-
業種・地域から探す
続きの記事
九州・沖縄 経済特集
サステナビリティー③/地域を磨く
地域には固有の強みがある。地理的位置や培われてきた伝統産業、自然環境など多様な要素が組み合わされることで「地の利」がつくられる。だが、その強みもそのままでは生かされない。投資や共創、新技術といった要素が加わることで、本来あった地域の資源が力になる。
西部ガス/ひびき基地にタンク増設
-
西部ガスは、ひびきLNG基地(北九州市若松区)に3号タンク=左を増設する(完成イメージ、同社提供)
西部ガスはJERAと提携し、自社の液化天然ガス(LNG)拠点である「ひびきLNG基地」(北九州市若松区)を戦略的に活用する。両社でLNGの安定供給体制を強化し、海外向け再出荷事業を推進する狙いだ。
西部ガスは、国内の天然ガス需要のさらなる獲得を目指して同基地に3号タンク(容量23万キロリットル)を新設し、2029年の稼働を見込む。これに加えて、タンクの受け入れ余力をJERAに提供することでLNGの相互融通を実現する。
需給調整の機能が強化されることで「顧客に向けて安定性や経済性におけるプラスを生み出せる」と、西部ガスの加藤卓二社長は力を込める。
LNG事業、JERAと提携/海外展開にも弾み
ひびき基地の優位性はアジアへの近さだ。LNGの国際市場で先行するJERAの知見を生かすことで、西部ガスにとって再出荷事業の基盤を盤石にする。ひびき基地を「アジア方面に対するLNGのハブ拠点にしたい」(加藤社長)との構想もあり、海外供給網を確立する上で大きな足がかりとなる。
両社は水素など次世代燃料の面でもエネルギービジネスの推進を図る考えだ。西部ガスはグループを挙げて、地域のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に取り組んでいる。協業を通じても脱炭素化の歩みを着実に進める。
家具産地・大川/事業承継で経営強化
-
浅川木工は新たな経営体制で産地の振興にも寄与する構えだ(東郷社長=右)
中小企業にとって事業承継は大きな課題であり、同時に経営の持続可能性を高める重要な要素になる。
浅川木工(福岡県大川市)は、2024年に外部の経営者を受け入れた。全国有数の家具産地・大川で1977年に創業した家具メーカーで、「製材から塗装まで一貫するのは当社くらい」と東郷和也社長は胸を張る。
同社売上高はバブル景気に沸いた時期には16億円に上っていた。だが市場の変化もあり、現在は約4分の1の状況だ。その中で同族経営から転換し、外部の目線と手腕を取り入れた。東郷氏は事業承継支援のSoFun(滋賀県近江八幡市)からの派遣で24年9月に社長に就いた。
経営理念やロゴ、ブランドなどを一新。人事評価制度も変革する。あいまいな価格設定や、メーカー名がユーザーに伝わらない流通の課題にも挑む。こうした施策が奏功し、売上高は上昇に転じた。
さらなる成長に向けては、鉄道のレールに似た凹凸形状で組む「ホゾ組」技術や、独自の格子デザイン、試作・開発の環境などを最大限に生かす構えだ。
東郷社長は「市場ニーズをつくり、インテリアのコーディネートができる企業になる。大川を盛り上げたい」と力を込める。
沖縄、伸びる観光客数/昨年度995万人、過去最多迫る
-
沖縄の経済や産業の成長において渋滞対策は必須だ(那覇市)
亜熱帯気候の魅力で多くの観光客を引き寄せる沖縄。沖縄県への入域観光客数は2024年度に995万人となり、過去最多の1000万人を記録した18年度に次ぐ2番目の多さとなった。24年度は前年度比16・6%の伸びを見せており、このペースを維持すれば25年度には過去最多を更新する勢いだ。
7月25日には今帰仁(なきじん)村にテーマパーク「ジャングリア沖縄」が開業する。県北部の「やんばる」と呼ばれる自然豊かなエリアの約60万平方メートルに、アトラクションや自然を感じられる施設が完成。沖縄の新たな魅力として誘客増の期待がかかる。
他方、那覇空港をはじめとする旅客の玄関口がある県南部とは距離がある。アクセス性や施設周辺の交通渋滞を懸念する声もある。
現状でも那覇市を中心とする南部では交通渋滞が深刻だ。国が道路網の拡充を続けるほか、マイカーから公共交通への移行を進める行政の施策が走る。那覇市は40年度の次世代型路面電車(LRT)開業を目指している。
沖縄県にとって観光は基幹産業だ。産業と経済、生活とのバランスのとれた持続可能な成長が求められる。
沖縄科技大/サンゴ分布 海水で検出
-
海は沖縄にとって重要な地域資源の一つ(沖縄県宮古島市)
海洋県である沖縄にとって、美しい海は産業や生活を支える重要な地域資源の一つだ。沖縄科学技術大学院大学は、生物多様性を育む基盤となるサンゴの研究を通じて、地域や世界に貢献している。
同大の佐藤矩行教授らの研究チームは、海水を分析することでサンゴの生息状況を高精度で把握できるシステムを確立した。国内の造礁サンゴのほぼ全属について検証できる。
開発したのは「eDNAメタバーコーディングシステム」。海面の海水を採取し、含まれるサンゴのDNAを解析。登録済みのDNA情報と照合する仕組みだ。国内で確認された造礁サンゴ85属のうち83属を検出できる。
サンゴの調査は従来、ダイバーによる目視で確認していた。新システムにより、効率的かつ安全に広範囲の生息分布をつかむことができる。
変化が起きている海洋生態系の研究において、サンゴ礁の実態を知ることは重要だ。佐藤教授は「正確なモニタリングが急務であり、開発したシステムは有効な手段となる」として活用を進める。
