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埼玉県特集
需要に応える産業団地 新時代へ歩む
埼玉県は県内各地域の力を高め、バランスの取れた発展につなげるため、産業団地の造成を推し進めている。企業活動の拠点となる環境を整えることが、雇用の広がりや地位経済の活力向上につながり、県経済の持続的な成長に大きく寄与する。埼玉県企業局公営企業管理者の板東博之氏と、大栄不動産社長の小林義信氏に県内産業団地の分譲状況・ニーズを中心に、オフィスビルや住宅について現状や将来像を聞いた。
埼玉県企業局 公営企業管理者 板東 博之 氏/企業活動支える道路網が充実
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埼玉県企業局 公営企業管理者 板東 博之 氏 -
—企業立地に関し、埼玉県の優位性は。
「まず、自然災害が少ない内陸県であることだ。さらに人口規模が大きく、労働力を確保しやすい。加えて東京圏の大消費地に近いことが強み。製品の出荷や物流の面で大きな利点がある。これを支えているのが整備された交通インフラで、関越、東北、常磐の各自動車道が東京から放射状に延び、圏央道や外環道が横の連絡を担っている。県道や国道も補完しており、企業活動を支える道路網が充実している。このほか東京都や神奈川県に比べ地価が低いこともあり、こうした条件の積み重ねが企業立地の引き合いを強めている」
—産業団地の分譲状況は。
「金利上昇や物価高により、労務費や建設単価が上がっている。工業団地への進出は大きな投資となるため、企業からは『工事開始を延期できないか』といった相談もある。経済状況の変化が事業にも影響しているのは確かだ。一方で需要そのものは堅調で、内定企業が撤退する事態があったが再募集をかけるとすぐに新たな企業が内定した」
採算面でビジネスモデル見直し
—物価高が続く中、企業局として持続可能なビジネスモデルが必要です。
「農地を不動産評価額で購入し、造成後に再評価して販売、その差額を造成経費に充てる方式を採っている。埼玉県南部は地価が高く、造成前後の差額が大きいため採算が取りやすい。一方、県北部や高速道路インターチェンジ(IC)から離れた地域では差額が小さく、採算が取りにくい。造成経費は地域で大きく変わらないためだ。それでも県全体の均衡ある発展のためには、採算が厳しい地域でも事業を進める必要がある。今後はビジネスモデルの見直しが求められるだろう」
—具体的には。
「基本的に売却額は地元と協議して決めるが、企業側の意向で高値で売れる場合は、評価額以上で売却して収支を改善する方法もあるだろう。また、これまで県が一括で整備してきた団地内の道路や公園などについて、地元に一部負担をお願いするなど、不採算部分の補完策を検討している」
—募集予定の産業団地は。
「久喜高柳(久喜市)、吉見大和田(吉見町)、美里甘粕(美里町)の3カ所を予定している。分譲面積は久喜高柳が約15・8ヘクタール、、吉見大和田が約13・6ヘクタール、美里甘粕が約6ヘクタール。分譲申し込みの受付期間や引き渡し時期は未定だが、いずれも高速道路ICに近く、企業からのニーズは高いと見ている」
大栄不動産 社長 小林 義信 氏/産業用地創出へ新たな方策必要
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大栄不動産 社長 小林 義信 氏
—世界経済の現状をどう見ますか。
「トランプ米大統領が再び政権に就いて、当初は混乱もあったが、懸念していたほどの悪影響は出ておらず、思いのほか堅調に来ている印象だ。欧州も国によってまちまちだが全体では成長が続いている。中国も不動産関連の課題は依然抱えているものの、政府の経済対策や米国との交渉継続により、想定以上の減速傾向にはなっていないと感じている」
—日本の景気については。
「女性初の首相となった高市早苗内閣が誕生して、株価は大幅に上昇し、景気も持ち直しの動きが続いている。日銀は10月の金融政策決定会合で利上げを見送ったが、いずれは金融正常化をさらに進めることになるだろう。足元では大きな悪化要因もなく経済は落ち着いている。ただ2026年に向けて、大きな調整があるのかを常に注意する必要がある。金利が上がれば当然、経済に影響が出る。住宅ローンの金利が上昇すれば住宅市場にも影響を与える」
—埼玉県内の産業団地の状況と今後の見通しについては。
「全体的に需要に対して供給が足りていない構図は変わらない。産業適地が少なくなってきており、やむを得ない面もある。そうした中で移転後の工場跡地を活用したり、企業再編や事業再編によって生じる跡地、未利用地などを再利用したりするなどの方策を進めていかないと、需要に応える規模の産業用地を創出することは難しいのではないか」
—大栄不動産が県内で手がける産業団地の現状は。
「坂戸市内で進めている『坂戸インターチェンジ土地区画整理事業』は、8月1日に起工式を行い造成が始まった。開発面積は47万4293平方メートルで地域の特性を生かした産業団地を目指している。近くには渡り鳥のコハクチョウなども飛来することから、二つの調整池やビオトープ、公園を整備するなど自然環境にも配慮しており、28年度の完成を見込んでいる」
新所沢パルコ跡地 マンション・商業施設を建設
—産業団地以外のプロジェクトは。
「5月に川口駅前にリニューアルオープンした三井不動産の『ららテラス川口』の再開発ビルは、当社も所有権を持つ。94の専門店が集積する商業施設で、埼玉県初出店の店舗もある。旧そごうが閉店してから4年ほど経っていたので、地元にも大変喜んでいただいている。各階を表示するサインを鋳物で製作するなど、地場産業を生かしたデザインも取り入れられている」
—川口市以外では。
「長谷工コーポレーションやヤオコーと共同で、所沢市の大型商業施設『新所沢パルコ』の跡地にマンションと商業施設を建設する計画を進めている。敷地面積は約9200平方メートル。敷地内にある500平方メートル程度の市有地は、所沢市が地域の子育て環境の充実に活用する方向で検討している。現在は建物の解体工事に入っており、30年3月までの完成を目指す」
