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神奈川県特集
神奈川産業人クラブ2025年新春特別講演会/新技術で産業創出
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あいさつする中村幹夫神奈川産業人クラブ会長
神奈川産業人クラブ(中村幹夫会長=大和ケミカル会長、厚木商工会議所会頭)は1月24日、横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ(横浜市西区)で2025年の新春特別講演会を開いた。開会あいさつで中村会長は「今年は困難を乗り越えて新たな段階へ進む縁起の良い年回りとされる。厳しい環境下ではあるが、時代の変化を先取りし、今がチャンスと捉えてデジタル変革(DX)やAI(人工知能)をフル活用した新たな価値を創造することが重要だ」と強調した。黒岩祐治神奈川県知事の講演に続き、Meta Heroes(大阪市北区)の松石和俊代表が「メターバース×AIを活用した社会課題解決」をテーマに講演した。
【講演】危機対応 誠実・丁寧に包み隠さず/神奈川県知事 黒岩 祐治 氏
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神奈川県知事 黒岩 祐治 氏
今、私の古巣のフジテレビがたいへんな状況になっていますので、今日はあえて、危機に直面した際にどう対応すべきかについて、お話ししたいと思います。
私はキャスター時代、医療やいのちの問題に向き合う中で、危機対応の重要性についても取材をしてきました。それは医療過誤の問題です。医療過誤の疑いがある事例が発生した際、病院はいかに対応すべきか、そのモデルとされたアメリカの病院での事例を取材しました。
最も大事なことは事案が発生したら、ただちにスピード感を持って対応するということ。そして、誠実に、丁寧に、包み隠さず、対応するということ。ウソだけは絶対につかない。その上で、第三者により原因を徹底究明し、再発防止策を打ち出すことです。
この病院はそういう対応により、7歳の男の子が亡くなった事案であったにもかかわらず、遺族と和解することができたのでした。
みなさんの企業でもいきなり危機対応に迫られる事態に陥ることがあると思います。そんな時、事実がはっきりするまでは、情報はできるだけ隠しておきたいと思うものです。しかし、それが致命傷になってしまうこともあるのです。今回のフジテレビはまさにそうでした。
私が神奈川県知事に就任してからも、県の危機対応を問われる場面をこれまで幾度も経験してきました。最も印象深く残っているのは、「津久井やまゆり園事件」でした。事件発生直後、私はただちに関係局長会議を開催し、その後、記者会見を開くことを発表しました。「最初の記者会見をいつ開くのか」の情報をできるだけ早く出すことが、メディア対策としては重要なのです。
県では今、利用者への虐待が問題となった県直営の障害者支援施設「中井やまゆり園」の大改革に取り組んでいます。虐待そのものは克服されつつありますが、「医療の空白」といった新たな課題が浮き彫りとなりました。この問題も危機対応の基本をしっかりと押さえながら、改革を進めていきたいと思っています。
【講演】メタバース×AIを活用した社会課題解決/Meta Heroes代表 松石和俊氏
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Meta Heroes代表 松石 和俊 氏
本日はこのような機会をいただきありがとうございます。当社はさまざまな企業にDXやAIに関する研修を提供し、その収益を基に、子どもたちがプログラミングなどを無料で学べる教育の場も作っています。さらにメタバースやAIの開発にも取り組んでいます。私たちの目標は事業ではなく、産業をつくることです。本日はそうした観点から、メタバースやAIといったテクノロジーの活用による教育、地方創生、防災について、私たちの取り組みを紹介します。
次世代人材の教育、エコシステム形成
まずメタバースとは何でしょうか。ひと言で言えば「インターネットの中に入ること」「(仮想空間に)経済圏をつくり出すこと」と表現できると思います。Web3は、ブロックチェーン技術を活用した分散型インターネットの概念です。中央管理者を介さず、ユーザー同士が直接データや価値をやりとりできる仕組みです。このWeb3の中にメタバースは位置づけられます。メタバース市場は2030年に10兆ドルに達するとも試算されています。
私たちは持続可能な世界をつくるため、事業の根幹に教育を置いています。最近では大阪市内に子どものためのDX教育スペース「Hero Egg」を開設しました。子どもたちが将来なりたい職業上位はゲームクリエーター、インフルエンサー、プロeスポーツ選手です。その夢をかなえるためには子ども時代の原体験が重要です。しかし、子どもがテクノロジーを学べる場所はまだまだ日本に足りません。そのギャップが日本の大きな課題です。
同スペースではゲームクリエーター体験やAIでの音楽制作体験ができます。メタバースを通じた英会話の授業なども提供しています。子どもの参加は無料です。体験イベントを開くと非常に多くの子どもたちに参加してもらえます。しかし一過性のイベントだけでは意味がないと考え、常設の施設を開くことにしました。
また、大人も学ぶ必要があります。私たちの活動に触れて、考え方を大きく変えてくれる大人が増えています。Hero Eggではリスキリングプログラムなど大人が学べるコンテンツも多数提供しています。その結果、半年で1万3000人近くの方が受講いただきました。今後は地方自治体や企業との連携を通じて、全国各地に展開し、地域ごとの課題解決にもつなげていきたいと考えています。
当社では、国の助成金(人材開発支援助成金)を活用した企業研修(条件によって費用の最大75%還付)を実施し、大人の学び直しを支援しています。その研修事業で得た収益を次世代の子どもたちへのDX教育に充てています。大人へのリスキリング機会を提供しながら、子どもの学びを支援し、地域課題の解決につながるエコシステムの構築を目指しています。
地方創生、防災にメタバース生かす
メタバースでの地方創生も推進します。今、デジタルツイン(3次元仮想空間の中に現実世界を再現する仕組み)が注目を集めています。このデジタルツインを活用し、地方のショッピングモールを再現したメタバースを制作しました。このメタバース空間の仮想モール内でeスポーツイベントを開催しました。若年層の関心を集めることで、地域経済の活性化を図ります。仮想空間での体験を通じ、参加者が現実のショッピングモールにも興味を持ってくれるようになります。この取り組みは地方自治体との連携の下で実施し、地域の観光振興や商業活性化を目指しています。さらに私たちは教育の要素も入れ込みます。メタバースでの地方創生や地域人材の発掘・育成、大人のリスキリングなどすべてをセットにした取り組みを推進しています。
次に防災メタバースの取り組みを紹介します。東京消防庁の調査によると、日本国内で一度も防災訓練を受けたことがない人は全体の約63%に上る一方で、国土交通省のデータによると、今後国内人口の約70%が何らかの災害に直面する可能性が指摘されています。人は皆、楽しいことにお金を使います。ただ、楽しくするには「楽しくならない理由をなくす」という考え方があってもいいのです。
そんな発想から、防災訓練をメタバース内でゲーム形式にしました。参加者は仮想空間の街を探索しながら、災害時の行動を自然に学べます。例えば、津波の避難経路をシミュレーションし、クイズ形式で減災の知識を身につけられます。
最後に、次世代のヒーローをつくるのにどのような仕組みが必要でしょうか。子どもたちが夢中で好きなことに取り組む中で、社会課題が自然と解決されていく-。
地域にメタヒーローズのような活動をする企業や団体が増えることで雇用が生まれ、地元愛を持った子たちが自らの手で地域の課題解決ができる。つまり地元を出なくていい子どもたちが増えます。我々はこれからも産業を創る次世代のHeroをつくっていきます。
ピッチイベント/自社の強みアピール
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約110人の参加者の前で、1人3分間のピッチで自社をアピールした -
神奈川産業人クラブ新春特別講演会後の賀詞交歓会では、洗足学園音楽大学の学生アイドルグループ「MARUKADO(マルカド)」が登場して歌とダンスを披露。同大学と包括連携協定を結び地域社会の発展に取り組む川崎信用金庫の堤和也理事長(中)もステージに上がり、会場を明るく盛り上げた
神奈川産業人クラブは新春特別講演会の中で、会員5者による自社紹介のピッチイベントを開いた。1人3分間の短いプレゼンテーションで、自社の特徴や強みなどをアピールした。
普段の会合などを通じて会員同士が知り合いになっていても、互いの事業内容まで詳しく知らないケースもある。そこで会員同士が互いの事業への理解を深めることを目的に同イベントを初めて企画した。企業の交流を促進し、神奈川から新たなビジネスの創出に結びつける。
神奈川産業人クラブ 企業・大学紹介参加者
東京精密発條 大西 貴子 社長
工作機械向けの排出コンベヤーやカバー、板金用曲げ金型などの自社製品の製造販売を手がけている。2015年に開発したプレスブレーキ用曲げ金型「ウイングベンドプラス」は、幅広い金属のワーク(加工対象物)にもキズ付けずに曲げ加工が可能なのが特徴。生産性の向上や省人化にも寄与できる。
(横浜市都筑区)
セントラル電子制御 杉山 茂 社長
通信システム機器などの設計製造を手がける。社内でメカ・エレキ・ソフトを含めて設計でき、システム開発に加え、モノづくりまで提供している。顧客のニーズとスピードに応える開発力と技術力が強み。働きやすい環境づくりや健康経営の推進など、SDGsの達成に貢献する取り組みにも力を入れている。
(川崎市高津区)
SMC 佐藤 秀信 東部地区長 兼 厚木ブロック長
空気圧制御機器などの生産財メーカーとして日本の製造業を支えている。現在は顧客と連携して二酸化炭素(CO2)排出量を削減する活動を重視。当社製品が使用されている現場を顧客と一緒に回り、診断して改善まで行う。当社にとっての社会的責任を果たすとともに、顧客の生産活動の合理化とコスト低減を後押しする。
ディモルギア 長沼 茂夫 社長
MICE(主にコンベンション、イベント、展示会)関連事業やブランディング支援を手がける。また印刷やプロモーション、ウェブ、動画に強みを持つグループ企業があり、地域や企業の課題に対し的確なクリエーティブを提案する。東京・湯島に拠点を置いているため、関東圏の対応も可能になっている。
(新潟市中央区)
横浜国立大学 山本 亮一 研究推進機構 教授 産学連携部門・副部門長
大学の知をもっと皆さんに知ってもらい、広く活用してほしい。産学官連携の推進に向け、「研究者ナビ」というウェブページを開設し、大学の研究シーズを紹介している。学問分野だけでなく社会課題ごとにシーズを束ね、検索しやすくした。問い合わせにAIチャットボットの活用も進めている。ぜひ気軽に利用してほしい。