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九州・沖縄 経済特集
エリアトピックス④/成長を描く
東九州地域では東九州自動車道の一部区間で4車線化の工事が始まるなど、産業や観光を含め、九州地域での重要性があらためて増してきている。資源高や原料高、物価高、円安、人手不足といったさまざまな課題がある中でも、企業は独自の知恵を絞り、課題解決に向かって奔走する。ここでは、大分・宮崎地域で持続可能な社会を維持しながら活躍する企業を取り上げ、次の成長戦略を描くための取り組みについて紹介する。
清本鉄工/耳川広域森林組合と業務委託契約
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清本鉄工では、木質ペレットの原料となる樹皮(パーク)を宮崎県内、隣県から集め、処理・加工している(宮崎県門川町)
清本鉄工(宮崎県延岡市、清本邦夫社長)は、社有林を利活用する事業に乗り出した。4月1日付で耳川広域森林組合と森林整備・管理業務について長期施業委託契約を結んだ。宮崎県美郷町南郷に所有する約200ヘクタールの山林で、間伐材や立木を販売するほか、バイオマス発電所や火力発電所向けに粉砕樹皮(バーク)を木質ペレット化して販売する。さらに将来はカーボンオフセットに使えるJ—クレジットの認証を取得し、自社利用および需要家へ販売する計画だ。
耳川広域森林組合との長期施業委託契約の期間は5年間とし、計画完了後、さらに次の5年間、と順次更新していく予定。同組合から出された施業計画の見積もりを受領後、清本鉄工が内容を精査した上で年度ごとに施業開始指示を出し、進める。
まず9月から秋冬にかけて、降雨量の少ない乾燥期に施業に入り、毎年5—10ヘクタール程度を伐採する。伐った木材は同組合が宮崎県森林連合会の木材市場に運び、A材としてスギの木やヒノキは付加価値が高い住宅建材向けとして原木せり売りで販売する。また、バイオマス材として木質ペレットを販売する際に必要な各種証明書を受ける。伐った後の土地には、同組合が時期を見ながら再造林していく流れだ。
清本鉄工としては立木販売による収益が確保できるほか、間伐・伐採時に剥離した樹皮や素材加工時に発生するバークは、木質ペレットの製造販売を行う同社フォレストエナジー事業部がその原料として有効利用する。
CO2削減、社有林を有効活用
森林整備・管理に関しては、社員が社有林に入って森林伐採をするといった直接的な関わりはない。外部委託で技術顧問の雇い入れを計画する。立木伐採後の再造林により二酸化炭素(CO2)吸収効果を高め、ゆくゆくはJ—クレジット認証を取得することでCO2削減にも貢献する取り組みを進めていく。
美郷町南郷の約200ヘクタールの森林は、清本鉄工創業者で先々代の清本国義氏が所有していたもの。これを社有林化の手続きを経て、事業展開へとつなげた。先代、先々代がつくり上げてきた財産を活用して、フォレストエナジー事業部の事業をさらに拡大していく。
また、地域の防災力強化や生活環境保全、持続可能な森林管理を進めることで、引き続き地域社会へと貢献していく構えだ。
柳井電機工業/工場の「運ぶ」をスマートに 運送ロボを販売
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キャリーボットは作業者の負担を大幅に軽減する
「毎日使う重たい工具類や製品・部品を手押し台車でいちいち人力で運ぶのではなく、目的場所まで安全に持って行ってくれる運送ロボット、あります!」
柳井電機工業(大分市、柳井智雄社長)は、工場向けスマート運送ロボット「CarryBot(キャリーボット)」の九州管内での販売に乗り出した。荷物を運ぶだけの時間を自動化することで、作業者の拘束時間を20分の1に削減できる。1台の最大積載量は150キログラム。手押し台車で運んでいた作業者を別の付加価値が高い作業や仕事に効率良く配置できる。
3機種を用意した。1台の価格は同等製品に比べ安価に設定し、手軽に導入できるようにした。初年度販売目標は30台。
キャリーボットは中国オリオンスターロボティクス製で、バリエーション豊富なアタッチメントやLiDAR(光による検知と測距)、三つの深度カメラ、二つの赤外線カメラなどのほか、自己位置推定技術の「V—SLAM2・0」技術を統合した協働ロボットとしての安全性と作業効率を実現している。
導入作業は最短1日でできる。パソコンは不要でロボット本体で設定ができる。14インチ大型タッチパネルで直感操作が可能。自動充電ドックとケーブル充電もでき、4時間半の充電で約12時間稼働する。移動速度は毎秒0・3—1・0メートル。走行条件は段差10ミリメートル、走行幅650ミリメートル。
実機は同社1階に設けた「オープン・コラボ・スタジオ」に置いている。同社産業FAソリューション部の兵藤幸正部長は「ぜひ、ラボに来ていただき、実機の動きを見てほしい」と呼びかける。「何でも相談いただければ丁寧に説明する」としている。
また、10月15日からマリンメッセ福岡で開催される九州最大級の産業見本市「モノづくりフェア2025」(日刊工業新聞社主催)で実機を持ち込み、デモンストレーションする計画。
