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九州・沖縄 経済特集
サステナビリティー①/エネルギーを未来へ
エネルギーは産業を動かす基盤だ。国の「第7次エネルギー基本計画」では、将来に向けて電力需要が伸びる見通しが示された。九州では半導体工場やデータセンターなどの立地が進むと見られ、エネルギーの安定供給がより求められる。同時にその維持にはテクノロジーとともに、両輪となる人材の力が不可欠だ。
正興電機製作所/共創でイノベーション創出
正興電機製作所では、2026年12月期まで5年間の中期経営計画「SEIKO IC2026」が走る。AI(人工知能)データセンターを中心としたエネルギーの変化やデジタル化といった事業環境の変化を取り込み、売上高を400億円まで高める計画だ。添田英俊社長に聞いた。
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正興電機製作所 社長 添田 英俊 氏
—中計も4年目になっています。
「『デジタルファースト』『脱炭素社会の実現』『One正興』を三つの重点項目として取り組んでいる。重点項目は変えないが、いろいろな意味で流れが複雑になってきた。『デジタルファースト』においても大きく生成AIが出てきた。すごいスピードで普及しており、生成AIだけでは強みを作れない。私たちが持つ、社会インフラにおけるデータとナレッジをAIと組み合わせ、サービス事業でお客さまに役立ち、課題を解決するようなことが事業として成り立つ時代になった」
デジタル・エネルギー領域を深化
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エネルギー需要の変化に電力関連機器で応える(110キロボルト連系変電所)
—その他に変化はありますか。
「脱炭素の分野に限らず、エネルギー分野において大きく変わってきた。一つはデータセンターである。25年度より、生成AI用データセンターの建設が日本各地で始まっている。従来と違い大きな電力を使うため、私たちの仕事として適している。もう一つは蓄電所事業で、日本各地に建設が予定される。電力会社との調整が必要なこともあり、大型の仕事が見込まれる」
—今後の事業推進における考え方は。
「大きく変化している時代でもあり、その意味でグループが一丸となる『One正興』は当たり前だ。『One正興』で培った総合力を基盤に、国内外の企業、大学との共創を通じて成長することが急務である。正興グループでも『ひびきの研究開発センター』の建設が始まり、『One正興』だけの取り組みだけでなく、周りの大学、研究機関、先端開発企業と連携し、スピード感をもって新事業を創出していきたい」
経営・ビジネス“健康優良”に
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「KOKEN」は転倒リスクをスマホで判定できる(画面イメージ)
正興電機製作所は中計で「人的資本経営」にも力を入れるが、健康経営のソリューション提供はその一つだ。
健康経営支援ソリューション「ヘルスレジャー」は、グループの正興ITソリューション(福岡市博多区)がシステム開発を担う。高齢労働者の健康と体力の状況把握を効率化するアプリケーション「KOKEN(コケン)」をラインアップに加えた。労働災害で最多を占める転倒事故を防ぐものだ。
健康経営には自社でも取り組み、経済産業省などの制度「健康経営優良法人2025」では上位の「ホワイト500」に認定された。
九州電力/新経営ビジョン策定 地域との相乗効果で発展目指す
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九州電力の西山勝社長は人的資本経営の推進にも力を入れる
九州電力では「九電グループ経営ビジョン2035」が走り出した。2035年のありたい姿として「エネルギーから未来を拓(ひら)く—九州とともに、そして世界へ—」を掲げる。西山勝社長は「九州の強みに九電グループの強みを掛け合わせ、地域の発展を支え、共に成長したい」と展望を語る。
前ビジョンで目指した、原子力や再生可能エネルギーによる脱炭素化の動きは着実に進展。財務目標も実現の道筋が見えたことから、次代に向けて新たに方向性を定めた。
新ビジョンの実現に向けては、電源の低・脱炭素化と電化の推進を柱とした「カーボンマイナスへの挑戦」のほか、提供するソリューションの進化や人的資本経営など六つのグループ重点戦略を設定した。
経営目標としては財務、環境の両目標に加えて、今回新たに人材面でも「従業員エンゲージメントレーティング」や企業活動により創出した付加価値を従業員数で割った「一人当たり付加価値」など定量目標を示した。人的資本経営の推進を「トップとして特に力を入れてけん引したい」と、西山社長は決意を示す。
九電工/「技能五輪」の最高峰へ 「技」を磨き、人をつくる
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最高峰を目指す取り組みは技能力を示す象徴になる
九電工は「技能五輪」を通じて技能力の向上や技能の継承を進めている。技能五輪は23歳以下の技能者が製造、建設などに関する41職種で腕を競う“技能のオリンピック”だ。全国大会が毎年開かれ、同社選手は電工職種で活躍する。隔年開催の狭き門、国際大会でも2024年のフランス・リヨン大会に木原夢叶選手が出場した。
九電工では新入社員から毎年3人ほど選手に選抜。自社研修施設である九電工アカデミーに所属して、大会の課題に特化した訓練に2年間打ち込む。実際の現場で用いる技能と異なる部分もあるが、仕事や技能向上に向き合う姿勢を培う面でも最高峰を目指す。訓練をチームで乗り越える経験は現場配属後も技能者として生かされ、社内の相乗効果にもつながる。
九電工アカデミーの恒松孝二学長は「競う部分に焦点が当たるが、日本の技能を守り、人をつくる意味で重要だ」とする。人的資本経営を掲げる九電工にとって、技能五輪は技能力の高さを社内外に示す象徴にもなっている。
10月には社名を「KRAFTIA(クラフティア)」に変更する。44年の創立100周年に向け、未来を築く技能者を育成する。
