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神奈川県特集(2024年7月)
相模原市・県央地域 -新たな挑戦 力強くサポート
神奈川県の県央地区では、国連の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)やデジタル変革(DX)への対応など、産業界が抱える課題に対して行政が力強くサポートしている。企業、研究者、起業家等が一体となって生み出されるイノベーションを創出し、コミュニティーやネットワーク形成、生産性向上や賃上げなど多岐にわたる支援を展開する。相模原市、厚木市の動きを中心に産業振興の取り組みを紹介する。
相模原市 相模原発イノベーション創出 研究開発プロジェクト推進
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市内企業と、パートナー企業をマッチングする「オープンイノベーションプログラム」
相模原市は、スタートアップが生まれ、育つとともに、企業、研究者、起業家らさまざまな主体の共創によりイノベーションが生まれる「スタートアップ・イノベーションエコシステム」を市内に構築することを目指し、「イノベーション創出促進拠点運営事業」、「オープンイノベーションプログラム」を2023年に開始した。
企業交流拠点を設置
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コミュニケーション棟とオフィス棟を備える拠点施設「FUN+TECH LABO」(JR東海の登録商標)
「イノベーション創出促進拠点運営事業」は、先進的な技術領域に属するさまざまな技術・研究シーズを保有する企業やスタートアップ企業、学術研究機関等を拠点施設へ誘致し、研究開発プロジェクトの創出を推進するとともに、スタートアップ企業や市内企業によるピッチイベント、ビジネスや起業に関するセミナー・イベントの実施、会員組織の構築により、さまざまな主体が参加するコミュニティー・ネットワークを形成することを目的としている。24年3月には、同事業を委託しているJR東海により、コミュニケーション棟とオフィス棟を備える拠点施設として「FUN+TECH LABO」(ファンタステックラボ)が開設され、「神奈川県ロボット企業交流拠点」も設置された。市は、庁舎内での配膳ロボットの活用など、「ロボットのまち さがみはら」の具現化に向けた取り組みを進めており、同施設を拠点に事業開発や研究開発活動を推進する。
「オープンイノベーションプログラム」は、自社の課題解決に挑戦する市内企業と、必要な技術・ノウハウなどを持ったパートナー企業を全国から募集・マッチングする、新規事業開発の伴走支援プログラム。23年度は市内に事業所を持つ企業を4社、24年度も新たに4社を採択し、新たな価値の創出に向けてプログラムを進めていく予定。
市内の橋本駅周辺では、リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の設置が進み、ますます注目される相模原市。今後もさまざまな取り組みを展開し、産業の活性化を図っていく。
厚木市 生産性向上・賃上げ応援補助金新設 人材確保でも中小企業支援
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企業誘致が進む酒井土地区画整理事業
厚木市は事業所数約9400、労働者人口約15.1万人で、県内トップクラスの産業が集積する。市では、2021年度から26年度にわたる産業振興の方向性を「産業マスタープラン」に定めている。24年度からは、後期実施計画の中に「国連の持続可能な開発目標(SDGs)」「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」「デジタル変革(DX)」を加え、変化する社会情勢に対応する。
23年度はSDGsの視点を踏まえた新商品や新技術の開発を支援する補助制度を新設。酒造メーカーによる地元産酒米を使った生酒、無線識別(RFID)タグを用いた資材管理システム、高性能ナノバブルノズルの開発などの事業を支援している。カーボンニュートラルの分野では電気自動車(EV)や充電器、省エネ機器、DXの分野では生産性の向上を目的としたロボットや人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)など先端技術の導入に対する補助制度も設けており、企業へ積極的な活用を呼び掛ける。
24年度は、「生産性向上・賃上げ応援補助金」を新設。従業員の賃上げにつながる設備投資などを対象とする国の業務改善助成金を受けた中小企業に対し、国が認定した対象経費の10分の1(上限60万円)を上乗せで補助する。さらに中小企業の人材不足に対応するため、「人材確保支援事業費補助金」もスタート。就職フェアなどへ出展する際に掛かる費用の半額を20万円まで補助していく。
企業誘致の取り組み加速
企業誘致の取り組みでは、半世紀ぶりとなった二つの産業系都市計画事業が完成を迎え、生み出された産業用地への企業立地を進めている。さらに恵まれた高速道路網を生かした6地区を「新市街地ゾーン」に位置付け、新たな産業用地を生み出す取り組みにも着手する。
「活発な企業活動は、まちの発展を支える原動力」。今後も、さまざまな支援メニューを通じ、企業の新たな進出や再投資を支援していく。