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神奈川で輝く優良企業
技術革新を推進 新市場開拓に挑戦
原材料価格高騰や人手不足など企業を取り巻く環境は厳しさを増す。一方で神奈川県内の企業では革新的な製品・サービスの創出などを通じて新市場開拓に挑戦する。そうした県内企業11社を紹介する。
横浜リテラ 次世代型パッケージ提案
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世界最高水準のクリーンルームで作られる紙製パッケージ
横浜リテラ(横浜市戸塚区)は紙器パッケージを中心とした総合パッケージメーカー。食品や菓子のパッケージを多く取り扱っている。安全性が問われる食品・菓子のパッケージに対する品質基準は大変高く、それに応える生産環境として浮遊塵埃(ふゆうじんあい)数を抑えたクリーン工場を整備している。
パッケージは複数の工程を経て製品に仕上がるが、全ての工程を社内で一貫して行うワンストップ生産を実現。工程間において仕掛品のムダな移動や滞留をなくしてリードタイムを短縮するとともに、品質管理を一元化して高品質・低コストを実現するパッケージ生産している。
さらに、近年では組み立てたパッケージに食品や菓子を箱詰めするアセンブリー工程も拡充。パッケージの企画・デザインから製造・組み立て・箱詰め・配送まで、食品・菓子メーカーのサプライチェーンを幅広く支えている。
また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)への関心の高まりで、企業の果たすべき役割がますます重要になる中、脱プラスチック・省資源を実現する新たな紙製パッケージの開発に取り組み、積極的な提案活動を展開。顧客のブランド価値向上に貢献している。
三菱化工機 水素社会の実現に貢献
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三菱化工機の水素製造装置「HyGeia(ハイジェイア)」
次世代のクリーンエネルギーとして利用拡大が期待されている水素。三菱化工機は、その水素の製造技術を長年培ってきた。都市ガスや液化石油ガス(LPG)を原料に水蒸気改質法で高純度の水素ガスを製造する装置の提供を通じ、水素社会の実現を目指すさまざまなプロジェクトに貢献する。
同装置は水素ステーションや産業用途への納入が主であるが、最近は製鉄分野での利用が広がる。2023年にはJFEスチールから同装置を7基受注。JFEは排ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)と水素からメタンを製造し、還元材として高炉で利用する計画だ。日本製鉄が開発する「水素還元製鉄」の実証用に大型設備の提供も新たに決まった。
バイオガスから水素を作る新たなプロジェクトにも参画する。三菱化工機はトヨタ自動車、豊田通商と共同で、鶏ふんや廃棄食料から生じるバイオガスから水素を作る水素製造装置をタイに導入。作った水素は燃料電池車(FCV)などへの活用を検証している。
そのほか、CO2分離回収型水素製造装置など新技術の開発や、結晶中に水素を取り込んだ金属で水素を移送する「水素吸蔵合金の配送システム」の実証などを推進し、水素社会の実現を目指す。
シンクスコーポレーション 非鉄フライス加工 圧倒的短納期
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時間内でより多く正確に加工や検査を行い、翌日納期に対応する
シンクスコーポレーション(神奈川県愛川町)は1997年4月に設立。「金属材料+α」を掲げ、アルミニウム・ステンレス板の切断・フライス加工をはじめ非鉄金属の販売を手がける。
高品質化・短納期化が進み、多様化する市場において、顧客が指定するサイズでの切断品の販売、4面フライス、6面フライス等のプレートを、注文に応じて大小さまざまな形状にカットし、顧客にイン・タイムで納入する。特注仕様の切断機、フライス機を備えるほか、レーザー切断機や側面タップ機などさまざまなニーズに対応できる設備も導入し、他社との差別化を進める。当日注文・翌日配送する「注文翌日納入」のビジネスモデルで、少量多品種発注に品質と適正価格で応えている。
昨年はマレーシアのケダ州クリムにShinx Malaysia SDN.BHD. を設立。現地でのアルミ切断・フライス加工販売も開始し、海外での高品質材料の供給にも挑戦している。近年は半導体関連や液晶関連装置向けの販売が堅調で、今後も需要が見込まれる半導体市場の根幹である製造装置業界への材料提供を続け、製造業の発展に貢献していく。
コダマコーポレーション 2Dと3D、CADとCAMが連動
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2次元と3次元データ、加工データが連動するTopSolid7シリーズ
コダマコーポレーションは1989年の創業以来、お客さまに「最高のサービス」を提供することを経営理念に掲げ、CAD/CAMシステムの導入と運用サポートを通じて大幅な生産性向上を実現してきた。システムの提供にとどまらず、エンジニアの育成や技術の継承などの仕組みづくりも提案する。また、「TopSolid7(トップソリッド7)」と最先端の5軸加工機や複合加工機を駆使した試作工場も設立し、金属加工分野で実績を積み重ねている。
同社の提案する3次元CAD/CAMシステムTopSolid7は、2D/3DCAD、金型CAD、2軸/5軸CAM、ワイヤカットCAM、マシンシミュレーションが一体となった業界唯一のシステム。異なるアプリケーションがシームレスに連携し、製品設計の変更があっても、関連するデータ修正の必要がないため、手戻りが発生せず、効率的なモノづくりが可能になる。
四半世紀以上にわたるモノづくりの経験を生かし、新市場への挑戦も進める。「BIM」に対応するTopSolid7を建設・設備・プラント業界へ積極的に提案。充実したサポートで建設業の得意先の立ち上げに注力している。
東京メータ 川崎市内企業の脱炭素支援
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企業の省エネ対策コンサル事業で使用する空気力計「エアパワーメータ」
東京メータ(川崎市中原区)は、生産設備で消費される電気と空気圧エネルギーを同時把握する計測技術を活用し、企業の省エネ対策をコンサルティングするサービスの事業化を検討する。まずは川崎市地球温暖化防止活動推進センターと連携し、市内の事業者を対象に同コンサルを無償提供する取り組みを始める。従来は見逃されていた空気圧エネルギーを見える化する東京メータの独自技術を生かし、市内企業の脱炭素経営を支援する。
計測には同社の空気力計「エアパワーメータ」を使用する。同測定器で流路の入り口と出口での圧縮空気の圧力や温度、差圧を計測。空気の流量、空気圧エネルギーを算出し、電力計と組み合わせて空気漏れや圧力損失などの無駄なエネルギーを可視化する。
コンサル事業では測定データを基に電力と空気圧の使用状況を見える化するクラウド型のツールを活用し、生産ライン運用の最適化などを提案する。工場の消費電力の20―30%は空気圧システムが占めると言われる。同システムを効率化し、企業の省エネを支援する。
環境省の脱炭素の実現に向けた国民運動「デコ活」に関連する補助事業の採択を受け、川崎市内でコンサルの実証に取り組む。
東京精密発條 独自製品で新需要開拓
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プレスブレーキ用下金型「ウイングベンドプラス」
東京精密発條(横浜市都筑区)は、工作機械向けの装置や部品などの開発・設計・製造を手がけている。工作機械関連製品を国内外に供給し、世界のモノづくりを支えている。プレスブレーキ用曲げ金型で工程削減に寄与する独自製品を提案し、新たな需要も開拓している。
同社の創業は1930年。当初はバネを生産していたが、その後事業を転換し、現在は工作機械関連などの自社製品を製造。どの製品も特許を申請し国内外で使われている。
主力製品の一つである「シャトルガード」は切粉や切削液から機械を保護するカバー。切粉排出のためのコンベヤー「スパルコンシリーズ」は機外・機内で活用でき、設計の自由度も高い。
今後の需要拡大が期待されるのは、高精度・高品位の曲げ加工を実現するプレスブレーキ用下金型「ウイングベンドプラス」。面接触の独自構造に加え、対象物と同期して動く金属スライダーを取り付けたことで、曲げ傷、擦り傷がつかない。長尺ものを曲げる際に金型の境目に生じる分割傷も回避できる。
同金型は海外で販売実績があり、最近は神奈川県の第38回「神奈川工業技術開発大賞」の奨励賞を受賞するなど国内での評価も高まっている。
エレックス工業 宇宙分野の機器開発に力
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マイクロ波放射計「DSμRAD」
電波天文観測や情報通信、防災インフラ向けの各種電子機器を手がけるエレックス工業(川崎市高津区)。電子機器のハード・ソフトの設計だけでなく、それらを統合したシステムの設計開発を社内一貫体制で進められる特徴がある。「新しい技術に挑戦するのが好きな気質の人材が多いのが当社の大きな強み」と内藤岳史社長は説明。その強みを生かし、近年は宇宙分野の機器の開発にも力を入れている。
同社は、人工衛星に搭載する観測機器「超広帯域電波デジタル干渉計」(SAMRAI)の製作を宇宙航空研究開発機構(JAXA)から受注した。SAMRAIは非常に幅広い波長帯域のマイクロ波を同時測定する観測機器で、JAXAはSAMRAI搭載の人工衛星を2027年度に打ち上げる計画。実用化できればさまざまな自然現象の高精度観測と予測技術の開発に結びつくと期待される。
同社はJAXAのSAMRAIプロジェクトに参画し、高速AD(アナログ・デジタル)変換技術と信号処理技術を生かして観測機器の高性能化と小型化に貢献している。また、地上での環境観測を想定したマイクロ波放射計「DSμRAD」も開発し、製品化に成功している。
リンクイノベーションズ 電子マニフェストをDX化
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『電子マニフェスト先生』のサービス概念図
リンクイノベーションズ(横浜市中区)は産業廃棄物契約書の作成から電子マニフェスト(産業廃棄物管理票)登録まで一元管理できる排出事業者向けクラウドサービス「電子マニフェスト先生(電マニ先生)」を提供している。廃棄物の種類や量、収集運搬・処分業者の情報、処分方法などを契約情報から自動的に反映することで誤登録を防ぎ、法律順守で効率的な廃棄物管理を実現する。
日本産業廃棄物処理振興センターが運用する「JWNET」とシステム連動し、紙マニフェスト伝票や行政報告書の作成も不要になる。業務の効率化とともに、環境保全のため廃棄物処理法が排出事業者に責任として求める“適正な処理”をデジタル変革(DX)で担保する。
さらに廃棄物からの二酸化炭素(CO2)排出量を集計・表示する機能も備え、サプライチェーン(供給網)全体の温室効果ガス(GHG)排出量(スコープ3)算定を容易にする。スコープ3ではカテゴリー5として「事業から出る廃棄物」が算定対象になる。電マニ先生の入力データから、廃棄物ごとの排出原単位に基づいてCO2排出量を算定して集計、グラフ化もできるようにした。
サクラテック 非接触でバイタル情報 遠隔収集
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レーダー心拍・呼吸センサー「miRadar8《Handy》」
サクラテック(横浜市港北区)は非接触でバイタル情報(心拍・呼吸・体動)を計測できるレーダー心拍・呼吸センサー「miRadar8《Handy》」を製品化している。健康状態を24時間監視する必要がある介護・看護の現場だけでなく、日常の健康管理やペットの観察など多様な用途が見込まれる。レーダーは追従性を備えており、夜間の介護施設などで認知症の入所者がベッドを離れてしまうような事態も検知できる。
自動運転や産業分野の自律移動ロボットなどで障害物検出に用いられているレーダーによる微小変位・微小振動計に、多入力多出力伝送方式のMIMO(Multiple-Input Multiple-Output、マイモ)を採用して小型・携帯化を実現。高分解能ビームの特性を生かし、複数人の同時計測も可能にしている。
高齢化社会を迎え、バイタル情報を遠隔収集して身体機能を総合評価し、人工知能(AI)によりケアプランを作成する科学技術振興機構(JST)の「日本-カナダ国際産学連携共同研究」に参画。人材不足問題を解消し、すべての高齢者が最適なケアプランを享受できるようにするための共同研究が始動している。
FACTORIZE スマホで日報を自動作成、工程管理
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作業ごとに設けたQRコードをスマホで読み取る
中小製造業から誕生したFACTORIZE(神奈川県横須賀市)は人が関与する業務を工程ごとに2次元コード(QRコード)化し、スマートフォンで読み取ることでデータ化するクラウドシステム「軽減くん」を提供している。日報を自動的に作成し、クラウド管理のためリアルタイムでデータの確認・集計・分析ができる。
業務終了時には結果(作業量や不良品数など)を入力し、その場でコメントも付けて管理者に伝えられる。現場が“見える化”され、トラブルへの迅速な対応や、スピーディーな改善を可能にする。スマートフォンが使えれば導入できる手軽なSaaS(サービスとしてのソフトウエア)で、これまでに10人規模の中小製造業から、300人を超える大企業まで、幅広い導入実績がある。各社とも日報集計コスト削減や生産性向上、さらに現場改善へと結びつけ、大きな費用対効果を生み出している。スマートフォンのレンタルサービスも実施しており、イニシャルコストを最小限に抑えた導入が可能となっている。
デジタル化によるペーパーレス化も推進、毎日100枚以上あった紙の日報がゼロになった導入事例もある。
スチールプランテック 製鉄業界の脱炭素化に対応
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補助金にも採択されたECOARC™シリーズの「ECOARC-light™」
製鉄プラントエンジニアリングメーカーのスチールプランテック(横浜市西区)は、母体の総合プラントメーカー4社が培ってきた高い技術力をベースに、最新テクノロジーを取り入れた商品やサービスを展開している。2021年4月には、製鉄業界の脱炭素化に対応するため、新たな方針として「Green&Smart」を掲げた。
Greenは脱炭素を推進するための技術革新。近年、注目が高まる電気炉関連製品に注力している。世界最高レベルの電力原単位削減能力を誇る環境対応型高効率アーク炉「ECOARC」シリーズや、電力系統に影響する電圧変動を抑える新電源システムとしてTMEIC(東京都中央区)と共同開発した「CleanArc」など、多くの製品バリエーションと知見を有する。
Smartは最新技術を駆使した製品のスマート化。ロボットの活用、AI/ビッグデータ解析、デジタル変革(DX)による安全性向上、省力・省人化、生産性向上などの操業支援サービスを目的に開発を進めるスマートプロダクツ「Sシリーズ」を製品化している。5月には電気炉関連製品とSシリーズを中心とした9製品が、資源エネルギー庁の補助金対象に採択された。