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九州・沖縄 経済特集
エリアトピックス③/熱気を帯びる企業
福岡県から鹿児島県まで九州を南北に貫く九州自動車道は、陸上交通の大動脈だ。鳥栖ジャンクションで接続する長崎道などにも九州道から受け継ぐ“血”が送り込まれる。九州の高速道路網は「ワン九州」の象徴の一つでもある。佐賀、長崎、熊本、鹿児島の4県にも熱い血が流れている。
地場産業の成長を目指す
半導体以外の分野でも産業発展に向けた取り組みが進む。長崎県は基幹産業の造船業を盛り上げるため産学官連携の新組織を立ち上げ造船業の魅力向上に努める。佐賀県では民間企業が宇宙産業に参入を果たした。
動向が懸念される米国関税措置についても行政が支援を打ち出すなど、地域産業成長の芽を絶やさないための取り組みが続く。
造船業活発化/長崎県、産学官で新組織立ち上げ
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長崎県などが立ち上げた長崎県造船振興連絡会議は6月、設立後初となる会議を開いた
長崎県は産学官連携による新組織「長崎県造船振興連絡会議」を通じて県内造船業の人材確保などを強化する。造船業は長崎県の基幹産業の一つ。県内の造船関連企業や教育機関、自治体など13者が参画して立ち上げた。雇用創出や人材育成に挑む。人材確保に向け先行事例の水平展開や、企業と教育機関の連携加速を通じて造船業の魅力向上を図る。
佐賀県の中小 宇宙に挑む
企業主導で新産業参入に挑む事例もある。佐賀県内の製造業6社は宇宙産業参入を目的に2023年「佐賀県宇宙関連業務研究会(STAR WORKS SAGA)」を発会した。24年には人工衛星に取り付ける部品の製造に成功。月面探査機への挑戦や人工衛星部品の販路拡大も視野に入れて活動を計画する。
動向が注目される米国関税措置については行政も対策を講じる。佐賀県は25年度6月補正予算に県内輸出関連企業支援事業を盛り込んだ。地元企業を対象に専門家による伴走支援や国内展示会出展、事業多角化に向けた補助金など2200万円を計上。そのほか試作品開発や販路開拓補助金に1000万円を盛り込んだ。上限を300万円として用途を限定せず幅広い取り組みを支援することで、関税措置による影響に負けない企業づくりを後押しする。
【注目のモノづくり企業】
九州に「熱気」をもたらすのは天候だけではない。地域経済に「熱さ」をもたらすのは、地場でモノづくりなどに取り組む企業だ。有力企業の動向を紹介する。
戸上電機製作所/学生との接点づくり強化
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戸上電機グループキャラクター「リコット」
戸上電機製作所(佐賀市、戸上信一社長)は高圧開閉器や制御機器などを手がける。電力会社向けの配電機器や電気工事の施工管理を含めてインフラ全般を支える幅広い業務で社会基盤の維持に貢献している。
同社は3月12日に創業100周年を迎えた。100周年を記念して、戸上電機グループキャラクター「リコット」を制作した。「電気(明かり=LIGHT)をつなぐ(CONNECT)戸上のスイッチ(TOGAMI SWITCH)」の文字から名付けられた。リコットは同社グループが協賛するスポーツの試合や各種イベントで活躍する。
また、佐賀大学とネーミングライツ(命名権)事業契約を締結した。本庄キャンパス(佐賀市)の理工学部の2施設で「トガクラ」、「トガリラ」の愛称が名付けられた。
戸上電機は学生が気軽に立ち寄って勉学や交流の場として施設を活用し、有意義で楽しい学生時代を過ごすことで将来の活躍につなげてほしいと願う。
ニシハツ/食堂充実で企業成長につなぐ
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昼休みに活気あふれるニシハツの社員食堂
ニシハツ(佐賀県唐津市、宮元俊樹社長)は、非常用電源として使われる自家発電装置などを手がける。1月からは西九州自動車道の唐津千々賀山田インターチェンジ(IC)からすぐの高台に位置し、災害発生時の地域防災拠点としての役割も担う新工場が稼働した。防災対策を踏まえた顧客の事業継続計画(BCP)強化で、引き合いが堅調な非常用発電機を効率的に生産できる体制が整った。
大型機種製造のためにファイバーレーザー加工機やタレットパンチプレス、天井クレーンなど複数の機械が新たに導入されている。
新工場の目玉はできたての昼食を提供する食堂。2種類の定食は吸い物と小鉢が付き、麺類のセットもある。ご飯はおかわり自由で社員は出勤日に温かい昼食を食べられる。
社員同士で先々のメニューについて常に話が盛り上がる食堂は、社員の福利厚生の充実とともに、交流や団結力を高め、コミュニケーション促進の貴重な場にもなっている。
熊防メタル/さまざまな表面処理を提案
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熊防メタルは黒クロムめっき上にコーティングする「KBM処理」に強み
熊防メタル(熊本市東区、前田博明社長)は、さまざまな用途や仕様に合わせた最適な表面処理を提案している。黒クロムめっき上にコーティングする「KBM処理」は黒クロムめっき層にコーティング膜を浸透させる「含侵(がんしん)」により、一体化して得られる強固な密着性が特徴だ。
コーティングは撥水(はっすい)・摺動(しゅうどう)性に適したFと反射防止に適するHの2種がある。KBM処理は大手半導体製造装置メーカーからの需要も多く、熊防メタルは自社設備を増強した。
同社は現場改善の一環で各めっき処理、アルマイト処理などで処理したくない部分を隠す「マスキング」にも対応する。平面部や精度穴、ネジ部、ミゾ内部などへの立体的なマスキングも手がける。平面にはテープ系、複雑形状には塗料系、筒状や穴の中には樹脂系のマスクを施す。マスキング方法は顧客の要求する精度などにより特殊な方法でも実施する。設計時からマスキングに配慮した形状を考慮している。
