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埼玉県特集
第47回埼玉県産業振興懇談会/未来の人材を育む魅力ある会社づくり②
日東精密工業 社長 近藤 敬太 氏/社内コミュニケーション改善
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日東精密工業 社長 近藤 敬太 氏
私ども日東精密工業株式会社は1966年に創業し、2025年で第60期を迎えます。資本金は2430万円、従業員は109名(男性96名、女性13名)です。事業内容は、主力製品であるブローチをはじめ、金型および鋳抜ピンの製造販売であり、本社を埼玉県寄居町に置き、深谷市と栃木県益子町に工場を展開しています。また、グローバル化にも積極的に取り組み、中国・江蘇省南通市およびインドネシアに合弁会社を設立し、ブローチの再研磨やメンテナンスサービスを提供しています。営業拠点は埼玉、名古屋、浜松、大阪、広島に設置され、全国的な体制で顧客ニーズに対応しています。
当社の主力製品であるブローチは、自動車や2輪車のパワートレイン、足回り、ブレーキ部品などの精密加工に用いられる特殊切削工具であり、国内で製造を続けているメーカーはわずか3社しかありません。その中で、中小企業として独自技術を保持しているのは当社のみであり、自社開発によるCNCシャープナーを用いた高精度再研磨技術が強みです。高精度な加工を維持しつつ、生産効率を上げるための改善活動も継続的に行っています。
環境・健康を軸に組織文化 改革
当社が目指す「魅力ある会社づくり」とは、外部からの評価を追求するのではなく、社員自身が「内から見て魅力を感じる会社」にすることです。その根底にあるのは、社員同士のコミュニケーションの改善です。かつては事業部間で競争意識が強く、連携不足が課題でしたが、全社共通の目標を掲げ、「環境経営」と「健康経営」を軸に組織文化の改革を進めています。
環境経営の取り組みでは、2009年にエコステージ協会ステージ1を取得し、19年にはステージ2を達成しました。当初は紙ゴミの分別や省エネ活動などの基本的な取り組みから始まりましたが、現在では不良削減や納期改善、品質向上といった本業の改善活動へと発展しています。特に部署を横断して相互に監査を行う「クロス内部監査」により、他部門の業務内容を理解し合う機会が増え、職場全体の信頼関係や協働意識の向上に大きく寄与しています。社員の主体性や改善意欲も高まり、社内のコミュニケーション改善にも効果が見られます。
健康経営においては、21年に埼玉県健康宣言事業所に登録され、23年には埼玉県健康経営認定制度に認定されました。さらに24・25年には健康優良法人ブライト500および協会健保健康優良企業ステップ2に認定されています。これらの取り組みは、社員の健康管理と企業の持続的成長の両立を目指した成果です。具体的には、月1回の体育館利用によるソフトバレーやバドミントン、年1回のハイキング、社内運動会やウオーキングイベントなど、社員が楽しみながら健康づくりに参加できる活動を行っています。また、家族も参加可能なイベントを通じて、職場と家庭のつながりを深める取り組みも行っています。
さらに、社員の声を反映する「幸せデザインワークショップ」や社内報「健活通信」の発行など、経営層と社員の対話を促進する仕組みを整備しています。これらの活動により、以前は約4%だった離職率が現在は2%にまで低下し、社員の定着率向上につながっています。まだ活動参加者が固定化する課題はありますが、組織全体の一体感や社員同士の信頼関係は着実に高まっています。
今後も当社は、環境・健康・コミュニケーションの三本柱を中心に、社員が心身ともに健康でやりがいを持てる職場づくりを推進してまいります。社員一人ひとりが自身の健康を大切にし、活力ある職場を築くことで、魅力的で持続可能な企業経営を実現していきます。地域社会とともに成長し、次世代へ技術と文化を継承できる企業を目指してまいります。
【企業データ】
○設立年:1966年
○資本金:2430万円
○職種・事業内容:精密切削工具・各種金型・ピンの製造販売
○本社所在地: 埼玉県大里郡寄居町桜沢1560の16
○電話番号:048・581・8818
金杉建設 社長 吉川 祐介 氏/安全・精度両立の建設現場 実現
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金杉建設 社長 吉川 祐介 氏
当社は1950年に設立した総合建設会社で、埼玉県春日部市に本社を構えています。企業ブランドの向上に力を入れており、ICT(情報通信技術)、デジタル変革(DX)の推進、災害対応、社員教育、広報活動など多面的な施策を通じて、地域社会への貢献と社員の働きやすさの両立を図っています。その中でも、若手社員の教育は重要な課題となっています。
日本の就職氷河期と建設業界の就職氷河期は開始時期が異なり、建設業界の方が長期にわたりました。そのため景気が悪化した際に建設業界を離れた社員が多く、現在30代、40代の社員が少ないことが課題です。大手ゼネコンや中堅ゼネコンが、これまで中小ゼネコンが採用していた学校の学生を採用するため、一層難しくなってきているのが県内建設業界の実情です。そうした環境下でも当社は毎年約5人の若手社員を採用し、堅調な採用状況を維持しています。従来の理系採用や大学の土木工学科などにこだわらず、文系採用、第二新卒採用、県外の高専採用にも取り組んでいます。
地域と社員に寄り添う企業活動
過去5年間で採用した学生の出身地は13都道府県に及びます。地元が遠方の学生ために社員寮の整備を進めており、2020年に社員寮1号棟を建設、今年は2号棟を開設しました。1号棟にはバーカウンターを設置し、若手社員同士がコミュニケーションを図れる場や、先輩に質問・相談できる場を設けています。2号棟ではヒアリングに基づき、ランドリールームを設置し、若手社員が生活しやすく相談しやすい環境を整えました。
採用活動で重要となるインターンシップ(就業体験)にも力を入れており、21年にインターンシップアワードを受賞しました。インターンシップ生の希望に応えたプログラムを提供し、実際の現場で当社が保有する最先端のICT、DX機器に触れてもらっています。従来の測量方法と最新の測量方法の違いを体験してもらうほか、希望に応じて飲食店で若手社員とランチをとる時間を設け、会社に関する環境や悩みを話す機会も提供しています。こうした取り組みにより学生の満足度が高まり、インターンシップから採用につながるケースも増えています。
また当社はICT、DX分野でも先進的な取り組みを行っています。社内に「インフラDX推進室」を設置し、携帯型3Dレーザースキャナーやドローン搭載3Dレーザースキャナー、マルチビームソナー搭載リモコンボート、GNSSローバーなど多種多様な3D測量機器を保有し、技術者が扱えるよう内製化しています。異なる3D測量機のデータ統合や現場工程に応じた測量が可能です。さらに、道路工事などで地下埋設物を探査する機器や3Dプリンター、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)システムを活用し、住民への説明や作業員の事前確認に使用することでトラブルの未然防止につなげています。
建設機械のDX化にも注力しており、マシンコントロール(MC)やマシンガイダンス(MG)機能を活用したバックホウでは、3D設計データに沿ってバケット先端位置を制御可能としました。施工目標面の掘り過ぎを抑制しつつスムーズに掘削できるほか、手元作業員を不要とし労務作業の削減と安全性向上も実現しています。特にチルトローテーターは掘削性能向上やアタッチメント交換による作業効率化に貢献しています。
災害時の出動にも対応しており、18年1月には首都高速除雪のため、今年1月には八潮道路陥没での対応に向け出動しました。災害専用の建設機械を保有することで、即時対応力が向上し地域の安全に貢献しています。さらにSNSを活用した企業広報を行い、ICT、DX、災害出動、インターンシップと広報活動を連携させ、企業ブランドの向上に努めています。
【企業データ】
○設立年:1950年
○資本金:9800万円
○職種・事業内容:総合建設業、開発企画、一般土木
○本社所在地:埼玉県春日部市南1の6の9
○電話:048・737・6211
