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埼玉県特集
埼玉県企業の成長・発展を支援
連携する金融機関 挑戦する企業
不確実性の高まる国際情勢をはじめ物価高や人手不足等など中小企業や小規模事業者などは厳しい事業環境が続く状況だ。こうした中で、日本政策金融公庫(日本公庫)は、「政策金融の担い手として、安心と挑戦を支え、共に未来を創る。」という使命のもと、セーフティネット機能を発揮し、事業者の成長・発展を後押しする支援を進めている。
「安心」を支える
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覚書を手にする埼玉りそな銀行の福岡聡社長(右)
日本公庫さいたま支店をはじめ県内5支店は、自然災害や感染症発生など危機事象発生時に、地域金融機関と資金繰りなどで連携し、早期の事業者支援・災害復旧に貢献できるよう体制を整備している。6月の埼玉りそな銀行との「危機事象発生時における業務連携に関する覚書」の締結を皮切りに、今後も連携する地域金融機関を拡大していく。
また、米国による関税引き上げについては、4月に特別相談窓口を設置し、迅速かつきめ細やかな対応ができる体制を整備することにより、セーフティネット機能を発揮している。
「挑戦」を支える
日本公庫は、経営者の高齢化や後継者不足、サプライチェーンの強化などの課題への支援のため、事業承継関連資金の融資限度額の引上げや融資対象を拡充している。9月にオープンネーム後継者募集イベント「事業承継マッチングイベントi n 埼玉」を開催した。10月に原材料高騰等の影響を受ける食品事業者に対して持続可能な供給体制確立を目的とした食品等持続的供給促進資金の取扱いを開始するなど、今後も地域経済の安定と活性化に貢献していく方針だ。
また、中小企業が飛躍的成長を遂げるための「100億宣言」の挑戦について、計画策定段階から成長戦略の伴走支援により地域民間金融機関と連携して、後押ししていく。
3事業一体となり「日本一暮らしやすい埼玉」実現
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さいたま支店国民生活事業統轄・都築栄太氏(左)、支店長兼中小企業事業統轄・黒澤伸也氏、農林水産事業統轄・木村哲也氏(右)
日本公庫は2024年度に「政策金融の担い手として、安心と挑戦を支え、共に未来を創る。」という使命を明文化した。中小企業・小規模事業者の実態・要望を把握して、政策金融を的確に実施。新たな取り組み、成長、再チャレンジといった挑戦を支える。創業・スタートアップ、新事業、事業再生、事業承継、海外展開、農林水産業の持続可能な成長、ソーシャルビジネスなどの重点事業分野の支援にも力を入れる。今後も埼玉県や県内市町村、支援機関、民間金融機関などと連携しながら、3事業(国民生活事業、農林水産事業、中小企業事業) が一体となり、県のスローガン「日本一暮らしやすい埼玉」の実現に向け、中小企業・小規模事業者などの成長と発展を支援する。
VANTECH/キャンピングカーと言えばVANTECHを目指す
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数々のラインナップを揃えている
VANTECH(埼玉県所沢市、酒井裕二郎社長)は、キャンピングカーや災害時に活躍する薬局機能を持った車両など特殊車両の開発設計・製造・販売を主に行っている。キャンピングカーは、トラックベースの後ろに移住空間となる(シェル)を取り付け販売するが、特に同社のシェルはつなぎ目の無い一体成形になっていることが特徴で、ボディ部分からの雨水の浸入などを許さない、強度を担保した作りが強みだ。
国内各地に直営店を展開しているため、長年顧客のニーズや声を直に聞きながら、車両の改良や提案に磨きをかけてきた。昨今のキャンプ人気に併せ、季節を問わず快適に過ごせる点や、公共交通機関での移動が難しい高齢者・ペットなどと一緒に出かけられる点などが注目され業界としても右肩上がりの状況が続く。さらに、インバウンド向けへの車両の貸し出しや災害時の後方支援としての車両の提供など役割は多角化している。酒井裕二郎社長は「デザイン性を高め、かっこいいと思われる車両を作り、認知度も向上できれば」と展望を語る。
暁運送/100億円企業目指し群馬・富岡に倉庫建設
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新倉庫の完成イメージ
暁運送(埼玉県本庄市、脊山知教社長)は1964年に創業して昨年60周年を迎えた。2023年には本社をJ R 本庄駅近くに移転。また運輸業界の「2024年問題」では、20年ごろから改革を進めてきた。食品やチルドの配送やコンビニ配送などの輸配送、商品の梱包や一部加工などを行う流通加工、顧客に物流ソリューションを提案して業務を請け負う3PLの事業を展開。20年からは倉庫事業を開始した。万全な品質管理の元で入庫や保管、その他の各種サービスを提供する。
日本政策金融公庫さいたま支店などの支援を受けて現在、群馬県富岡市に倉庫を建設中だ。化学品やリチウムイオンバッテリーなどを安全に保管できる危険物倉庫で、26年7月の稼働を目指している。「倉庫事業の拡大を通じて社会課題の解決につなげていきたい」と脊山社長は強調する。売上高100億円を目指す企業を中小企業庁が支援する「100億円宣言」も行っている。
ウラノ/半導体製造装置向け部品、アルマイト加工を開始
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ウラノの群馬工場(外観)
ウラノ(埼玉県上里町、小林正樹社長)は、チタンやインコネルなどの難削材加工に強みを持ち、航空機エンジン部品と半導体製造装置向け部品の製造を手がける。
2026年1月に半導体製造装置向け部品において、耐腐食性・耐摩耗性・絶縁性を実現する硬質アルマイト加工を始める。従来外注していた同加工の約2割を内製化。さらに外部からのアルマイト加工も受託して利益率と売り上げの向上を狙うほか、リードタイムの短縮も見込む。小林社長は「一貫したサポート体制を構築して高品質化にもつなげる」と強調する。また、金属を隙間なく密着させる「拡散接合」技術を2022年に導入しており半導体製造装置のコア部品の製造も可能としている。
航空機エンジン部品では、長崎工場(長崎県東彼杵町)でメンテナンス・リペア・オーバーホール(MRO)事業を一層強化。これらの戦略を通じ、2030年7月期の売上高で現状比6割増の100億円を目指す。
高橋ソース/素材厳選 本物の味作り
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リブランディングでラベルも新しくした「カントリーハーヴェスト」
高橋ソース(埼玉県本庄市、高橋亮人社長)は、2026年に創業80周年を迎える老舗ソースメーカー。家庭や学校給食用、レストランや専門店向けに幅広く商品を提供する。トマトケチャップなど他の調味料なども手がける。自社ブランドだけでなくプライベートブランドのOEM( 相手先ブランド生産)も行っている。
1986年から特別栽培の野菜や果実を使ったソース「カントリーハーヴェスト」を発売する。高橋社長は「厳選した素材にこだわって、オーガニックを生かした本物の味作りを進めている」と話す。
現在は商品のリブランディングを進める。日本政策金融公庫などの支援を受けて新たな倉庫の建設計画も進行中。来春着工して27年春の稼働を目指す。さらに「日本のソースを世界に届けたい」として海外展示会にも出展する。「20年後の創業100周年に向けて、これからもおいしいものを作りつづけていきたい」と高橋社長は将来を展望する。
