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九州・沖縄 経済特集
エリアトピックス②/モノづくりで克(か)つ
九州最大のモノづくりのまち北九州市には、世界で戦う企業が多い。米国の高関税政策や中東情勢などで、景気の先行きに不透明感が漂うが、得意技術を持つ企業にとっては大きな影響はない。同市を代表する製造各社の最新の動向を紹介する。
安川電機/物流・食品・農業に新型ロボ 国内外で進む自動化投資
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安川電機の小笠原浩会長(後列左から2人目)は未来の科学者がこの地から育つことを願っている
安川電機が米国市場の一層の開拓に乗り出している。約1億8000万ドル(約260億円)を投じて、米ウィスコンシン州フランクリン市に産業用ロボットやモーターなどの生産工場を建設する。イリノイ州の米国本社やウィスコンシン州の別拠点にある生産機能を集約する計画で、自動車や食品、物流などさまざまな業種の自動化投資を取り込む。同社が産業用ロボットを米国で現地生産するのは初めて。
ウィスコンシン州の新拠点は敷地面積約7万4000平方メートル。10年程度をかけて段階的に投資し、工場や技術開発施設などを設置する。700人程度を新規雇用するが、まずは溶接向けや半導体製造装置向けロボットを製造する。
安川電機は主力の自動車や半導体分野に加えて、これまで人手作業が避けられなかった物流や食品、農業など非製造業分野での“未自動化領域”の自動化にも力を入れている。
新型ロボット「MOTOMAN NEXT(モートマンネクスト)」は、ロボットが周辺の状況を把握・判断しながら作業を完結することで、作業環境が刻々と変わる非製造業分野の自動化に貢献する。
モートマンネクストの特徴はロボット業界で初めて、米エヌビディアの汎用画像処理装置(GPU)を内蔵した自律制御ユニットをコントローラー内に標準搭載した点にある。AI(人工知能)による判断など顧客が持つノウハウと技術を融合することで、作業状況に応じた自律作業を実現する。
そのモートマンネクストは、モノづくり体感・学習施設「安川電機みらい館(北九州市八幡西区)」でも活躍中だ。みらい館2階フロアは複数のロボットが来館者を迎え、イベントやゲームを通じて最新技術を体感できる工夫を凝らしている。
今年6月には累計来場者数20万人を達成した。20万人目は福岡県直方市立直方西小学校の5年生18人と教職員3人だった。来場した子どもたちはモートマンネクストを相手にしたブロック対戦ゲームに興じるなど、最新の科学技術を身近に感じた。同社はこれらの経験が、未来の科学者を育ててくれると願っている。
TOTO/社会に必要とされる存在目指す
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8月に10周年を迎えるTOTOミュージアムは、創業の精神を広く今に伝えている
TOTOの企業理念の根幹は、初代社長の大倉和親が2代目社長に送った「どうしても親切が第一」から始まる書簡だ。1917年の創立以来同社は、日本初のユニットバスルーム(JIS規定)や温水洗浄便座「ウォシュレット」などさまざまなイノベーションを生み出し続けているが、事業活動だけでなく社会貢献活動との両輪で各国、地域に根差した活動に取り組んでいる。
日本の建築やデザイン文化を多角的に発信する建築専門ギャラリー「TOTOギャラリー・間(MA)」は、今年開設40周年を迎えた。また持続可能な社会の実現に貢献する「TOTO水環境基金」も設立20周年を迎えた。これまでの活動地域は18カ国、43都道府県を数え、助成先も延べ332団体となり、その輪はさらに広がっている。
さらに2015年には地域への思いを大切にし、今後も社会とともに発展していくために「TOTOミュージアム」を開設、25年8月には開館から10年の節目を迎える。7月には国内外約60万人の来場者を迎えた同ミュージアムは、北九州市と協業したSDGs(国連の持続可能な開発目標)プログラムの実施などを通じて、同社創業の精神を広く一般に周知し、地域に必要とされる存在を目指している。
CGSホールディングス/自社技術 世界の標準仕様に育てる
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ホールディングス体制に移行して製造業のAIやクラウド技術を強化する
国産コンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)システム大手のC&Gシステムズ(北九州市八幡西区)は、4月1日付で持ち株会社CGSホールディングス(HD)体制に移行した。7月1日付でNTTデータエンジニアリングシステムズ(東京都大田区)の製造業向けデジタル関連事業を傘下に収め、10月から本格的に新体制でCAD/CAMシステムを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)インテグレーターとして事業を拡大する。
目指す姿は製造現場のデジタル化支援だが、ほかに製造業のAI(人工知能)やクラウド技術を強化する狙いがある。また各々の技術を結集して海外の販路開拓にも取り組み、国産CAD/CAMを世界のデファクトスタンダード(事実上の標準)に育てたい思いもある。
製造業の海外移転で金型業界は低迷が続くが、一方で、日本の付加価値技術は世界で再認識されている。特に自動車や半導体で量産技術が認められており、今後さらなる市場拡大が予想される電気自動車(EV)やパワー半導体など成長が期待できる市場は多い。CGSHDの山口修司会長は「グループを挙げて生産性の限界に挑戦する。独自の製品や量産技術を投入することで、金型メーカーの成長を支援したい」としている。
