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地球環境特集
〔8面〕 再生材の活用促進に向けた日本自動車工業会の取り組み
【執筆】 日本自動車工業会 リサイクル・廃棄物部会 部会長 嶋村 高士(しまむら・たかし)
1991年にトヨタ自動車に入社。98年に同社環境部に異動。2015年に日本自動車工業会リサイクル・廃棄物部会の部会長に就任。リチウムイオン電池(LiB)の自工会共同回収スキームや、次世代モビリティリサイクルシステム構築などにも従事。
日本自動車工業会(自工会)は国内4輪車メーカー、2輪車メーカーの14社が加盟する団体である。自工会では2024年9月に、「再生材活用促進に向けた自工会の取組みについて—2050年長期ビジョンと中長期ロードマップ(含む 自主目標値)」を、25年2月には品質目安に相当する「汎用PP、複合強化PPの目標値」を公表し、プラスチックの再生材利用に向けた取り組みを強力に推進している。
長期ビジョン策定 自動車業界をけん引
自工会の会員各社は1990年代から、リサイクルの高度化を最重要課題の一つとして、バンパーのリサイクルなどの各種取り組みを行ってきた。
そのような中、2024年9月に「再生材活用促進に向けた自工会の取組みについて—2050年長期ビジョンと中長期ロードマップ(含む 自主目標値)」〔❶〕を公表した。これは近年のプラスチックリサイクルの機運の高まりも踏まえ、自動車業界としてさらなる取り組みの加速と併せて、社会全体の再生プラスチックなどの供給体制整備と活用促進を目指し、策定したものである。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた車両軽量化の観点から、プラスチックを多用する自動車メーカーはサーキュラーエコノミー(循環型経済)社会の実現に向け、積極的に自動車業界全体をけん引するとともに、産業界全体の取り組み促進につなげていきたいと考えている。
そのためには、自動車メーカーなどの需要家側(動脈側)とリサイクラーなどの供給側(静脈側)が、互いにグローバルで圧倒的な競争力を、品質とコストの両面で持つことが重要だ。加えて、最小のカーボンフットプリント(CFP)で生産・供給できている状態が、「長期的に目指すありたい姿」だと考える。
中長期ロードマップ 品質面・供給面を改善
また2050年長期ビジョンの実現に向け、ロードマップも策定し、主に品質面と供給面から、各種取り組みを強力に推進していく(図1)。品質面では、再生プラスチック材料の品質目安として「汎用PP、複合強化PPの目標値」を25年2月に公表した。
従来、自動車メーカーが求める品質、特性は各社によって微妙に異なり、各社で供給事業者とクローズドな中ですり合わせるなど、個別仕様になっていた。このため、供給側も限られた事業者しか自動車市場には参入できず、供給量も限定されていた。
これをある程度可能な範囲でオープンにすることで、より多くのリサイクラーが市場に参入できるようにして、供給拡大につなげていきたい。このように、業界を挙げて再生プラスチック材料の品質目安(目標値)を公表する取り組みは、世界でも先駆的な試みである。
また供給面では、「資源回収インセンティブ制度」〔❷〕によって、解体業者によるプラスチック部品などの選別促進を図りたいと考えている。24年3月には関係事業者向けのマニュアルを作成し、説明会を行うなど、プラスチック部品などを解体段階で取り外してマテリアルリサイクルに回してもらえるような取り組みを推進中だ。
日本の産業がグローバルで戦うために
しかし、このような取り組みを実施しても、将来的には約30万トン以上の再生プラスチック材料の不足が予想されている。これは自動車産業内レベルの問題ではなく、国として各業界の要求品質に合わせた再生プラスチック材料の供給能力をいかに拡大させていくかが、今後の日本において極めて大きな課題になると考える(図2)。
万が一その対応が不十分であれば、他業界も同様に、再生プラスチック材料不足となる。そうなると、各種需要家側は国内に再生プラスチック材料が存在しなければ、海外製品の輸入に頼ることにもなりかねない。資源の少ない日本において、再生資源の分野でも海外に依存する状況は、経済安全保障の観点からも好ましくない。
また供給側から見ると、国内産業による膨大な需要によって市場が形成されてしまえば、多くの海外リサイクラーが日本市場に参入することも想定される。プラスチックにおいてはすでに海外企業が日本に進出してきており、仕入れ競争が激化しつつあるとも聞いている。
これまで廃棄物処理、静脈産業の世界は、ある意味各地域のなかで完結できる問題であった。しかし、これがサーキュラーエコノミーの世界に変わると、それは動脈産業を巻き込んだ熾烈(しれつ)なグローバル競争の世界へと変わる。国内での競争のみを考えていると、海外企業との競争で必ず淘汰(とうた)されるであろうことは、日本のさまざまな動脈産業において、この数十年間で経験済みのはずである。
熾烈なグローバル競争の世界で、この小さい島国に14社ものメーカーが生き残っているのは自動車産業ぐらいではないだろうか。自動車産業は「部品・素材メーカーと一体」となって、品質向上とコスト低減に、長年にわたって懸命に取り組んできた。
しかし、自動車業界は100年に1度の大変革期だ。まさに生死をかけて、各社生き残りを模索している途上である。自動車業界はこの緊張感と覚悟を常に持ち、今後は「動静脈が一体」となって、サーキュラーエコノミーの世界での生き残りをかけて、不断の努力で取り組んでいきたい。
【参考文献】
〔❶〕promote_use_of_recycled_materials.pdf(jama.or.jp)
〔❷〕https://www.jarc.or.jp/shigenkaisyu/login/
