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地球環境特集
〔11面〕 持続可能な社会へ向けて—みんなの意識でゴミ問題は変わる— 滝沢秀一さんインタビュー
資源や最終処分場の不足、自然や生態系への影響、処理時の二酸化炭素(CO2)排出など、ゴミに関する課題は山積みだ。お笑いコンビ・マシンガンズの滝沢秀一さんは、芸人をしながらゴミ清掃員としても働いている。ゴミ清掃の仕事を通して見えてきた、ゴミを取り巻く現状や、メーカーへの期待などを聞いた。
36歳でゴミ清掃の世界へ
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清掃員の仕事を通して、ゴミ問題を間近で感じてきた(太田プロダクション提供)
—ゴミ清掃員を始めたきっかけは。
「36歳の時、子どもが生まれるタイミングでアルバイトを探していて、元芸人の知り合いに紹介されて始めました。今は『タイミー』などのサービスを使って単発でできる仕事も多いですが、当時はそういったものもなく、募集対象が35歳以下のものも多かったので、仕事が見つかってラッキーだと思いました。仕事があればお笑いも続けられますからね。研修などはなく、いきなり現場に出て働くことになるので、最初は何をやっているのか分からなかったですが、やりながらノウハウを身に付けました」
—働き始めて約14年。普段のお仕事の流れを教えてください。
「6時半頃に出社してアルコールチェックなどを済ませて、8時からゴミ収集車で回収に向かいます。回収したゴミを中間処理場に受け渡して、15時半から16時頃に会社に戻ります。ゴミを集めるとき、分別がうまくいっていないとやり直す必要があるのですが、これがなかなか大変で。ペットボトルに瓶や缶が入っている場合など、あまりにも多かったら置いていきますけど、2、3個であれば分け直します。可燃ゴミにモバイルバッテリーが入っていたら、これも抜き取らなければなりません。収集車の火災の原因になり得ますからね」
—危険な目に合うことも多そうです。
「包丁をそのまま捨てられたり、プラスチック資源として割れたガラスが捨てられていたり。粗大ゴミの灯油ストーブに入れられっぱなしの灯油がかかって、化学火傷したこともあります。新型コロナウイルス感染症がはやったとき、マスクが買えずにマスクせずにゴミを回収した日もありました」
人々や企業に思うこと
—仕事を通して、滝沢さんが深刻さを実感しているゴミ問題は何でしょうか。
「ゴミが出たら燃やせばいいというわけではなく、燃やせばそこには灰が生まれるということが、やっぱりあまり知られていないんですよね。最終処分場は約25年後にはゴミが捨てられなくなると言われています。大量に捨てられた洋服の束や、年末の大掃除の時期のゴミ袋などを見ると、ゴミは永遠に捨てられるものだと思っている人が多くいるように感じます」
水分をギュッと絞るだけでもゴミは減ります
「ゴミ問題や環境課題の解決に向けて、何からやっていいか分からない人もいると思うんですが、僕は単純にゴミを減らせばいいと思います。例えば生ゴミ一つにしても、水分をギュッと絞るだけでもいいんです。水は重いので運ぶときにガソリンを多く消費しますし、焼却炉にも水をかけるようなものなので、火力を強めるために余分に重油をかけなければいけません。我々清掃員に汁がかかってしまうこともあります。みんなが少しずつでもゴミに意識を向けて、誰かが受け取るということを考えると、ゴミは減ると思います」
—メーカーに対する思いはありますか。
「環境のことを考えてモノを作ってるかどうかは、商品を見れば分かります。大部分がペットボトルだけど一部がアルミニウムでできた飲料容器とか、やっぱりリサイクルできないですよ。商品がリサイクルを考えたり環境に配慮したりできてているかどうかを、動脈産業の企業は考えるべきだと思います」
—ゴミ問題に関連したビジネスについてはどう見ていますか。
「芸能の仕事をしていると同じ服ばかり着るわけにはいかないんですけど、僕は洋服のレンタルサービスを使っています。毎月、コーディネーターさんが選んでくれたトップス3着、ボトムス1着を送ってもらっています。服を買わずにおしゃれはできて、タンスが圧迫されるストレスもなくなります。これはゴミをなくすことによってお金が発生するシステムですよね。そういったところに目を向けると、新たなビジネスが生まれるのではないかと思います」
クラブ活動など啓発事業にも全力
—ごみプロジェクトという団体を立ち上げ、環境課題の周知や、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の普及啓発事業なども企画されています。
「学校や企業、行政に依頼されて講演をしたり、『滝沢ごみクラブ』というコミュニティーで、ゴミや環境、SDGsについて学んだり語ったりしています。滝沢ごみクラブの部員は海外も含めて200人以上います。日本人がゴミ分別をある程度きちんとできているのは教育のおかげだと思っているので、ゴミ教育のようなものは続けていきたいです。ごみプロジェクトには講師が複数人いて、例えば、元保育士の講師が子ども向けに参加型の紙芝居の読み聞かせなどを行いました」
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5月3日から5月30日までの約1カ月間、全国各地でゴミを減らすためのイベント「ごみフェス」を開催(太田プロダクション提供)
—滝沢ごみクラブでは5月に「ごみフェス」を行われています。
「5月3日(ごみの日)から5月30日(ごみゼロの日)までの約1カ月間開催しているイベントで、全国各地でゴミを減らすための活動を行っています。23年に始めました。開催初日は例年、東洋製缶グループのビルでオープニングイベントを行っています。25年は中身がみえるゴミ収集車『スケルトンパッカー車』でのゴミの積み込み体験や、『ゴミ削減アイデアコンテスト』の表彰式などを行いました。このイベントを通してごみクラブを知り、入ってくれる人もいます。ごみフェス2025では112の企画に計7165人が参加し、1万195リットルのゴミを減らせました」
—最近、面白いと感じた取り組みなどはありますか。
「この間、バスケットボールチームの試合に招待してもらい、トヨタアリーナ東京(東京都江東区)に行ってきました。唐揚げなどの容器が紙製容器の内側にフィルムが貼ってあり、剥がしたフィルムは可燃ゴミとして、紙製容器は資源として回収されていました。紙製容器はトイレットペーパーや紙カップに再生されるそうです」
—滝沢さんは芸人、ゴミ清掃、講演、団体やクラブ活動、本の執筆など幅広く活動されていますが、どのようにメンタル面や時間の使い方などのバランスを取っていますか。
「休むことはほぼないですが、楽しみながらやっているのであまり苦ではないです。今はゴミ清掃の仕事は週に1回くらい。ずっと続けていきたいです。芸能界はどうなるか分からないですし、ゴミ清掃をしながらゴミのトリビアを見つけるとか、全部につなげようと思っています。芸人とそれ以外の仕事も、仕事とプライベートの時間も境目はなく、目の前のやりたいことをやっています」
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マシンガンズ 滝沢 秀一 さん
【プロフィール】 マシンガンズ 滝沢 秀一(たきざわ・しゅういち) 1976年生まれ、東京都出身。東京成徳大在学中の1998年、西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年、妻の妊娠を機に、ゴミ収集会社で働きはじめ、その体験を基に交流サイト(SNS)や執筆活動、講演会などで発信している。20年10月、環境省「サステナビリティ広報大使」に就任。23年5月、コンビとしてフジテレビ「THE SECOND~漫才トーナメント~」にて準優勝。
