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九州・沖縄 経済特集
サステナビリティー②/現場イノベーション
持続可能な社会を実現する上で、モノづくり企業の存在感は大きい。生産や加工といった現場を擁する製造業自身が、現場を変えることで社会に直接・間接的に好影響を与えることができる。同時に各社が培ってきた技術を基にした製品・サービスを新たな視点で見直すことで、より幅広い対象に革新をもたらすことが可能になる。
西部電機/放電加工、対応ワークサイズ拡大
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「M35LP」と加工サンプル
西部電機は、油仕様のワイヤ放電加工機で加工範囲を拡大した新機種「M35LP」を開発した。既存機種をベースに設計し、加工精度を維持・向上して、軸の移動範囲を広げた。加工対象物(ワーク)の大きさは同社の油仕様で最大となる。電気自動車(EV)向けモーターコアの製造に関係する金型や、半導体のリードフレームを作る金型の製作などでの利用を見込む。
同社の放電加工機で「超精密」クラスに位置付けるラインアップのうち、油仕様の「M25LP」をベースに進化させた。ピッチ加工精度はプラスマイナス1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。
M35LPの軸移動範囲は350ミリ×300ミリ×170ミリメートル。最大ワーク寸法は横700ミリ×縦630ミリ×厚さ150ミリメートル。真円加工は直径250ミリメートル以上にも対応する。
2次元コード(QRコード)を使って段取りを自動化する機能がある。また操作モニターに部品交換手順を教える動画を流しながらメンテナンスできる。ワークの交換などでロボットと連携しやすいように加工槽の扉は自動開閉式を採用した。
西部電機は1972年にコンピューター数値制御(CNC)ワイヤ放電加工機を開発。放電加工で50年以上の歴史を持つ。
日本タングステン/省人化機器で産業界の課題解決
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福岡機器製作所の「FKパレタイザー積む太くん」
日本タングステングループの福岡機器製作所(佐賀県基山町)は、自動積み付け機「FKパレタイザー積む太くん」の製造販売を通じて、省人化や効率化といった産業界の課題解決につなげる。
同機は荷物をつかむ吸着式ハンドを自社開発し、従来機から軽量化。動作の高速化、電力使用量の42%抑制などを実現し、制震性も高めた。毎分18箱(14キログラム以下の2箱同時搬送時)の搬送能力を持ち、作業を約2割効率化した。
当初見込んだ食品業界のほか、医薬品や半導体・電子部品といった企業からも引き合いが出ている。納入先からは省人化の効果だけでなく、設定の容易さなどへの評価が高い。キャスター付きのスリムなデザインのため、ラインや工場間を移動させて稼働できる点も顧客に受けている。
製函や梱包といった一連の装置を組み合わせたラインとしての提案ができることでも強みを発揮する。主要市場と位置づける九州内であればスピーディーな顧客対応も可能だ。
さらに需要に応じて箱以外の形状に適応する開発体制を擁する。宮本公信社長は「自社開発による価格面や性能面の強みを生かし、顧客に価値を提供していきたい」と販売の拡大に力を込める。
昭和鉄工/腐食に強いエコキュート
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業務用エコキュートの新製品(手前)と貯湯ユニット
昭和鉄工は、熱交換器にステンレス製プレートを採用した業務用エコキュートを開発した。耐食性が高く、井戸水(地下水)でも使える。熱交換器は熱伝導率の高さから銅が使われることが多い。今回、冷媒回路の独自設計などにより、冬期や着霜期でも十分な加熱能力と高効率による省エネルギー性能を実現した。
昭和鉄工は業務用エコキュートを主要製品の一つとし、銅製熱交換器で出力30キロワット、40キロワットのタイプがある。井戸水を使いたいとのニーズは従来あるが、水の成分によって熱交換器などが腐食しやすい課題があったという。
これまで同社は井戸水への対応について、ヒートポンプの熱交換器と井戸水が触れずに熱交換できる熱源保護ユニット「イドシス」を組み合わせて可能にしてきた。
今回開発したエコキュートは中小規模施設に適した15キロワット型。30キロワット型をベースに設計した。外部配管やアンカーの位置を旧型機種と同じにすることで、新型と入れ替えやすくした。燃焼式給湯機と組み合わせた給湯システムや、複数のヒートポンプユニットを組み合わせたシステムも提案できる。ホテルや病院、老健施設、給食センターなどに提案する。
堀内電気/蓄電池と太陽光発電で脱炭素
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熊本県大津町で連系調整中の蓄電池
総合電気設備工事業の堀内電気(福岡市博多区)が展開する太陽光発電事業で、蓄電池の活用が注目されている。出力抑制が避けられない太陽光の現状において、蓄電池は負荷の平準化に貢献し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に寄与する。
蓄電池を生かし、売電を再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)から市場価格連動型制度(FIP)に切り替えるケースが増えているという。昼間の出力抑制分を充電し、夜間などに売電する。タイミングは専門業者に任せられる。
銀行も融資案件として蓄電池に注目する。5月に銀行向け蓄電池講習会を開いたところ、想定の3倍を超える60人以上が集まった。政府系を含む12機関から参加した。
堀内電気の太陽光発電は、企業の屋根や屋上に設置する自家消費型システム事業やオンサイトPPA(電力販売契約)事業も受注が増えている。顧客にとって初期投資が不要の「屋根貸して事業」も伸びている。
堀内電気は経営多角化により今春参入した宿泊事業でも積極的に動く。福岡市中央区で2棟で始めた民泊に続き、同市内で7階建て18室と6階建て20室のホテルを建設中。26年の開業を予定する。
