビジネスプランコンテストの開催や、サーキュラーエコノミーに取り組む県内企業などに対する補助金による支援を行っています。参考として県環境部ではプラスチック資源の循環利用の推進に向け、再資源化技術の高度化などの経費を助成する補助事業を実施し、リーディングモデルの横展開を図っています。
木口氏 研究会などから具体的に事業化している事例は。
産業振興公社 秋友一広理事長 総菜の製造工場で廃棄されていた大根の皮を、別の食品メーカーが有効活用し、ふりかけを製造・販売している事例があります。これまでに15件の事業化が進んでおり、今後も企業の新たなビジネス創出につながるよう継続的に支援していきたいと考えています。
木口氏 プラスチックゴミはマイクロプラスチックの問題を抱えていますが、プラスチックの排出削減に向けた取り組みは。
産業技術総合センター 新里英男センター長 センターではバイオプラスチックの活用支援を実施しています。バイオプラスチックのうち生分解性プラスチックの一種であるPHAは、微生物によって自然環境下で分解され二酸化炭素と水になります。現在、このバイオプラスチック(PHA)の特性を生かした用途として、農業用資材に活用する実用化研究を農林部・環境部と連携して実施しています。
正社員の人材確保支援策
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日東精密工業 社長 近藤 敬太 氏 -
産業支援課長 島田 徹 氏 -
産業労働政策課長 内田 貴之 氏
日東精密工業 近藤敬太社長 県内の中小企業では人手不足が深刻化しており、特に正社員の不足が顕著です。県として、中小企業の人材確保に向けどのような支援策がありますか。
雇用・人材戦略課 関根昌浩課長 県では、さいたま市・川越市・熊谷市の県内3か所に「企業人材サポートデスク」を設置し、人手不足や採用課題を抱える中小企業を支援しております。求人票作成の助言、労働条件の見直し、女性・シニア人材の活用促進などを行うほか、企業と求職者が個別相談など直接交流できるマッチングイベントを定期的に開催しています。求職者の方に直接、企業の働きやすさや魅力を訴求して頂く機会になればと思っております。
近藤氏 即戦力人材や専門人材の確保に対しては、どのような採用支援がありますか。
産業振興公社 秋友一広理事長 産業振興公社が運営する「埼玉県プロフェッショナル人材戦略拠点」において、コーディネーターが企業を訪問し、経営課題などをお聞きした上で人材ニーズを整理しています。それを踏まえ、あらかじめ登録をして頂いている人材紹介事業者や大企業、経済団体、金融機関と連携し、即戦力人材や副業・兼業人材とのマッチングなど幅広いメニューを提供しております。
近藤氏 中小企業人手不足対応補助金の活用事例について具体的にお伺いできますか。
産業支援課 島田徹課長 「中小企業人手不足対応支援事業補助金」により、AI・DX技術や自動化設備の導入を支援しています。建設業では3Dスキャナ導入、製造業ではCAD連携システム、専門サービス業ではAI会計ソフト導入など、省力化や生産性向上を実現した事例が多数あります。
近藤氏 令和7年度の県の新たな取り組みや、シニア人材・理系人材などの確保に向けた動きはありますか。
産業労働政策課 内田貴之課長 「強い経済の構築に向けた埼玉県戦略会議」のもと、「人手不足対策分科会」を設置し、物流・建設業を中心に対策を推進しています。物流分野では「宅配を1回で受け取ろうキャンペーン」やモーダルシフト推進のための鉄道貨物ターミナル見学会を実施しています。建設分野では若年層への魅力発信サイトを運営し入職を推進するとともに、ICT活用工事を進めています。 また、「埼玉県シニア人材バンク」を開設し、経験豊富な人材と企業のマッチングを支援しています。
就業支援課 伊藤佳子課長 大学・高校と企業の交流会を開催し、企業情報の発信や就職支援体制の強化を経て、理系人材の確保や地元就職促進を図っています。
若手社員の職場定着支援
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金杉建設 社長 吉川 祐介 氏
金杉建設 吉川祐介社長 若手社員の職場定着を支援するため、県はどのような取り組みをしていますか。
雇用・人材戦略課 関根昌浩課長 県内中小企業の若手社員などを対象に合同研修会を実施しています。今年度は新入社員、若手社員、そして当該社員を指導する立場にある指導者を対象とした3種類の研修を集合形式で各4回実施し、多くの方にご参加いただきました。
吉川氏 ブランクのある女性やキャリアアップを目指す女性に対し、県の人材育成支援策はありますか。
就業支援課 伊藤佳子課長 埼玉県女性キャリアセンターでは働く女性向けに「働く女性応援講座」や「女性管理職向け研修」などをオンラインで実施するなど、役割に応じたスキルの向上を目指せる講座を提供しています。特に「働く女性応援講座」では、講座終了後に交流会を開催し、「埼玉県働く女性応援メンター」をファシリテーターとして参加者同士の意見交換の場を設けています。企業研修としてもご活用いただけるよう、今年度からオンラインに加え、勤務時間に関わらず受講できるアーカイブ配信を行うことになりました。また、働く上で必要不可欠なデジタルスキル向上のため「女性のデジタル人材育成講座」も開講しています。
吉川氏 県内中小企業が実施するインターンシップ制度に多くの生徒が参加できるような県の施策は。
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産業人材育成課 下村 修 氏
伊藤課長 大学生にはバスで1日当たり3社程度の企業を訪問するオープンカンパニー体験会を年5回、県内企業の担当者と気軽に交流できるメタバース上のイベント「企業発見&就活相談会@バーチャル埼玉」を年4回行う予定です。高校生には県教育局や国と連携し、合同企業説明会の開催を年2回、オンラインでの企業説明会を11月以降に4回開催する予定です。2026年1月にはAIを活用して最適な業種や県内企業を提案するシステム「AIたまキャリア」を公開する予定です。
産業人材育成課 下村修課長 県立高等技術専門では建築、空調、電気分野などの職業訓練により、建設関連の人材を育成しています。2年課程である建築科および空調システム科の訓練生は、県内の事業所でインターンシップに参加しています。インターンシップ先企業は高等技術専門校のホームページや企業人材リスキリング・求人支援ポータルサイトで公募し、訓練生の居住地や意向などを勘案して決定しています。
