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地球環境特集
〔5面〕 エネルギーの安定供給に貢献 企業の取り組み
水素を化石燃料の代替として使う事業が次々と立ち上がっている。加熱や鋳造、焼成、乾燥など“熱”の発生に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減らす狙いだ。再生可能エネルギーは転換期を迎えた。社会の脱炭素化に向け、大規模太陽光発電所(メガソーラー)に代わる再生エネ導入がカギとなる。エネルギー価格高騰への対抗策として、省エネルギーの重要性も再認識されている。
水素、化石燃料代替として導入続々
ジェイテクトは夏ごろ、花園工場(愛知県岡崎市)でアルミニウム溶解の燃料として水素の利用を始める。溶解は高熱を必要とする工程であり、従来は都市ガスを燃料としていた。利用する水素は太陽電池で発電した電力を使って水から製造する「グリーン水素」であり、アルミ溶解に使っても「CO2排出ゼロ」としてカウントできる。
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山梨県の「グリーン水素パーク —白州—」における実証開始式典
山梨県北杜市では2025年10月、国内最大規模のグリーン水素製造拠点が稼働した。同県がサントリーホールディングス(HD)や東京電力HDなど10社と共同で建設した。製造した水素は隣接するサントリーの工場などで使う。水素の生産能力は年間2200トン。CO2を年間1万6000トン削減できる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業であり、事業費は186億円。
UCC上島珈琲も山梨産グリーン水素を利用する。同社は水素を燃料として活用できる大型焙煎(ばいせん)機を開発し、25年4月に富士工場(静岡県富士市)に導入した。豆の焙煎を天然ガスから水素に切り替え、CO2排出量を減らす。
INPEXは今春、新潟県柏崎市で「柏崎水素パーク」を本格稼働させる。県内で産出する天然ガスを原料に水素を製造する。その水素の一部は発電に使い、電力を地域に供給する。残りの水素でアンモニアも生産して地元の化学工場に送る。
水素製造時に発生するCO2は生産を終えたガス田の貯留層へ閉じ込め、大気中への放出を防ぐ。柏崎水素パークで生産する水素は、CO2排出を抑えた「ブルー水素」となる。
岩谷産業は25年開催の大阪・関西万博で運航した水素燃料電池船「まほろば」を東京都に無償で提供する。都は26年度中に東京港に就航させる計画だ。まほろばは燃料電池とプラグイン電力のハイブリッドで動く船で、運航時にCO2を排出しない。また、振動や騒音が少なく、快適な乗り心地だという。
水素への投資が活発になっている背景に、26年度から始動する日本版排出量取引制度「GX—ETS」がある。GX—ETSは政府が企業に対し、排出量の上限である「枠」を設定。排出削減に取り組んでも上限値を超えた企業は、低く抑えた企業から余剰の枠を買って埋め合わせる。
直近3年間のCO2排出量が平均10万トン以上だと参加を義務付けられる。その基準となる排出量は事業所での化石燃料の消費に伴って発生するCO2だ。加熱や鋳造、焼成、乾燥などの工程で多くの化石燃料を使う工場は対策が必要となる。その対策の一つが、水素への燃料転換だ。
転換点迎える再生エネ 自然破壊に歯止め
再生エネは転換点を迎えている。政府は27年度以降、地上に新設するメガソーラーは売電を支援する「FIT」「FIP」制度の対象外とする。メガソーラーによる自然破壊に歯止めをかける狙いだ。
代わって太陽光発電は建物の屋上、農地や駐車場への設置が急がれる。どれも軽量なペロブスカイト太陽電池の設置に適しており、太陽光発電の用途が広がりそうだ。
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北九州沖で建設中の洋上風力発電
“ポスト・メガソーラー”として洋上風力発電への期待も強まる。Jパワーが出資するひびきウインドエナジーは北九州市沖に洋上風力発電所を建設しており、3月末までに稼働させる予定だ。風車を25基設置し、合計の最大出力は22万キロワット。年間発電量は約5億キロワット時の想定で、完成すると国内最大級となる。
エネルギー価格高騰で、省エネの重要性再認識
省エネの重要性も変わりない。エネルギー価格が高騰しており、コスト削減策として取り組みが再認識されている。今後の普及が期待されるのが地中熱空調だ。地下の温度は一年を通じて一定に保たれており、外気よりも夏は冷たく、冬は温かい。この地中熱をくみ上げて空調に使うと夏は冷房、冬は暖房のエネルギーを抑えられる。
愛三工業は25年5月稼働の新工場「Aisan みらい工場」(愛知県安城市)に地下水の熱を活用する「帯水層蓄熱システム」を導入した。ガス吸収温水機と比べ、工場の冷暖房に伴うCO2排出量を半減できる。
大阪市も帯水層蓄熱システムを推進している。大阪駅近くのビル「グラングリーン大阪」や障がい者スポーツセンター「アミティ舞洲」に導入した実績がある。アミティ舞洲は47%の省エネ化を達成した。
また、製品単位のCO2排出量であるカーボンフットプリント(CFP)を算定する動きとも連動し、省エネの必要性が高まっている。CFPには製造に伴う排出量も含まれるためだ。生産で使う電気やガスの使用量を抑えられると製造時のCO2排出量が減り、CFPも少なくなるので「環境配慮製品」として訴求しやすくなる。
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電気やガスの使用量を測定した日農化学工業の設備。CFP算定し、省エネ化も進める
CFPの算定が主流となるのは先だが、取引先から製造時の排出量を聞かれる中小企業が増えている。色素メーカーの日農化学工業(埼玉県八潮市)も取引先から質問があった1社だ。省エネ診断の経験が豊富な中小企業診断士とともに電気やガスの使用量を測定し、CO2排出量が多い工程が分かった。その工程を変更することでCO2量も減るので、省エネと環境配慮を両立できる。
政府も中小企業の省エネを支援している。環境省は大企業と取引先が連携した省エネ設備投資を助成金で支援する事業を展開しており、26年度予算案にも15億円を計上した。サプライチェーン(供給網)全体のCO2排出量を低減する狙いだ。
また環境省は、中小企業が省エネ設備に更新する費用を支援する事業も実施している。工場のCO2排出量を15%以上削減することなどが条件。26年度予算案に57億円を充てた。25年度補正予算と合わせると92億円となる。
