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埼玉県特集
財務局、経産局 地域経済の成長を支援
埼玉県のさいたま新都心には、1都9県の地域金融行政を担う財務省関東財務局と、1都10県の地域産業を支える経済産業省関東経済産業局が拠点を構えている。関東経済産業局の佐合達矢局長と関東財務局の後藤健二局長の両トップに管内の現状や今後の取り組み、将来の方向性などについて語ってもらった。
【ごあいさつ】 関東経済産業局長 佐合 達矢 氏
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関東経済産業局長 佐合 達矢 氏
関東経済産業局が所管している圏域は、日本のGDPの4割強を占め、都市部から過疎化に悩む地方部まで含む、日本の縮図とも言える地域です。政策を現場に届け、現場の課題を政策立案につなげる役割を担う当局では、この広いエリアに対して現場主義を徹底し、地域の実情に即した施策を展開することで、投資、賃上げ、消費拡大の好循環を生み出す地域経済の構築を目指しています。
埼玉県に目を向けると、足元の景気動向は一部に弱い動きが見られるものの、全体としては持ち直しの傾向が続いています。他県に通勤・通学する人口割合が約14%と全国で最も高いことや、1都3県で比べると創業やスタートアップの創出が相対的に少ないなどの課題が見られます。一方で、6割を超える企業が今年度中の設備投資計画を有し、昨年の工場立地件数も全国7位に位置するなど、経済のベースは健全な状態にあります。さらに、優れた企業を挙げれば枚挙にいとまがありません。大企業と肩を並べて核融合の実証に取り組む銅合金製造企業、アセチレンガスを用いて燃焼を伴わない熱処理設備を製造する装置メーカー、高性能防じんマスクの開発で培った気流制御技術を半導体関連事業に活用する中小企業、保育サービスを展開しつつローカルゼブラ企業を100社輩出するプロジェクトを進める企業など、多くの企業が挑戦を続けています。こうした事業者の活動をサポートし、地域活性化を進めるため、当局も埼玉県をはじめとする自治体、金融機関や各種支援機関との連携を一層強化していく所存です。
具体的には、経済活動の基盤となる適正な取引環境の整備に向け、来年1月に施行される取引適正化法の厳格な執行に努めてまいります。本法には、協議に応じない価格決定や手形払いの禁止などが盛り込まれており、サプライチェーン全体で労務費を含めた価格転嫁や取引の適正化を推進していきます。この分野では、埼玉県は全国をリードし、金融機関職員を「価格転嫁サポーター」として養成する仕組みや、県外企業も活用可能な「価格交渉支援ツール」の提供などを行っています。埼玉県との連携を軸に、価格転嫁対策を着実に実施していく考えです。
また、地域経済のさらなる発展には、積極的な投資や国内外の需要開拓、雇用創出において影響の大きい中堅・中小企業に対する支援が重要です。経済産業省では「大規模成長投資補助金」や「中小企業成長加速化補助金」を措置して大胆な設備投資を後押しするほか、今年度からは、「売上高100億円」という野心的な目標を掲げ、飛躍的な成長を目指す中小企業を支援しています。
このほか、イノベーションの源泉となるスタートアップ創出や技術開発、DXやGXによる生産性向上や省力化、シニアを含めた多様な人材活用の推進、事業継続・事業承継、消費環境の整備など、さまざまな施策に取り組んでまいります。
埼玉県には、経済活動の主役である優れた経営者、企業が数多く存在しています。主役がその力を存分に発揮できる舞台を関係者が連携して整え、まさに「オール埼玉」の力を結集することで、埼玉経済は今後、力強く、持続的に成長していくものと考えています。
【ごあいさつ】 関東財務局長 後藤 健二 氏
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関東財務局長 後藤 健二 氏
関東財務局は、関東甲信越1都9県をフィールドに、財務省・金融庁の施策を最前線で実施するとともに、地域の方々の声をよくお聴きして、財務省・金融庁の政策に生かしていくことを使命としています。
こうした業務の一環として、当局では、管内の経済情勢の調査・分析結果を「経済情勢報告」として取りまとめており、直近の埼玉県内の経済情勢について11月6日に公表したところです。総括判断については、「持ち直している」として前回7月判断から据え置きとしました。これは、生産活動を「一進一退の状況にある」として下方修正したものの、個人消費を「食料品を中心に物価上昇の影響が目立つものの、持ち直している」、また雇用情勢を「人手不足を背景に企業の採用意欲が高い状況にあるなか、持ち直しつつある」として据え置いたことなどを踏まえた判断です。
次に金融行政についてですが、地域においては、少子高齢化の進展に伴う需要減少や経営者の高齢化・後継者不足、物価上昇や人手不足への対応など事業者の経営課題が多様化しています。地域の持続的な発展を実現するため、地域金融機関には、単なる資金繰り支援にとどまらず、多様なステークホルダーと連携しながら幅広い金融仲介機能を発揮して、地域経済に貢献する力、すなわち「地域金融力」が今まで以上に求められています。
このため、具体的には、M&A(合併・買収)・事業承継支援、経営改善支援、地域に必要な事業・人材の呼び込みなどに取り組んでいただいているところです。
当局においても、地域金融機関向けに、中小企業基盤整備機構関東本部の協力によるM&A・事業承継支援をテーマとした定期的な勉強会や、関東経済産業局との共催による人材や経営改善・事業再生をテーマとしたセミナーを開催するなど、地域金融機関職員の皆さまのスキル向上と関係者間の連携強化に取り組んでいます。
さらに、国有財産行政では、地域に所在する国有財産について、保育や介護といった社会福祉分野での活用、脱炭素社会の実現および地域活性化に向けたカーシェアリングやシェアサイクルポート等のスペースとしての活用などに取り組んでいます。
また、2023年4月から始まった相続土地国庫帰属制度の適切な運営の一翼を担い、将来的に土地が所有者不明化し、管理不全となることを防いでいます。引き続き、地域に密着した国有財産の活用・管理について、住民の皆さまのニーズを踏まえつつ対応してまいりたいと考えています。
このほか、地方公共団体への財政融資資金の貸し付け、自然災害時の復旧工事の査定立会、最近では、外国投資家が経済安全保障に関わる一定の業種を営む日本企業に対し投資などを行う場合に事前の届け出を求め、国の安全などの観点から審査を行う対内直接投資審査制度の周知など、幅広い業務を所掌しています。これからも「地域と歩み、希望ある社会を次世代へ」とのスローガンの下、管内の住民・事業者の方々に質の高い行政サービスを提供するとともに、当局の幅広い機能を十分に活用し、総合力を発揮して地域課題の解決に貢献してまいります。
