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京都産業界
変革をも勝機と捉え、新たな価値生み出す-京都企業トップに聞く(1)
島津製作所社長 山本 靖則 氏/顧客中心のモノづくりを
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島津製作所社長 山本 靖則 氏
-大手分析計測機器メーカーとして脱炭素など、グリーン領域での事業拡大に挑みます。
「京都大学発スタートアップで、細菌を使って二酸化炭素(CO2)から人工シルクなどを生成する技術を持つシンビオーブ(京都市西京区)に出資した。CO2を利用して人に有用なモノを作る動きは持続可能な社会実現に向けて重要だ。化学や製薬分野で広がるバイオ技術を用いた経済活動『バイオエコノミー』は、地球温暖化に対する救いと考えており、当社が貢献できる幅を広げられないか探っている」
-次代の成長に向け製品開発体制を刷新しました。
「4月から製品開発サイドと営業サイドの社員が合議制で、どういった製品を優先して開発するかを決める体制にした。従来はプロダクトマネージャーらの技術畑社員が技術的目線で開発したが、本当に大切なのは顧客中心のモノづくり。世界中から多様な情報や要請が集まる中、本当に必要とされる技術、製品に優先順位をつけて開発する」
-米国で分析計測機器の製品開発などを手がける研究開発センターを稼働しました。
「顧客中心の製品開発のためだ。北米は注力する製薬市場において世界の中心であり、同地域の顧客ニーズは市場の先頭を走っていることから、そこに応えられるような製品を開発する。日本の開発拠点は、どうしても国内向け製品開発が多くなる。また、北米へ社員を派遣して情報収集し、製品開発するのは効率が悪い」
SCREENホールディングス社長 広江 敏朗 氏/国内生産で技術流出防ぐ
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SCREENホールディングス社長 広江 敏朗 氏
-世界シェア首位の半導体洗浄装置の事業環境は。
「半導体の微細化進展や、生成人工知能(AI)向けに(複数のチップを集積する)チップレットを採用した半導体が増えていることなどを理由に、洗浄装置ニーズは拡大している。地域別では、米中対立を背景に中国内での設備投資が盛んだ。一方で世界の半導体製造拠点が台湾にほぼ一極集中していることから、日本や米国、欧州のさまざまな地域で主要デバイスを生産しようと、設備投資が増えている。ただ、当社の半導体洗浄装置の生産においては、技術流出を防ぐため、国内生産する方針は変えない」
-印刷機の事業戦略は。
「これまでの業績は為替の円安で恩恵を受けていたため、当社の真価が問われるのはこれから。紙媒体のデジタル移行は進むが、オンデマンド印刷や少量のパンフレットなどをインクジェットで印刷したいというニーズは増えている。家庭用印刷機メーカーとの競争は激しいが、当社が先行するラベル分野など、勝ち抜ける領域を探していく」
-液晶パネルや有機ELパネルの製造装置事業は、2期連続で営業赤字が続いています。
「非常に苦戦している。ただ、競合の撤退で当社は残存者利益を享受しており、売上額が大きくなくとも、装置が受注できれば十分に収益が上げられるような状況だ。すでに受注している装置の売り上げが下期に立つ見通しで、大きく挽回して2024年度は黒字化の見通しだ」
堀場製作所社長 足立 正之 氏/Yes We Can精神で
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堀場製作所社長 足立 正之 氏
-燃料電池や水電解装置などの性能を分析・計測する水素関連評価装置を手がけます。
「欧州を中心に水素関連ビジネスが増えている。水素の普及をめぐっては、インフラ整備や燃料電池車の価格高止まりといった課題もあるが、重要なエネルギー媒体の一つになることは確実。『水素のホリバ』になろうと進めてきたことは、社会貢献の観点からも間違えていない」
-バイオ・ライフサイエンス領域でも事業展開します。
「コロナ禍が明け、病院への受診控えが収まったことから医用機器の使用量が増え、試薬販売が増加している。開発途上国においては、大病院や検査センターにのみ整備されていた医用機器が地域の診療所などにも設置されはじめ、機器や試薬の需要増へのポジティブ要因になっている」
「製薬市場のお客さまから、当社に対する期待の声を聞く機会が増えており、『Yes We Can』の精神で対応している。例えば、同市場では従来、創薬や研究向けに高精度な分光器などを提供してきた。最近は、生産プロセスでも活用したいというニーズも増えている。そういった声に対応する新製品の開発を進めている」
-次代の成長を見据え、インドに注目しています。
「多様な分野でインドは市場成長が見込める。特に興味深いのは製薬市場。インドはレギュレーションのハードルが低く、新しいことがやりやすい国。当社も新しいソリューションを提案しやすい」
イシダ社長 石田 隆英 氏/省人化でESL需要拡大
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イシダ社長 石田 隆英 氏
-産業機器の自動化の流れが、世界で加速しています。
「人手不足や人件費の高止まりを受け、スナック菓子などを自動で段ボールへ詰めるオートケーサーがグローバルで好調だ。興味深いのは、人が箱詰め作業の高速化に対応できないという理由でも、需要が伸びている点。世界のスナック菓子市場は、コスト削減などの動きから味のラインアップを絞る動きがある。生産品目が減ることで、菓子の生産機械の稼働が高速化し、後工程の箱詰め作業も従来以上の高速化が求められ、手作業での対応が難しくなっている。この動きは日本にも波及する可能性がある」
-スーパーや家電量販店などの小売店の省人化需要も商機です。
「人手不足で、値札やポップ広告の張り替えが負担となる中、電子棚札(ESL)が堅調に伸びている。注目しているのはドラッグストアの動向だ。店舗によっては総菜を販売するなど、スーパーと業態が重複し始めており、ここでもESL需要の拡大が見込める」
-次代の成長を見据え、ソフトウエア関連の技術者の採用・育成を強化しています。
「計量機や包装機、オートケーサー、検査機などが一体となったトータルソリューション提案では、ハードウエアに加え、各機器を連携させるソフトウエアも重要。システムエンジニアの採用強化に取り組むほか、理系だけでなく文系人材でも社内教育などで、システムエンジニアとして働ける体制も整備している」
NISSHA社長 鈴木 順也 氏/医療関連製造受託を強化
-持続成長するための基本的な考え方は。
「印刷や成形、金属加工など六つのコア技術を生かして生産した中間部品・資材を、成長市場に提供する。過去10年の売り上げはスマートフォンやタブレットなどのIT機器への依存が大きかった。今後はメディカルやモビリティー、サステナブル資材向けを伸ばしていく。特に米国での医療機器関連の開発製造受託を強化する」
-メディカル分野拡大に向けた具体策は。
「医療機器の中でも、低侵襲な手術器具の開発製造受託を伸ばす。安全・衛生面から使い捨ての器具も多く、モノづくり企業として量産で貢献できる。ロボット手術の増加も今後のトレンドで、当社も部品を手がけていくことになるだろう。また手術器具先端のセンシング機能を高める流れもあり、ビジネスチャンスがある」
-中長期の成長には人材育成も重要です。
「当社は13年に『Nisshaアカデミー』と銘打った教育体系を構築した。専門性が高いモノは外部講師を招くが、基本はNISSHAの役員や幹部社員が講師を務める点が特徴。品質工学やマーケティングなどの日常業務のほか、MBA(経営学修士)の授業計画に準拠した幹部養成のプログラムなどを用意している。これを海外にも広げていく。海外は優秀な人材を外から雇うという考え方が一般的だが、人件費高騰で社内教育の重要性が高まっている。国・地域の実情に合わせて科目を選びながら、取り組んでいく」
ニチコン社長 森 克彦 氏/インド市場拡大に期待感
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ニチコン社長 森 克彦 氏
-主力のコンデンサーの事業環境は。
「自動車や人工知能(AI)サーバー向けが堅調。一方で日系メーカーが主な顧客である産業機械向けは低調だ。当初は顧客側の当社製品の在庫過多が理由だったが、直近は中国ローカルメーカーとの競争が激化して苦戦しているようだ。中国景気の悪化も踏まえると、コンデンサー部材の現地調達や、稼働から約25年がたつ江蘇省無錫市の工場の省人化などの手を打つ必要がある」
-コンデンサー事業で成長を期待する分野や地域は。
「サーバー向けコンデンサーはニーズが急拡大し、高止まりをキープしている状態だが、まだ需要は拡大するだろう。地域ではインドが以前の中国市場のように拡大していくと考えている。電動に限らず、ガソリン車や2輪向け需要も伸びる」
-電気自動車(EV)の電気を停電時に家庭で利用する「ビークル・ツー・ホーム(V2H)」やEV用急速充電器を手がけるNECST事業も順調に成長しています。
「第3世代のV2Hは政府の補助金制度の開始時期が例年より遅れて2024年4-6月期の動きは鈍かったが、以降はおおむね堅調。V2Hの海外進出も検討しているが、簡単ではない。担当者を配置し、現地規格に合わせた改良や認証取得に向け取り組んでいるところだ。急速充電器は日本の急速充電規格『CHAdeMO(チャデモ)』に対応するが、海外規格への対応も検討している」