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九州・沖縄 経済特集
エリアトピックス①/連携は進化する
活発な地域連携は九州地域の特徴といえる。知事や経済界のトップが一堂に会する九州地域戦略会議は、大きな課題や目標に一体となって取り組む。一方で各県もそれぞれの施策を進める。その中でも福岡県では九州全体を視野に入れた事業が多く走っている。
九州地域戦略会議/QXプロジェクト始動
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福岡市内で開かれた九州地域戦略会議(5月)
2025年度、九州の官民連携が新たな段階に入った。九州地方知事会と経済界で構成する「九州地域戦略会議」は5カ年のアクションプランを5月に決め、広域連携プロジェクト「QX(九州トランスフォーメーション)プロジェクト」をスタートした。地域の課題に取り組むとともに強みを伸ばす。
5月に福岡市内で開かれた第47回九州地域戦略会議で決まったのは「第3期九州創生アクションプラン」。同会議は第1、2期のプランで取り組んだ多くの施策を踏まえて、官民の広域連携で効果がより期待される7プロジェクトに絞った。その総称がQXプロジェクトだ。
七つは「九州ベンチャー支援」「新生シリコンアイランド九州」「子育てランド九州」「九州MaaS」「サイクルツーリズムの聖地・九州」「防災・減災対策高度化」「『九州の食』輸出促進」の各プロジェクト。それぞれ県や経済団体がリーダーやサブリーダーを務める。
半導体産業でエコシステム
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「マイナビ ツール・ド・九州2025」をPRする、競技コースが設定された県の知事ら(5月)
「新生シリコンアイランド九州」では、半導体関連産業のエコシステム(生態系)構築に向け、産学官金が連携し、半導体を作る側と使う側の企業が中核となる拠点を多極的に整備していく。そして各拠点が連携する姿「イノベーション・マルチハブ」の実現を目指す。九州経済連合会と熊本県が中心となって取り組む。
「九州MaaS」では公共交通の利便性向上と利用促進につなげる。24年8月にサービスを開始した、九州一体でのMaaS(乗り物のサービス化)事業の普及を通じて実現する。住民や観光客の移動を円滑化し、移動需要の創出にも取り組む。関連する知見の共有や人材の育成も図る。
「サイクルツーリズムの聖地・九州」では「サイクリングアイランド九州」のブランド構築を目指す。国内外から誘客を図り、特に欧米からのインバウンド(訪日外国人)増加につなげたい考え。主な取り組みの一つが自転車の国際ロードレース「ツール・ド・九州」だ。
今年の「マイナビ ツール・ド・九州2025」は、10月10—13日の4日間、長崎、福岡、熊本、宮崎、大分の各県のコースで実施される。3回目の今回は長崎と宮崎が初めて会場となる。
九州地域戦略会議で共同議長を務めた宮崎県の河野俊嗣知事は、QXプロジェクトについて「全国のモデルとなるようなもの。しっかりと成果を出していきたい」と広域連携や地方創生をリードしていく意欲を示した。
福岡県/スタートアップを海外へ
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スタートアップが発表する「エフピッチ」(6月)
福岡県の産業政策が大きな動きを見せている。スタートアップ支援では国際展開を視野に入れた新たな拠点を開設し、イベントなどビジネスマッチングの機会を増やす。半導体分野では後工程向けに注力する。中小企業の収益力を向上させるためデジタル変革(DX)を後押しするセンターを開設する。
県は5月、スタートアップ支援拠点「グローバルコネクト福岡(グロコネ)」を福岡市中央区に開設した。複合施設「ワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)」にある「CIC Fukuoka」内にある。CIC Fukuokaは、国際的なネットワークを生かした起業支援を展開している。
グロコネでは、中小企業の相談にも対応。資金調達やマッチング、海外展開、先端技術、人材といった経営課題への取り組みを後押しする。
マッチングではイベント「F★Pitch(エフピッチ)」を毎月開く。「バイオ」「宇宙」「アトツギベンチャー」などのテーマごとに開催する考え。大企業や海外スタートアップとのマッチングも図る。ベンチャーキャピタルや投資家を含むネットワーク構築を支援する。
バイオ関連 マッチング支援
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三次元半導体研究センター㊧と社会システム実証センター
スタートアップに関してはバイオ関連の取り組みも加速する。福岡市東区の九州大学病院キャンパス内に、大学の研究者とのマッチング支援などを手がける窓口を設置する計画。場所は2026年1月の開設を計画するバイオ分野の創業支援施設「福岡馬出ライフサイエンスラボ(仮称)」内とする。
そのほかバイオ関連ではビジネス交流を促進するため、大手製薬会社やベンチャーキャピタルを招いたネットワーキングを支援。県内バイオスタートアップをPRするイベントを東京都内で開く。
半導体については後工程関連に注力する。福岡県糸島市では「福岡超集積半導体ソリューションセンター(仮称)」を年内に開設予定。既存の「三次元半導体研究センター」と「社会システム実証センター」の統合・改組で実施し、設備の充実も進める。そのほか後工程に関する講座の開設や製品開発への支援も行う。
中小企業支援で県は25年度に「福岡県中小企業DX推進センター」を開設し、企業のデジタル技術活用の支援を強化する。同センターは、現在の福岡県中小企業生産性向上支援センター(福岡市博多区)を改組する。DXの専門アドバイザーを配置して業務プロセスやビジネスモデルの変革を伴走支援する。
