-
業種・地域から探す
続きの記事
京都産業界
〝スタートアップの都〟復権へ
「ベンチャーの都」今風に言えば「スタートアップの都」の復権に向け、さまざまな仕掛けがなされ、支援策も充実してきた京都。現状、スタートアップは首都圏に集中するが、伝統と革新、調和と融合で発展してきたイノベーションの街、京都が持つ高い技術力にかかる期待は大きい。
脱炭素、企業の契機に
-
2024年のIVSで開かれたピッチイベントの表彰式 -
京都銀行がJR向日町駅前に新設する店舗イメージ
国内外のスタートアップや投資家らが集まる日本最大規模のイベント「IVS」が2023年、24年に引き続き来夏も京都で開かれることが決まった。3年連続は初めて。本年のIVSでプレゼンテーションされたスタートアップの製品や技術について、島川敏明IVS代表が指摘した「衛星データやモノづくり、環境などにディープテックを絡めた人工知能(AI)ドリブンなサービスの勢いを感じた」とのトレンドの変化などが気になるところだ。
ディープテックは研究による科学的発見に基づく技術。大学が多い京都にとって、強みを生かせる領域もあり、事業化が実現したときの社会的インパクトに期待が膨らむ。
行政もディープテック領域の世界的企業誕生を促そうと、支援策を展開する。スタートアップが入居できるインキュベーション施設の不足が課題となる中、京都府は京都銀行がJR向日町駅前に新設する店舗ビルの一部を借り受け、インキュベーションオフィス「ゼットバレーオフィス(仮称)」を整備する。脱炭素関連スタートアップ企業向けで、25年4月に共用を始める。
京都府は向日市を中心とするJR京都線沿線地域を「ゼットバレー」と呼ぶ脱炭素関連スタートアップ企業の集積地にする計画だ。既に同地域にはニデックやGSユアサなどの電気自動車(EV)やバッテリー関連企業のほか、研究機関も集積する。新しいインキュベーション施設を活用して国内外のスタートアップを呼び込み、協業による新たな脱炭素ディープテック技術や企業の誕生につなげることが期待される。
京都のスタートアップ発展 再生医療・新エネ注目/日銀リポート
大学の高度な技術力や研究成果をベースに、ディープテックを活用した新たなビジネス領域の開拓を目指すスタートアップの成長が注目されているー。
日銀本店と京都支店は今春、日本のスタートアップに関するリポートを共同作成して公開し、その中で京都の現状についてこのように評している。
この中で、再生医療をはじめとするライフサイエンス分野や新エネルギー分野で京都大学発スタートアップなどが注目され、成長しつつあると紹介した。一方、同リポートは京都のスタートアップ発展で最大課題は経営人材不足とも指摘。課題対応の例として、京大傘下のベンチャーキャピタルによる経営人材と研究者のマッチングなどの取り組み事例などを示した。支援枠組みの一段の強化や、ロールモデルとなるスタートアップが成長して後進起業家が続き、リソースの集積が進めば、地域でのスタートアップ成功事例の増加につながるとした。
「ベンチャーの都」とされた京都は、戦後に技術力と早期海外進出でグローバル企業が相次ぎ誕生した実績があり、近年にそうした事例はないものの、期待値は高い。
地域の課題解決に向き合う/京都信用金庫理事長 榊田 隆之 氏
-
京都信用金庫理事長 榊田 隆之 氏
ー午後を顧客や地域の課題解決に特化する『課題解決型店舗』を、来年1月に全体の約半分の47店(現在21店)へと拡大します。
「信用金庫は中小企業の専門金融機関でもあり、課題解決を求める声は増えている。内容はさまざまで、普段からのお付き合いが試される。かゆいところに手が届く、本質的な事を理解した上で時間をかけて、各社固有の課題にじっくり向き合っていく。くらし、事業、地域社会の課題解決は人が行う仕事の領域であり、人にしかできない付加価値の高い仕事を目指す。これが課題解決型社会における金融の果たすべき役割だと思います」
ー〝金利のある世界〟に戻りました。
「定期制預金への預け替えの動きが活発になってきた。一方、貯蓄から投資、運用への国策に多くの人が反応し、問い合わせも多い。当金庫は1月からスマートフォンアプリ『てのひら京信』で平日の夜や土曜日など、都合の良い時間にオンラインで相談担当者の顔を見ながら資産運用相談がじっくり行えるサービスを始めている」
ー良い人材の獲得、育成が重要です。
「自律型人材育成では、対話型経営と分散型組織構築を徹底している。自ら考え、自分事として仕事を捉え、組み立てる力を体験を通じて養う。ノルマを無くしたことで競い合うよりもコラボし、互いを認め合う風土となって、人づくりにつながっている。コミュニケーション豊かな会社を目指し、それがお客さまに伝わる。ゆっくり時間をとって向き合ってくれるとか、そういった印象につながるとか、目に見えない変化を大事にしたい」